2. 平均年収が高い人は「年金額も多い」って本当?
公的年金は「国民年金」と「厚生年金」という2つの制度で成り立っています。
国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満の人が対象で、保険料を納めれば誰でも受給できる制度です。
一方、厚生年金は会社員や公務員などの給与所得者が加入し、国民年金に上乗せして支給されます。
国民年金の保険料が一律であるのに対し、厚生年金は現役時代の給与水準によって保険料が変わる点が大きな特徴です。
そのため、収入が高いほど負担する保険料も増え、結果として将来の受給額も大きくなります。
では、年収1000万円の給与所得者は、老後にどの程度の年金を受け取れるのでしょうか。
次章では、年収1000万円の人の年金額についてシミュレーションしていきます。
3. 平均年収1000万円の人が将来受け取れる「年金額」はどのくらい?
続いて、平均年収1000万円の人が将来受け取る年金額をシミュレーションしていきます。
以下のモデルケースをもとに、年収ごとに老後どの程度の年金が見込めるのかを確認していきましょう。
- 退職年齢:65歳
- 年収:1000万円(平均標準報酬月額を65万円と設定)
- 厚生年金:2003年4月以降に43年間加入
- 国民年金:40年間すべて納付済み(未納なし)
- 家族構成:配偶者・扶養家族なし
平均年収1000万円で勤続43年という前提で、日本年金機構「は行 報酬比例部分」に示されている計算式を用いて試算すると、厚生年金は国民年金分を含めて月額およそ23万円となります。
なお、この試算では「年収÷12」を簡易的に平均標準報酬月額として扱っていますが、実際の年金額は「平均標準報酬月額」や「平均標準報酬額」に基づいて算定されるため、年収と完全に一致するわけではない点に注意が必要です。
また、厚生労働省年金局の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の平均受給額(国民年金を含む)は月額で約14万円です。
この平均と比べると、月23万円に達する受給額は平均から大きく離れており、非常に高い水準であることが分かります。
なお、現実には年収1000万円を43年間維持し続けることは稀であり、あくまで参考的な試算として理解しておく必要があります。
また、政府は厚生年金の標準報酬月額の上限を段階的に引き上げる方針を示しており、高所得者にとっては保険料負担が増える一方で、「実際の収入により近い年金額」が見込めるようになると考えられます。