師走を迎え、年末の慌ただしさが増す中、今月は年金支給日(12月15日)が控えています。

2022年から導入された「在職定時改定」により、現在厚生年金に加入して働き続けている方は、退職を待つ必要がなく働いた分の保険料が毎年自動的に年金額に反映され、直近では10月分(12月支給分)から年金額が見直されます。

この仕組みは、長く働くシニア層にとって、年金を効率よく増やすための重要なポイントとなります。

本記事では、この「在職定時改定」と、60歳代で働く場合の年金支給額に影響する「在職老齢年金」の仕組みを分かりやすく解説します。

1. 年金が減額される制度「在職老齢年金」とは?

在職老齢年金とは、年金を受け取りながら働く人を対象とした制度です。

一般的には退職後に受給するイメージがありますが、60歳以上で厚生年金に加入したまま就労している場合、年金と給与の合計額によって年金が調整される仕組みが設けられています。

具体的には、給与や賞与が一定基準を超えると、その超過分に応じて年金の一部が減額される「調整」が行われます。

このため、働いている間の収入状況によって年金支給額が変動します。

ただし重要なのは、減額されるのは「受け取る年金額」であり、働きながら厚生年金の保険料を納めている期間は、将来の受給額にしっかり反映される点です。

つまり、在職中に一時的な減額があっても、最終的な年金総額は着実に増えることになります。

なお、在職老齢年金の支給停止に関する基準額は、年度ごとに段階的に見直しが進められてきました。

  • 2024年度:50万円
  • 2025年度:51万円
  • 2026年度:62万円(予定額)

今回の改正(2026年4月施行)により、支給停止調整額は51万円(2025年度)から62万円へと大きく引き上げられます。

厚生労働省の試算では、この見直しによって新たに約20万人が年金を減額されることなく受け取れるようになるとされています。