肌寒い日が増え、冬支度とともに家計の見直しを始める季節です。公的年金受給者の方にとって、先日10月15日は2か月に一度の年金支給日でした。

次の支給日、12月15日に振り込まれる年金額が「増額」となるシニアの方がいます。これは主に働き続けている高齢者が対象で、勤務を続けることで年金額が毎年改定される仕組み(在職定時改定)によるものです。

年金額が増えるのは朗報ですが、その一方で、年金がカットされる「在職老齢年金制度」や、税金・保険料の天引きによってかえって手取りが減ってしまうリスクも潜んでいます。

この記事では、まずシニア世代のリアルな年金平均月額を確認します。その上で、12月支給分から年金額が増える具体的な要件、そして手取りで損をしないために知っておくべき注意点を詳しく解説します。

1. 公的年金制度の基本をおさらい

【写真】厚生年金と国民年金の仕組み

厚生年金と国民年金の仕組み

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成

公的年金制度は「2階建て」になっており、1階部分にあたる「国民年金」の上に、2階部分にあたる「厚生年金」が積み上がっている構造です。

原則として、国内在住の20歳以上60歳未満の全ての人が加入するのは「国民年金」で、年金保険料(※1)は全員一律です。保険料を全期間(480月)納付すると、65歳以降で満額(※2)を受給できます。もし未納期間があれば、その期間に応じて満額から差し引かれます。

一方、会社員や公務員などが国民年金に上乗せして加入するのが「厚生年金」です。収入に応じた年金保険料(※3)を納めます。受給額は、加入期間と在職中の収入に応じて計算されます。基本的には、加入期間が長く、収入が高かった人ほど、将来受け取れる金額は多くなります(ただし上限あり)。

※1 国民年金保険料:2025年度は月額1万7510円
※2 国民年金の満額:2025年度は月額6万9308円
※3 保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される