20世紀最大の問題作として全世界で大ベストセラーとなったウンベルト・エーコの小説『薔薇の名前』。その完全版が株式会社東京創元社から刊行されることが決定しました。ニュースを受けて、Xでは「挫折した思い出が…」「再挑戦したい!」などの声が挙がっています。

1. 【『薔薇の名前』が話題】どんな小説?なぜ話題?

『薔薇の名前』はイタリアの小説家であるウンベルト・エーコが1980年に発表した小説で、世界で5000万部を超える史上屈指のベストセラー作品です。日本では90年に日本語版が出版され、同様にヒットを記録しました。

ジャンルはミステリーで、中世の修道院で起きた連続殺人事件にフランシスコ会修道士とその弟子が挑むというもの。迷宮の文書館に隠された秘密が鍵を握るのですが、その哲学的なテーマや仕掛けに、多くの読者が熱中しました。

ウンベルト・エーコの小説『薔薇の名前』の完全版の刊行が決定(写真は小説の舞台となるメルク修道院)

筆者撮影

本作が現在においてもしばしば話題に挙がるのは、その難解さからです。ウンベルト・エーコは記号論学者という肩書きも持っており、キリスト教文化ならではの知識や多層的な構造の理解に、当時は挫折する読者も多かったそうです。