6. 12月支給分(10月分)から年金額が増えるのはどんな人?【在職定時改定】
前述のとおり、公的年金は毎年度見直しが行われており、2025年度の年金額は前年度から1.9%引き上げられました。
2025年度(2025年4月分)の初回支給は6月ですので、6月から年金額が増額しています。
なお、老齢厚生年金の受給権者が厚生年金保険の被保険者となり働いている場合、年金額は毎年10月分から改定されます。これを在職定時改定といいます。
なお、在職定時改定の対象者となるのは65歳以上70歳未満の老齢厚生年金の受給者です。
- 基準日:毎年9月1日
- 対象期間:前年9月から東燃8月までの被保険者期間
2022年3月までは、65歳以降の被保険者期間は資格喪失時=退職時、または70歳到達時にのみ年金額が改定されていました。
しかし、2022年4月以降、在職定時改定制度により、退職を待たずに年金額が毎年増えるため、「働き損」という意識を解消し、高齢者が長く働く意欲の向上につながっています。
ただし、年金額が増額された結果、「在職老齢年金制度」の基準(年金と給与の合計が51万円超など)を超過し、年金の一部が支給停止(カット)される可能性もある点には留意しましょう。
7. まとめ
本記事では、現代のシニア世代の平均受給額を確認するとともに、次回12月15日の支給分から年金額が増額となる在職定時改定の仕組みを解説しました。
年金制度は複雑で、受給が始まってから初めて知る細かなルールが少なくありません。
たとえば在職定時改定は、働くシニアの年金額を「増やす」というメリットがありますが、必ずしも良いことばかりではありません。なぜなら、年金が増えることで、以下の二つのリスクが生じる可能性があるからです。
- ①年金がカットされるリスク:年金と給与の合計額が基準を超えると、在職老齢年金制度により年金が一部支給停止(カット)されます。
- ②手取りが減るリスク:年金額が増えたことで、天引きされる税金や社会保険料が増加し、結果的に手取り額が減ってしまうケースもあります。
年金が増えるという事実と合わせて、在職老齢年金制度の仕組みや、老齢年金からも税金・保険料が天引きされるという現実を知っておくことが大切です。制度の全体像を理解し、手取りで損をしないよう常に最新の受給状況を把握しておきましょう。
参考資料
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「老齢年金請求書の事前送付」
- 日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」
- 日本年金機構「令和4年4月から在職定時改定制度が導入されました」
和田 直子