1.1 なぜシニアの就業者数は増え続けているのか?

総務省「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」によると、65~69歳の就業率は53.6%、70~74歳は35.1%、75歳以上は12.0%と、いずれの年代も過去最高を記録しています。

特に65〜69歳の層では、およそ半数が引き続き就労を選択しています。

その背景として大きいのが「年金の実質的な目減り」です。

2025年度の年金は前年度から1.9%引き上げられましたが、物価の上昇率には届かず、結果的に年金は実質目減りの状況が続いています。

さらに、厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、完全に年金だけで生活している人は「43.4%」となっています。

つまり、年金収入だけでは暮らしを支えられない世帯が増えており、結果として多くの高齢者が就労を続けざるを得ない状況にあるのです。

「働けるうちは働いて老後資金を確保する」という考え方は合理的に思えますが、一定の収入を上回ると「在職老齢年金制度」によって年金の一部が減額される仕組みがあるため注意が必要です。

次章では、この在職老齢年金制度の内容と、2026年度に適用される支給停止調整額について詳しく解説していきます。