10月4日に、高市早苗氏が自民党新総裁に選ばれました。ビジョンある経済政策などで党員から多くの得票を集めたことから、党員の民意が反映された形となりました。

高市総裁の政策には、安全保障やエネルギーなどさまざまな分野で注目が集まります。

なかでも「給付付き税額控除」は、私たちの生活とも密接する政策です。この給付付き税額控除とは、どういった政策なのでしょうか。仕組みや強みなどを詳しく解説します。

1. 給付付き税額控除とは?

給付付き税額控除とは、給付と税控除を組み合わせた制度です。

税額控除により一定額の税金を差し引き、控除しきれない分については給付金を支給するのが一般的な仕組みです。

現時点では詳細な内容は決まっていないものの、高市総裁は制度の設計や対象者の設定、所得を把握するためのシステムづくりなどに着手することを明言しています。

高市総裁はかつて消費税減税に言及したものの、今回の総裁選においてはより現実的な政策にシフトした形です。

次章では、より詳細なシミュレーションをしてみましょう。

2. 非課税世帯には「現金給付」、中間層には「減税」

制度がイメージしやすいよう、簡単なシミュレーションをしてみましょう。

仮に、税控除額を10万円として制度がスタートした場合、中・高所得層、低所得層、非課税世帯でどのような措置が講じられるのか、検証します。

中・高所得層、低所得層、非課税世帯2/2

中・高所得層、低所得層、非課税世帯

LIMO編集部作成

  • 中・高所得層(納税額30万円):10万円が減税され、納税額が20万円に減る。
  • 低所得層(納税額8万円):8万円が減税され、納税額は0円になる。控除しきれない2万円は現金で給付される。
  • 非課税世帯(納税額0円):控除できる税金がないため、10万円全額が現金で給付される。

所得のある層には一定の減税が行われます。低所得層になると、納める税額が少なくなるため、税控除しきれない可能性もあるでしょう。

給付付き税額控除では、引ききれない分は現金で給付します。そのため、無駄なく恩恵を受けられるのです。

そして、非課税世帯は差し引ける税金がないため、全額現金給付が行われます。これまでの給付金のような側面を持つため、より速く直接的な支援が届くのです。

給付付き税額控除は給付金事業と減税事業のいいとこ取りをした政策であり「給付か減税か」がまとまらない現在の政治運営において、有効な解となる可能性があるでしょう。

次章では、給付付き税額控除の強みをさらに解説します。

3. 強みは「社会保険料の逆進性」の緩和

給付付き税額控除の強みは、社会保険料の逆進性を緩和できる点にあります。高市総裁自身も、以下のように発言しています。

「社会保険料の逆進性を考えると最もメリットがあり、中所得、低所得の方々を応援する方法だ。」

出所:自由民主党「もう一度信頼される自民党に 高市新総裁が就任会見」より引用

社会保険料の逆進性とは、所得の低い人ほど納める社会保険料の負担割合が重くなる現象です。

社会保険料は、所得に応じて税率が上がる所得税の累進課税とは異なり、収入がある一定額を超えると保険料の算定に上限(キャップ)が設けられています。

そのため、収入全体に占める社会保険料の負担割合は、高所得者ほど低くなり、逆に低所得者の家計ほど圧迫されるという「逆進性」という問題を抱えています。

こうしたマイナスな性質を解消しつつ、どの所得層の人にも支援が届くようにするための制度が、給付付き税額控除なのです。

一方、給付付き税額控除には課題も存在します。次章で解説します。

4. 制度設計には時間がかかる

給付付き税額控除は、これまでの給付金事業のようなスキームでの運用はできません。具体的な制度設計には、多少の時間がかかるでしょう。

制度スキームとしては、2024年度に実施された定額減税が近い形といえます。しかし、よりよい制度づくりには、システム整備が欠かせません。

とくに整備を進める必要があるのは、マイナンバーカードと所得情報の紐付けでしょう。

給付付き税額控除を実施するには、国民1人ひとりの所得情報の把握が求められます。所得の把握手段が現状では限られるため、マイナンバーカードの普及をいかに進めるかが鍵になるでしょう。

5. 急務は「ガソリン減税」と「年収の壁」

給付付き税額控除は、給付と減税の両方の側面を持つ政策です。さまざまな人に支援が届きやすく、社会保険料の逆進性の緩和も期待できます。一方で、制度設計は丁寧にする必要があり、実施までには多少の時間を要するでしょう。

だからこそ、まずは早急な物価高対策が必要です。具体的には、2024年から議論が続いている「ガソリン暫定税率の廃止」と「年収の壁の引き上げ」が求められます。

高市総裁もガソリン減税・年収の壁の引き上げには賛成しているため、年内の制度改正を実現できるかが、今後の日本経済にも影響するでしょう。

参考資料

石上 ユウキ