この記事の読みどころ

好調が続いてきた国内トラック販売ですが、足元は少し陰りが見え始めています。

インフラ更新需要の拡大など、トラック販売に対する追い風は続いていると考えられます。

関連部品メーカーなどの生産能力が増強されれば、トラック販売はまだ伸びる余地が大きいと言えましょう。

国内新車販売の回復が遅れる中、トラックの販売好調が続いてきた

2014年3月に実施された消費増税後、国内の新車販売は大幅減少を余儀なくされました。増税から1年経過しても、まだ本格回復は見えていません。

その中にあって、消費増税後も好調な販売を維持してきたのが商用車です。特に、大型・中型の商用車(以下、トラック)は、消費増税直後こそマイナスになりましたが、すぐに大幅増加へ回復しています。

トラック販売好調の背景には、東日本大震災からの復興需要に加え、2020年東京五輪開催や国土強靭化計画によるインフラ更新需要、景気回復による貨物量の増加等があります。

とりわけ、大型の建設工事が増加したことで、ダンプカーやミキサー車などの建設用トラックの販売が伸びてきました。

トラックメーカーも相次いで過去最高益更新

一般的に、国内トラック事業は高い収益性を持っています。国内のトラック販売好調により、トラックメーカーや関連部品メーカーの業績も拡大しました。

特に、トラックメーカーのいすゞ自動車(7202)や日野自動車(7205)は、ASEAN地域の不振があったにもかかわらず、過去最高益を更新し続けてきました。

足元のトラック販売に陰りが見え始めてきた?

ところが、その国内トラック販売の勢いが衰え始めてきました。月次販売で見ても、プラス幅が小さくなっているだけでなく、マイナスになる月も出始めています。

販売台数の絶対値としては高い水準を維持していますが、曲がり角に差し掛かっている可能性もあります。トラック関連企業の株価が今一つ伸び悩んでいる大きな要因とも言えましょう。

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出所:日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会から筆者作成

トラック需要が減速する理由は見出せない

ただ、現時点では、トラック販売が大きく減速する理由はないと考えられます。震災復興需要は峠を超えたことは確かですが、インフラ更新需要はこれからが本番です。

また、新国立競技場のトラブル(白紙撤回、再決定)が示す通り、東京五輪向け特需の発生もこれからです。ダンプカーやミキサー車など建設用を中心に、トラック需要はまだ拡大余地が大きいと言えましょう。

関連部品メーカーの生産能力が不足している可能性

では、なぜ最近の販売に頭打ち傾向が見られるのでしょうか? 大きな理由として考えられるのが、関連部品メーカーの生産能力が不足していることです。

トラックの部品は、乗用車の部品のように専用設備を使った大量生産が難しいのです。どうしても人手に頼らざるを得ませんが、一昨年来からの人手不足が影響している可能性があります。

生産能力の増強に踏み切り始めた、効果が出るまで少し時間

生産能力を増やすのは簡単に見えるかもしれませんが、多額の設備投資が必要ですから、小規模の企業にはそう簡単に決断できることではありません。

しかし、今後のトラック需要を考え、多くのトラック関連企業がようやく、生産能力の増強に踏み切ろうとしています。一部は既に増強に着手しています。

こうした設備増強、あるいは、人員増強の効果が、販売増加という形になるまで少し時間がかかります。今は、将来の事業拡大に向けた“充電期間”とも考えられます。

LIMO編集部