2025年のノーベル賞で、医学賞を大阪大学の坂口志文特任教授、化学賞を京都大学の北川進特別教授が受賞しました。喜ばしいニュースとともに、Xで話題になっていたのが、ノーベル賞の受賞によって得られる賞金についてです。今回の記事では、制度の詳細と過去の経緯を紹介します。
1. 【ノーベル賞の賞金】実は運用状況で変動してきた賞金額
2025年のノーベル賞の賞金は、1100万スウェーデン・クローナ(以下、クローナ)です。これは10月9日時点の円換算で、約1億7800万円となります。
ノーベル賞は1901年に初めての授賞式が行われ、当時から受賞者に賞金を出しています。第1回の賞金は15万クローナ。賞金は創設者であるアルフレッド・ノーベルの遺産(約3100万スウェーデン・クローナ)が原資になっており、現在もその元手を運用して得た資金で賄われています。
賞金額はノーベル財団の運営状況などに応じて、変動してきた歴史があります。2001年以降は1000万クローナでしばらく推移していましたが、リーマン・ショックなどの金融危機の影響で、2012〜2019年は800〜900万クローナに減額されていました。
2020年に1000万クローナに戻り、2023年からは財団の運用成績が向上したことを理由に過去最高額である1100万クローナになりました。
2. 【ノーベル賞の賞金】日本では非課税。きっかけは湯川秀樹氏の受賞
ノーベル賞の受賞によって発生する賞金は日本では非課税の扱いになっています。これは所得税法の非課税所得に「ノーベル基金からノーベル賞として交付される金品」が規定されているためです。
この制度の変更は、1949年に湯川秀樹氏がノーベル物理学賞を受賞したことをきっかけに議論が起こり、最終的に「非課税」という方向で調整されました。
なお、ノーベル賞でも経済学賞だけは、賞金の出所がノーベル財団ではなく、スウェーデン国立銀行となっているため、現在の仕組みだと課税がされることになります。まだ日本人の経済学賞の受賞者はいませんが、受賞した際には再び議論されることが予想されます。
3. 【ノーベル賞の賞金】Xではクローナで支払われることに安堵(?)の声も
Xでは賞金額を知って、さまざまな声が飛び交っています。なかには「賞金はスウェーデン・クローナで支払われると知って、安心した。獲る予定はないけど(笑)」と、昨今の為替相場を踏まえた意見もありました。
スウェーデン・クローナと円の相場は、2020年春ごろから円安傾向が続いており、直近1年では1スウェーデン・クローナ=14.36円から16.17円と推移しており、相対的にノーベル賞の賞金の価値は上昇しています。
もちろんノーベル賞は受賞自体が大変な名誉で、賞金はあくまでおまけ。ただ金額が大きいだけに、筆者を含めていろいろと想像を膨らませている人も多いようです。今後も日本人から多くの受賞者が輩出されることを期待したいですね。
参考資料
大蔵 大輔