「幸い高校では友人に恵まれ、以降いじめられたことはありません。でも、大学、就職と新しい環境に身を置くたびに、またいじめられるのでは、という不安が付きまといました。そして、誰かに私が『いじめられっ子だった』とバレたらどうしよう、とビクビクしていました」

Aさんは続けます。

「今、3歳の娘がもしいじめられたらどうしよう。まだ先の話かもしれませんが、今からすごく心配になる瞬間があります。あんな苦しい経験、娘には味わってほしくない。幸い主人は私の過去を知り理解してくれているので、私と一緒に『もし、娘がいじめにあえば』という話に付き合ってくれます。証拠を集めて相手の親を訴えようか、転校させようか…。大げさかもしれませんが、いじめにあったことがある人間からすれば、いじめなんて防ぎようがないんです。どれだけいじめにあわない対策を考えたって、ちょっと歯車が変わっただけで、いじめは起こるんです」

「同窓会の案内を見て、『この世からいじめはなくなることがないな』と思いました。だって、やった方は忘れているんですもの。『過ぎたことは忘れて前に進まなければいけない』というのもよくわかっています。でも、私は、彼女たちに心の底から悔いてもらわないと、前には進めそうにありません」

Aさんの話を聞いた筆者は、やりきれない思いにかられました。

「いじめはなくそう」というのは、いじめられた経験のない人の理想論に過ぎない…。Aさんはそうまで言い切り「我が子がいじめにあう可能性を常に考え、対策を練ることって必要だと思います」と目を潤ませて話してくれました。

親としてできること

いじめのきっかけとはいつもほんの些細なこと。「あの子、ちょっと何かが違うから」「あの子、前こんなことを言って自分をイヤな気持ちにさせたから」。それがどんどんとエスカレートしていくのでしょう。

大人社会にもいじめははびこっています。ママ友、サークル、職場…。大人の世界でいじめがなくならないのに、果たして子どもたちのいじめはなくせるのでしょうか。どれだけ人間教育や道徳教育をしたところで、本能として人をさげすむ気持ちがある限り、いじめはなくならないのだと思います。

ただ、我が子に「いじめがどれだけ愚かで未熟なことか」を教えることは親の責務であることは確かです。解決策が見つからない「いじめ」の問題、あなたは子どもにどう教えていきますか?

大中 千景