昨年2018年の12月から今年19年の年初にかけて、米国を起点として世界の株式市場に動揺が走りました。

リーマンショックが収まってから、特に2013年にアベノミクスが始まってからの4~5年間は、様々な要因から日本、米国、ヨーロッパ諸国といった先進国の株式市場は基本的に上昇相場でした。

株式価格が上昇を続けていると、短期のみならず長期的にも「世界って結局成長するんだろうな」と考えがちですが、いざ株式市場が動揺すると、私たちは「やっぱり米国や欧州も日本のように、30年間株式価格がレンジ圏内にとどまってしまうというケースもあるのでは?」などいろいろなことを考えてしまいがちです。

また、米国や欧州諸国もさることながら、ぐんぐん成長していくだろうと思っていた新興国にしても、「どの新興国も昨年のトルコやアルゼンチンのようになってしまうのでは…」と勘繰ってしまう方もいらっしゃるかもしれません。

日本が「横ばいの30年」を経験した原因は、人口動態

日本経済が30年間も停滞をしてしまった原因は、バブル経済崩壊後の銀行の不良債権処理など細かいことを上げるときりがありませんが、たった一言で理由を挙げるとすれば、「人口減少・少子高齢化」です。

上の図はもう読者の方も何回も見たことがあるであろう、日本の人口ピラミッドです。

ピラミッドの形もさることながら日本は人口自体も減少しており、さらにこういう人口ピラミッドの形状の場合、引退世代の割合が多いわけなので、労働人口はもっと急激に減少しています。

人口の減少は生産性の改善を促すなど正の側面も持っていると言われますが、やはり人口自体が減ってしまうことにより経済規模が小さくなると、スケールを活かしてこそできる活動がどんどんできなくなってしまうため、できないことだらけの社会になっていってしまいます。

非常に極端な例ではありますが、人口が多いためにGDPの規模でも日本の2倍以上になった中国が、その経済規模による資金力を活かして、宇宙開発という莫大な資金を必要とする分野で日本をはるかに上回る開発資金を投入して次々に新しい宇宙活動を行っているのはご存じの通りです。

人口減少・少子高齢化に直面するのは日本だけではない

日本の人口減少・少子高齢化が世界の主要国の中でもかなり問題が大きいため、私たちは日本の人口減少・少子高齢化問題に目がいきがちです。

しかしこちらもすでにご存じの方が多いと思いますが、人口減少・少子高齢化に直面している・すぐに直面することになる国は日本だけではありません。

欧州諸国も、韓国も、中国も、程度の差こそあれ同じ問題を抱えています。

上の図は、中国の人口ピラミッドです。

中国の人口動態は、ちょうど日本と20年のタイムラグで、規模は約11倍ですが、同じようなものになっているといわれています。

実際に、日本の生産年齢人口がピークを迎えたのが1995年前後、人口がピークを迎えたのが2010年前後なのに対して、中国の生産年齢人口、人口はそれぞれちょうど日本から20年経った2015年前後、2030年前後にピークを迎えた(迎える)と言われています。

「世界」は日本や中国のような対策をとれない

日本は移民の方を日本に受け入れる、具体的には毎年20万人程度の方を新たに受け入れることによって、数十年かけて持続可能な社会をつくっていこうという方向に政府が舵を切ったように見えます。

中国も、一人っ子政策を終了することで、人口減少・少子高齢化に歯止めをかけようとしているようです。

しかし、世界の人口ピラミッドが日本、欧州諸国、韓国や中国のようになってしまうと、移民や一人っ子政策の終了という手段で人口動態からくる経済の停滞を防ぐことはできません。

そのため、人口ピラミッド自体がどういうかたちになっていくかが、世界の超長期的な経済成長にダイレクトにインパクトを与えると考えられます。

世界の人口ピラミッドの今後は

下の図は、国際連合が行った、2100年までの世界の人口ピラミッドの推移の予測です。

これはもちろん予測ではあるのですが、人口動態は株式価格と異なり、将来の予測が比較的簡単だと言われています。

この予測を信頼する場合、少なくとも21世紀の間は、世界経済は人口減少・少子高齢化による経済の停滞が主要トピックになる可能性は低そうです。

どちらかというと世界全体の場合は日本や欧州諸国とは異なり、21世紀は人口過多によって起こる数々の問題をテクノロジーで解決するという要請の方が強くなる世紀になるのかもしれません。

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