10月に入り、来年のカレンダーもそろそろ目に入る時期となりました。 新たな年の準備を始める頃、家計の将来について考える方も多いのではないでしょうか。

先日、帝国データバンクより公表された「食品主要195社」価格改定動向調査によると、2025年10月以降も飲食料品の値上げの波が続く見通しであり、物価高は長期化の様相を呈しています。公的年金は増額改定されているものの、この止まらない物価上昇の勢いには追い付いていないのが現状です。

こうした厳しい状況下、年金収入を中心として暮らすシニア世帯は、実際どのように生活を送っているのでしょうか。

この記事では、シニア世帯のリアルな暮らしぶりを、「70歳代の平均貯蓄額」、「年金収入」、そして「ひと月の生活費」に関する具体的なデータを眺めながらイメージしていきます。

1. 【シニアの貯蓄事情】70歳代の平均貯蓄額(平均値と中央値)はいくら?

老後における「経済的な安心」は、手元にある貯蓄額によって大きく左右されます。

ここでは、70歳代の二人以上世帯の貯蓄状況を見ていきましょう。

参考とするのは、J-FLEC(金融経済教育推進機構)が公表した「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」における「70歳代・二人以上世帯の金融資産保有額(非保有世帯を含む)」です。

※金融資産保有額には、預貯金以外に株式や投資信託、生命保険なども含まれます。また、日常的な出し入れ・引落しに備えている普通預金残高は含まれません。

「70歳代・二人以上世帯」の平均貯蓄額は1923万円となっています。

ただし、この平均値は一部の高額資産を持つ世帯に引き上げられている側面があり、実際の多くの世帯状況をそのまま示しているわけではありません。

実態に近い水準を示す中央値に注目すると800万円となっており、多くの世帯はこのあたりの貯蓄額に集中しているとみられます。

なお、世帯ごとの貯蓄額分布は以下のとおりです。

  • 金融資産非保有:20.8%
  • 100万円未満:5.4%
  • 100~200万円未満:4.9%
  • 200~300万円未満:3.4%
  • 300~400万円未満:3.7%
  • 400~500万円未満:2.3%
  • 500~700万円未満:4.9%
  • 700~1000万円未満:6.4%
  • 1000~1500万円未満:10.2%
  • 1500~2000万円未満:6.6%
  • 2000~3000万円未満:8.9%
  • 3000万円以上:19.0%
  • 無回答:3.5%

貯蓄額を階層ごとに見ると、最も割合が大きいのは金融資産を持たない、いわゆる「貯蓄ゼロ」の世帯で、全体の約2割(20.8%)を占めています。

一方で、「3000万円以上の貯蓄」を持つ世帯も約2割(19.0%)存在しています。

貯蓄の水準は、現役時代の働き方や生活スタイル、退職金の有無、相続の有無など、さまざまな条件によって変わります。

また、十分な額を蓄えていても、取り崩しが早ければ資産はすぐに目減りしてしまいます。

上記をふまえ、老後の資金を長持ちさせるには、「収入」と「支出」のバランスを常に意識することが大切です。

では、シニア世帯の大きな収入源である「年金」が実際にどの程度なのか、次章で確認していきましょう。