働く女性の「ヒール靴」なんで強制されるの?

ビジネス、今日のひとネタ

あなたの会社には服装規定はありますか? 近年では、クールビズやオフィスカジュアル化の動きから、ドレスコードのない企業も多くなっています。一方で、株式会社モニタスが、2016年に都内で働く男女800人を対象に実施した調査では、「東京の企業の66.1%にドレスコードがある(そのうち「明確ではないが、暗黙のルールがある」が40.5%)」という結果になり、働くときの服装には、まだまだ縛りがあるのが実際のところのようです。

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そのドレスコードの一部として、昔から「ビジネスやフォーマルな場では、ヒールのある靴を履くもの」とされてきました。また、ヒール靴は足が長く身長が高く見えるため、スタイルをよく見せるアイテムとしても使われ、ある意味で「女性らしさ」の象徴となってきた歴史があります。

そうした中、先日、グラビアアイドルの石川優実さんがTwitterで「私はいつか女性が仕事でヒールやパンプスを履かなきゃいけないという風習をなくしたいと思ってる」と発言して、大きな反響を呼びました。

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ケガしてまで履かなきゃいけない!?

石川さんは、「パンプスで仕事をして足を怪我した」という自身の体験を例にとりながら、「なんで足怪我しながら仕事しなきゃいけないんだろう、男の人はぺたんこぐつなのに」と不満を述べています。

この発言に対して、多くの女性から賛同の声が上がり、

「怪我をしても履かないといけない靴って、何?」
「働くのに向かない靴を指定するのやめてほしい」
「私も以前パンプスで病気になり、退職することになったうえ、就職活動すらできなくなった」
「ヒールの強制は現代の纏足だ
(※)

と、ヒールのある靴を強制されることに対して憤りを示す意見が飛び交いました。加えて、男性とみられる人たちからも「女性は好きでパンプスとかヒールを履いてる人ばかりだと思っていた」といった驚きと反省のコメントが寄せられました。
※ 纏足(てんそく)……昔の中国で、幼少期から女の子の足に布を固く巻きつけて縛り、大きく成長しないように矯正した風習

「我慢」しているのは女性だけじゃない

そうした声があった一方で、これらの意見に対して、

「男の革靴だって足が痛くなる」
「男だってスーツやネクタイやめたい」
「なぜあえて男性と比較するのか」

と反論や心の叫び(?)を書き込む人も見受けられました。

実際、冒頭で挙げたモニタスの服装規定に関する調査では、ドレスコードのある会社で働く男女で、オフィスファッションのカジュアル化について「いい取り組みだと思う」と回答した人は87.1%にものぼりましたが、そのうち半数弱の42.0%が「いい取り組みだと思うが、自分は取り入れられていない」とも答えており、つまり「オフィスカジュアルをしたいのにできない」という層が半数くらいいると分析されています。パンプスを強要される女性と同様に、ドレスコードに縛られている男性が多数いるのも確かでしょう。

実はイギリスでも同様の議論が

実は、これにそっくりの議論が、すでに2017年のイギリスでも行われているのです。

その発端となった出来事は、2015年に大手会計事務所の受付として派遣されたニコラ・ソープさんが、出勤初日に服装規定にあったヒールを拒否したところ、その日の日給さえ払われず派遣元の会社から解雇された、という事件でした。ソープさんはこれに対して、政府に訴えるオンライン請願で署名を集めたのですが、15万筆以上の署名が集まったため、2017年に「ヒールを強要するような職場の服装規定を認める法律の是非」が英国議会で審議されることとなりました。

ソープさんは服装規定があることの意義は肯定しつつも、派遣元が設けていた服装規定を「時代遅れで性差別的」とし、彼女の意見に同意する声が多く集まりました。審議の結果、請願委員会は「差別的な服装規定は違法だが、そうした服装規定はいまだに残っており、現状の法律は不十分である」として法改正を求めました。一方で、この議論に対して、Twitterでは「夏にスーツとネクタイを着用しないといけないのは男性に対する性差別的な服装規定なのか?」という意見が出るなど、まさに今回の議論はこのときと同じような流れをたどっています。

その決まり、ホントに必要?

もちろん、ヒールを履きたい人がヒールを履くことには何の問題もありません。しかし、「ヒールのある靴を履かなくてはならない」という服装規定や暗黙の了解は、健康面から考えても作業効率の面から考えても、仕事にふさわしいとは言い切れない面があります。また、もしものときに避難する際も、転んだりするかもしれず危険です。

実際、東日本大震災のときには「危ないからヒール脱いで非常階段を降りた」「革靴で16キロ歩いたせいで1カ月半ぐらいずっとヒザが痛かった」といった人もおり、こうしたことから「弊社は東日本大震災からスニーカーOKになりました」という投稿もあります。

会社での服装については、「それぞれの常識に任せたい」と言っても、常識や価値観が世代や性別・立場によって大きく違う現実もあり、ある程度の規則は必要でしょう。ただ、それによって良いコンディションで仕事ができなかったり、危険が伴ったりするのであれば、本末転倒かもしれません。

なかなか難しい問題だけに、みんなが納得する明快な答えはないのですが、少なくとも男女それぞれに、多数の人が「理不尽だ」と思ってしまうようなルールであれば、今後、こうした声をきっかけに、徐々に見直されていくのかもしれませんね。

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参考記事

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2005年創業。ビジネス書・実用書を中心とした書籍出版や企業出版、メディア・コンテンツ事業、デザイン制作事業などを手がける。

主な刊行書籍に、20万部突破の『誰からも「気がきく」と言われる45の習慣』をはじめ、『特定の人としかうまく付き合えないのは、結局、あなたの心が冷めているからだ』 『起業家のように企業で働く』 『すべての仕事を紙1枚にまとめてしまう整理術』 『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』 『自分を変える習慣力』 『鬼速PDCA』など。