4.4 【知っておきたい】生活費に占める食費の割合「エンゲル係数」について
先ほど紹介した65歳以上夫婦の家計にも出てきた「エンゲル係数」が、家計の状況を把握するうえで役立つ理由を、ここで改めて説明します。
エンゲル係数とは、生活費にあたる消費支出の中で食費がどの程度の割合を占めているかを示す指標です。
計算方法はシンプルで、次の式で求められます。
エンゲル係数=食費÷消費支出×100(%)
一般的に、エンゲル係数が高いほど食費の割合が大きく、生活水準は低い傾向にあります。
これは、所得が少ないほど食費が支出全体に占める比率が高くなるためです。
反対に、所得が多い世帯では教育費や娯楽費、交通費など幅広い支出が増えるため、エンゲル係数は低くなる傾向があります。
ただし、この指標は年代や世帯構成によっても変動します。
たとえば、子育て世帯では成長期の子どもの食費がかさみ、エンゲル係数が高くなることがあります。
一方で、高齢の単身世帯では食費の絶対額は少なくても、他の支出が抑えられているため、結果的にエンゲル係数が高くなることもあります。
そのため、エンゲル係数が急に上昇したときは、食費が増えすぎていないか、あるいは他の支出を減らさざるを得ない状況なのかなど、支出全体を見直すサインとして捉えるとよいでしょう。
5. まとめ
今回は、70歳代のシニア世帯に焦点を当て、金融資産の平均と中央値、年金受給額、そしてひと月の家計の収支といったリアルなデータを確認しました。
ご紹介した数値は、世帯ごとの差が大きいため、あくまで参考として留めておくことが重要です。最も大切なのは、これらの情報をもとに「自分に当てはめて考える」ことです。
少子化により、いまより年金給付水準が低くなる可能性は否定できません。
将来も昨今のような物価高となるかもしれません。さまざまなケースを想定して、早い段階から資金準備を始めることが賢明です。まずはご自身の収支を把握し、できることから行動を始めましょう。
参考資料
- 厚生労働省「健康寿命の令和4年値について」
- 厚生労働省「令和5年簡易生命表の概況」
- J-FLEC 金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省「家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要」
荻野 樹