5. 現役時代の”平均年収”がいくらなら「高額受給者」になれるのか
では、年金が月額30万円を超えるには、現役時代に一体どれくらいの年収が必要なのでしょうか?
ここでは、厚生年金の計算式を基に、以下のモデルケースで具体的な年収を試算してみましょう。
- 2003年4月以降に厚生年金に40年間加入
- 国民年金の未納期間はなく、満額(年間83万1696円)を受給可能
まず、老齢年金月額30万円の内訳を見てみましょう。満額の国民年金(年間83万1696円)を差し引くと、残りの金額が厚生年金から支払われることになります。
つまり、厚生年金だけで年間約276万8304円、月額に換算すると約23万692円を受け取る必要がある計算になります。
360万円 - 83万1696円 = 276万8304円
この276万8304円の厚生年金を受け取るための「平均標準報酬月額(現役時の月収)」を計算してみましょう。
- 平均標準報酬額×5.481/1000×480カ月(40年間)=276万8304円
- 平均標準報酬額=約105万2234円
平均標準報酬月額は約105万2234円。これに基づく年収は約1262万円に相当します。
40年間で平均年収1262万円という数字は、多くの人にとって現実離れした金額に感じることでしょう。公的年金だけで月額30万円以上の収入を確保することは、極めて難しいと言えます。
もし、老後にその水準の生活を望むなら、現役時代からの計画的な準備が不可欠です。iDeCoやNISAといった私的年金制度を賢く活用し、公的年金に頼らない資産形成を今から始めることが、将来の安心につながるでしょう。
6. 公的年金だけでは足りない?今から始める老後資金準備
冒頭でご紹介したように、公的年金のみで生活費をまかなっている高齢者世帯は半数に届いていないのが実情です。
多くの高齢者が、年金に加えて、働いて得た収入や貯蓄、そして資産運用による収益などで家計を支えていることがわかります。
老後の生活に必要な金額は、年金の受給額や個々のライフスタイルによって大きく変わります。まずはご自身の年金受給額を計算し、将来のためにいくら資産を準備すべきか、早めに把握しておくことが重要です。
資産形成を始める際は、将来の物価上昇や少子化に伴う年金制度の変化も考慮に入れておきましょう。さらに、年齢を重ねることで増える可能性のある医療費や介護費用といった、予期せぬ支出への備えも大切です。
日々の物価高で家計に余裕がないと感じるかもしれませんが、将来の不安を減らすためには老後資金の準備は欠かせません。たとえ小さな一歩でも、今からできることを少しずつ始めていけると良いでしょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします ~年金額は前年度から 1.9%の引上げです~」
- 日本年金機構「年金はいつ支払われますか。」
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「年金の繰上げ受給」
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編2024年(令和6年)平均結果の概要」
和田 直子