5. 厚生年金・国民年金の平均月額《男女差・個人差をグラフで見る》
ここからは、60歳~90歳以上の全受給権者の年金月額を、男女別グラフを用いて見ていきます。
5.1 「厚生年金」の平均年金月額
- 〈全体〉平均年金月額:14万6429円
- 〈男性〉平均年金月額:16万6606円
- 〈女性〉平均年金月額:10万7200円
※老齢基礎年金部分を含む
5.2 「国民年金(老齢基礎年金)」の平均年金月額
- 〈全体〉平均年金月額:5万7584円
- 〈男性〉平均年金月額:5万9965円
- 〈女性〉平均年金月額:5万5777円
平均年金月額を男女別で見ると、国民年金(基礎年金)では大差がない一方、厚生年金では月額でおよそ6万円もの顕著な差が見られます。
この差が生まれる背景には、受給額が「現役時代の収入」と「加入期間」で決まるしくみと、女性のキャリアパスの傾向があると考えられるでしょう。
今の受給者世代では、女性が主に出産や育児といったライフイベントを機にキャリアを中断したり、パートタイムで家計を支えたりするケースが多く見られました。
こうした働き方が、結果として厚生年金の加入期間や現役時代の平均収入に差を生み、老後の年金額に直接反映されているのです。
しかし、この状況は今後変化していくでしょう。かつての専業主婦世帯が中心だった時代とは異なり、現代では共働き世帯が主流となり、正社員として長くキャリアを築く女性も増えました。
社会がこのように変わっていくことで、女性が厚生年金に加入する期間はより長くなり、生涯にわたる収入も増えていきます。
そのため、今の現役世代が老後を迎えるころには、年金の額に見られる男女の差は、現在よりも小さくなっていると考えられるでしょう。
6. 安心できる老後生活を迎えるために早期に計画を
今回見てきたように、シニア世代の年金受給額は厚生年金と国民年金で差があり、現役時代の働き方や加入期間によっても大きく変わります。
年金は生活の基盤となる重要な収入源ですが、受給額だけでは十分とは言えない場合もあります。
そのため、自分の年金見込額を確認し、老後の生活費とのギャップを把握することが、安心できる老後生活の第一歩です。
早めに家計の計画を立て、必要に応じて貯蓄や私的年金、資産運用など複数の備えを組み合わせることが大切です。
参考資料
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
- 政府広報オンライン「パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入対象により手厚い保障が受けられます。」
- 厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ」に関するQ&A(キャリアアップ助成金関係)
和田 直子