5. 70歳代以上・夫婦二人世帯の「老後の生活実態」をポイントごとに整理
これまで取り上げたデータを踏まえ、ここからは実際の収支状況を確認していきましょう。
5.1 ポイント1:収入と支出のバランス
70歳以上の夫婦二人世帯では、標準的な年金収入は月約23万2000円とされています。
一方で、生活に必要な消費支出は平均で月約25万2000円です。
加えて、実際には税金や健康保険料といった非消費支出も発生するため、実際の負担額は消費支出だけの金額を上回ります。
このように、標準的な年金収入と平均的な支出を照らし合わせると、70歳代夫婦の家計は毎月不足が生じることが分かります。
5.2 ポイント2:貯蓄額による補填
年金以外に収入がない場合、毎月の不足分は貯蓄でまかなう必要があります。
たとえば、先ほど確認した70歳代二人以上世帯の貯蓄中央値「800万円」を保有しているとしましょう。
老後の生活で毎月5万円の赤字が続くと仮定すると、800万円を5万円で割ると160ヵ月となり、その期間は貯蓄で赤字分を補いながら生活できる計算になります。
5.3 ポイント3:老後のために考えておくべきこと
老後に備えて必要な貯蓄額を見積もるには、次のような手順でご自身の世帯状況を確認していくことが欠かせません。
- 老後の収入(年金収入)を知ること
- 月の生活費を知ること
- 現在の貯蓄額を把握すること
平均値や中央値はあくまで目安にすぎないため、自身の収入・支出・年金見込み額などの実数値を把握し、必要となる老後資金を具体的に計算しておくことで、安心して老後生活を迎えられるでしょう。
6. 将来に向けて今からできる準備を少しずつでも進めていきましょう
今回は、「70歳代無職夫婦世帯」の生活に焦点を当てて解説しました。
年金生活を考える際に大事なことは、自分に当てはめて考えることですので、今回確認してきたデータはあくまで参考にし、ご自身の年金受給額や理想の生活費をふまえて将来に向けた準備をしていきましょう。
しかし、なかには「老後に、年金だけで生活していくのは心もとない」と感じる方もいるでしょう。
生活していく上で年金だけでなりない部分は、貯蓄などを取り崩して補っていくことになります。
なお、老後資金の準備方法として、貯蓄や資産運用などさまざまな選択肢があります。
「みんながやっているから」ではなく、ご自身の家計やライフスタイルに合った方法をしっかりと確認した上で、計画的に資金の準備に取り組んでいくことが大切です。
参考資料
- 内閣府「令和6年度 高齢社会対策総合調査(高齢者の経済生活に関する調査)の結果(全体版)」
- 総務省「家計調査報告 2024年1世帯当たり1か月間の収入と支出」
- 金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」
- 日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」
- 厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」II 各種世帯の所得等の状況
- 厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」用語の説明
矢武 ひかる