2019年1月31日に行われた、LINE株式会社2018年12月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料
スピーカー:LINE株式会社 代表取締役社長 出澤剛 氏
LINE株式会社 取締役/CFO 黄仁埈 氏
2018年12月期通期ハイライト
出澤剛氏:出澤でございます。本日はLINE株式会社2018年度通期決算発表コールにご参加いただき、誠にありがとうございます。さっそくですが、私から2018年度の振り返りおよび今後の事業戦略についてご説明申し上げます。
ハイライトとしましては、2018年度の売上収益は2,072億円となり、過去最高を達成しました。
2018年にとくに注力したPay・Fintech分野では、主要KPIである「LINE Pay」のグローバル決済高が1兆円を超えたことに加え、日本国内のスマホ決済可能箇所100万ヶ所の目標も達成しました。さらに、その他の金融サービスも順次立ち上げを発表し、一部についてはサービスを開始いたしました。次のページ以降で、詳細をご説明します。
エンゲージメント/通期業績
はじめに、「LINE」のエンゲージメントです。
主要4ヶ国合計のMAUは前期比で微減となりましたが、トップシェアをもつ日本・台湾・タイの3ヶ国合計のMAUは、前期比で5.7パーセント増加しました。
さらに、ユーザーのエンゲージメントを示すDAU/MAU比率においては、主要4ヶ国では77パーセント、主要3ヶ国では80パーセントを超え、非常に高い水準を維持しています。
国内MAUは前年同期比7.7パーセント増の7,900万人となり、そのうちの85パーセントの方に毎日ご利用いただいております。この多くのユーザーのみなさまとのエンゲージメントこそが、「LINE」のもつ大きな価値だと考えています。
2018年度の売上収益は前年比で18.7パーセント増加し、過去最高の2,072億円を記録しました。
コア事業の売上は、広告事業の順調な成長により、前期比14.1パーセント増の1,784億円となった一方、営業利益率は、コンテンツサービスの拡大のためのマーケティング費用や広告プラットフォームの移行費用が増加したことにより、14.9パーセントとなりました。
戦略事業の売上は、コマースサービスの成長に牽引され、前期比60パーセント増の288億円となりましたが、昨年(2018年)からお伝えしているとおり、「LINE Pay」やFintech分野への積極的な投資を行った結果、349億円の営業損失となりました。
コア事業|広告
続いて、コア事業の広告です。
2018年は、広告事業にとってさらなる成長に向けた変革の年となりました。アカウント広告ではシステム刷新を行い、従来の月額固定方式から従量課金方式への変更を行いました。これにより、より多くの新しい企業にアカウントをご活用いただけるようになっただけではなく、すでにアカウントを開設済みの企業が、ブランドごとにアカウントをもつことが可能となるなど、活用の幅が大きく広がりました。
国内では、12月より新料金プランでのアカウント開設が始まり、12月単月で51件の新規アカウントが開設され、非常によいスタートを切ることができました。その結果、アカウント広告の売上は、前年比24パーセント増の567億円となりました。
ディスプレイ広告でも、従来の広告プラットフォームから、より拡張性の高い「LINE」独自の広告プラットフォームへの移行を8月から順次開始し、年内に移行を完了させました。
新プラットフォームへの移行に開発リソースを優先配分した影響もあり、広告単価は横ばいとなりましたが、タイムラインおよびNEWSのインプレッションが引き続き増加し、ディスプレイ広告の売上は、前期比34パーセント増の362億円となりました。
これらの結果、2018年度の広告売上収益は前期比29.9パーセント増の1,082億円となり、1,000億円の大台を突破しました。さらに新しい取り組みとして、「LINE Sales Promotion」を開始いたしました。
コア事業|コミュニケーション・コンテンツ・その他
続いて、コア事業のコミュニケーション・コンテンツです。
2018年度のコミュニケーション売上収益は前年比5.6パーセント減の285億円、コンテンツ売上収益は前年比4.8パーセント減の382億円と、それぞれ微減となりました。
コンテンツ事業においては、ゲーム事業では「ジャンプチ ヒーローズ」や「LINE ポコパンタウン」などの新規タイトルのヒットと従来タイトルの安定運用によって、収益の安定化が進むとともに、「LINE マンガ」や「LINE MUSIC」などのリカーリング型のサービスが大きく決済高を伸ばしています。
「LINE マンガ」の2018年の決済高は前年比44.4パーセント増加、「LINE MUSIC」は80.8パーセント増加と、それぞれ非常に大きく成長し、2019年もさらなる成長を見込んでいます。
戦略事業|LINE Pay
続いて、戦略事業である「LINE Pay」の2018年の取り組みについてご説明します。
昨年(2018年)は、経産省の掲げるキャッシュレスビジョンから始まる、さまざまな官民挙げての取り組みや多くの事業者の参入によって、モバイル決済の認知度が格段に上がり、市場が大きく活性化したキャッシュレス元年となったと言えると思います。
「LINE Pay」においても、3月の「LINEウォレット」のリリースを皮切りに、「LINE」がスマホのお財布となるべく、1年間でさまざまな施策を実施してまいりました。
加盟店拡大に向けては、店舗用アプリのリリースや自社決済端末の提供開始に加え、加盟店にとって大きなボトルネックである決済手数料を、3年間無料にするキャンペーンを開始しました。さらに11月からは、「QUICPay」との連携によるNFC決済への対応も開始し、一気に加盟店拡大が加速しました。
これらの取り組みにより、「LINE Pay」普及のための重要KPIであるスマホ決済対応箇所は、年初に設定した100万ヶ所の目標を11月に達成し、12月末時点で133万ヶ所となりました。
プロダクト面では、公共料金等をバーコード読み取りで決済できる機能や、ポイントカードの一括管理機能・家計簿サービスなど、さらなる利便性の向上を図りました。
ユーザー活性化施策としては、コード決済時の最大5パーセント還元施策や、最大20パーセント還元の「Payトクキャンペーン」などを実施し、とくに年末にかけて、新規ユーザーの獲得とユーザーの活性化を実現しました。
海外でも、「LINE Pay」のサービスは順調に成長しております。台湾政府の統計機関が発表した2018年モバイル決済市場の調査によると、「LINE Pay」がモバイルペイメントシェアNo.1となり、台湾で大きく普及したほか、タイでも着実に利用者を増やしています。
これらの結果、2018年度のグローバル決済高は、前期比126パーセント増で2.2倍となり、1兆円を超えるまで成長しました。
戦略事業|金融サービス
次に、その他の金融サービスの進捗です。
「LINE Pay」の活性化によって、利用者のさまざまな金融サービスへのニーズが顕在化すると考えており、さまざまなサービスの準備を進めております。
2018年度は金融サービス強化の初年度として、「LINEスマート投資」「LINEほけん」のサービスをリリースし、それ以外も多岐にわたるサービスの立ち上げ準備について発表しました。
また、日本だけではなく台湾でも銀行業参入準備に向け、準備会社の設立を行いました。「LINE」のもつ大きなユーザー基盤と高い技術力と、パートナー各社のもつ金融事業の知見を融合させ、従来の金融サービスにはない革新的なサービスを提供し、今後の成長ドライバーとして大きく育てていきたいと考えています。
戦略事業|コマース、AI
コマース事業では、「LINEショッピング」と「LINEデリマ」の取扱高が順調に拡大しました。新しい領域への拡大も行い、(2018年)6月には「LINEトラベル」を開始し、12月には「LINE」上から実店舗への送客を行う「SHOPPING GO」を開始しました。「SHOPPING GO」は、サービス開始からわずか1ヶ月で会員登録数が100万人を突破するなど、好調なスタートを切っています。
AI事業では「Clova Friends」など、製品ラインアップの拡充に加え、プラットフォームのオープン化により、外部企業や開発者によるスキルの開発が可能になり、「Clova」上のスキル数が大幅に拡大しました。
また、トヨタ自動車との連携など、企業パートナーとの連携も拡大した1年でした。今後も家電メーカー等との連携により、「Clova」の利用支援をさらに広げるとともに、基盤となるAI技術を一層進化させ、「LINE」全体のサービス開発にも活用してまいります。
LINE事業戦略
ここからは、2019年度のLINEの事業戦略についてご説明します。
当社は、継続的なイノベーションを通じてユーザーの生活に必要不可欠なサービスを提供し続けることが、企業価値および株主価値の最大化につながるものであると考えています。
「LINE」上での多くのユーザーとの深い結びつきと非常に高いサービス開発力を基盤に、当社はスマートポータル戦略と銘打ち、オンライン・オフラインを含めたさまざまな領域でNo.1サービスを創出してまいりました。
そのようなサービスの拡大に伴い、「LINE」プラットフォーム上では膨大かつ多種多様なデータが集積され、そのデータを適切に活用することで適切なパーソナライズやレコメンドが行われ、さらなるエンゲージメントを創出するという好循環を実現しています。
昨年からは、コア事業と戦略事業を明確に区分し、コア事業でしっかりと収益を上げつつ、今後大きな成長が期待できるFintech・コマース・AIの3つの領域を戦略事業と設定し、積極的な投資を実行し、足元の成長だけではなく中長期での大きな事業成長・利益成長を目指しています。
2019年においてもその方針は変わらず、コア事業の中では広告事業を最重要事業とし、「LINE」各サービスの成長によるユーザー接点の拡大、データ活用による広告価値の向上を通じ、さらに大きな成長を目指してまいります。
戦略事業においては、今年はFintech、とくに「LINE Pay」を最重点領域とし、ユーザーの拡大と活性化、SMBを中心とした加盟店拡大を進めてまいります。「LINE Pay」の普及後には、「LINE Pay」が各種金融サービスの基盤・入口となるだけではなく、データ活用による「LINE」全体の広告単価の向上と販促領域での新しい広告事業にも活用され、次の大きな成長の起点となる重要な領域と考えています。この「LINE Pay」を中心に、戦略事業には、昨年に増して積極的な投資を実行してまいります。
昨年に続き、本年も戦略事業は投資先行となりますが、社内では今年から始まる3ヶ年の目標の設定をしており、戦略事業において次の柱となる大きなサービス成長を実現するとともに、戦略事業においても3年以内の収益化を目指し、事業を推進してまいります。
広告事業戦略
広告事業では、既存のディスプレイ広告とアカウント広告に加え、「LINE Sales Promotion」という販促ソリューションも本格展開することで、認知・獲得・その後のエンゲージメント構築と続く広告主の多様なニーズを「LINE」上ですべて完結できるようにし、広告価値の最大化と事業拡大を進めてまいります。
広告事業戦略|ディスプレイ広告
ディスプレイ広告である「LINE Ads Platform」は、とくに重要な成長ドライバーになりますので、次のページで詳しくご説明します。
「LINE Ads Platform」の新プラットフォームでは、自動入札機能や広告フォーマットの拡充を進め、広告パフォーマンスの向上を図ります。データ面においても、許諾をいただいたユーザーの位置情報の活用や広告商品間でのデータ活用など、新プラットフォームにおいて新たな取り組みを開始しています。
広告在庫拡大の要となる「スマートチャネル」は、(2018年)12月末時点で約1,000万人ユーザーに対してニュースや天気予報などのコンテンツの露出テストを行い、ユーザーのフィードバックは好評です。今後はコンテンツに加え、広告の掲載も本格的に開始し、ユーザーの反応を注視しながら掲載方式や頻度などを検討していきます。そして、コンテンツのバリエーション拡大や精度改善を行いながら、第2四半期までにはすべてのユーザーへの配信を目標に進めてまいります。
顧客ベースについては、未だ新規開拓の余地のあるSMB領域とブランド広告主の獲得に注力をしていきます。この新広告プラットフォームの刷新により、広告パフォーマンスの向上をさせ新たな広告掲載面を増加させ、新規顧客の獲得をし、この3つのそれぞれの貢献により広告事業売上を加速化し、スマホ広告におけるNo.1のプラットフォームを確立してまいります。
LINE Pay事業戦略
続いて、「LINE Pay」です。
「LINE Pay」は、事業環境としては、前年に引き続きキャッシュレス化に向けてさらなる追い風が吹くと考えています。国内では、消費税増税対策としてデジタル決済へのポイント還元や、中小店舗へのデジタル決済導入支援等が推進をされていますし、ラグビーワールドカップ・東京オリンピックと増加していく多くの訪日観光客を受け入れるためにも、キャッシュレス社会の早期実現の必要性が高まっています。
このような事業環境の大きな変動の中、2018年は日常的に使える場所を増やすことを重要KPIとし、(2018年)12月末時点で133万ヶ所まで加盟店が拡大し、現在も順調に加盟店数を伸ばしています。2019年はその加盟店基盤をベースに、利用者の拡大と活性化に注力します。
ユーザーマーケティングを本格化し、キャンペーンやクーポンを活用した還元施策を実施するとともに、プロダクト面でもブランド提携クレジットカードを発行し、「LINE Pay」を使用できるようにして、さらなる利便性の向上を図ります。
また、加盟店も、中小店舗や地方都市の店舗を中心に引き続き拡大してまいります。2019年は、先日発表した「WeChat Pay」や「Naver Pay」との連携や、「LINE Pay」台湾やタイとのクロスボーダー連携の開始を予定していますので、店舗にとってもインバウンド対応というさらなる付加価値をご提供できると考えています。
キャッシュレス決済市場の活性化により、今後数年間は競争激化が見込まれますが、「LINE」のユーザー基盤とサービス開発力を活かし、利用者にすばらしいキャッシュレス体験を提供し、No.1シェアを実現していきます。
最後に、2019年の目標についてお示ししたいと思います。
まず売上ですが、2018年並みの高い成長率を実現したいと考えています。コアマージンの比率に関しては、2018年と同等レベルを実現したいと思います。戦略投資の額に関しては、2018年の約2倍となる600億円程度を想定をしています。それによって、まずは「LINE Pay」の活性化を行い、「LINE Pay」のグローバル月間利用者数を1,000万人にするという目標も立てています。
以上、私からの説明となります。
2018年12月期第4四半期連結業績
黄仁埈氏:CFOの黄です。それでは私から、第4四半期の実績について申し上げます。
2018年度第4四半期の連結営業収益は728億4,900万円、営業利益は93億6,500万円となりました。売上収益は559億7,100万円となり、前年同期比16.8パーセントの増加、前四半期比では7.9パーセント増加しました。
その他営業収益は、LINE GAMES株式会社がLungo Entertainment社に対して第三者割当増資を実施したことにより、公正価値再評価利益で153億円、および関連会社であるSnow Corporationの第三者割当増資による、みなし売却益が計上されました。
第4四半期におけるコア事業の売上収益は、広告売上の順調な成長により464億7,800万円となり、前年同期比11.8パーセント、前四半期比4.1パーセント増加しました。営業利益は52億7,900万円と、前四半期比で12.1パーセント減少し、営業利益率は11.4パーセントとなりました。LINE GAMES株式会社が12月から持分法適用会社に移行したことに伴う利益改善がありましたが、コミュニケーションおよびコンテンツの売上減により、利益率が低下いたしました。
次に戦略事業ですが、売上収益は94億9,300万円で、前年同期比で49.8パーセント、前四半期比で32.1パーセント増加しました。主な要因は、「LINE FRIENDS」製品の販売が繁忙期に好調だったためです。しかし、「LINE Pay」のプロモーション費用が増加したことから、営業損失は120億3,700万円となりました。
営業費用
続いて、営業費用について説明申し上げます。
第4四半期の営業費用は634億8,400万円、前年同期比32.8パーセントの増加、前四半期比では14.3パーセント増加しました。人件費等マーケティング費用は、詳細に関しまして19ページに記載していますので、ここではそれ以外の主な費用の内訳を説明いたします。
決済手数料及びライセンス料は、「LINE TV」「LINE LIVE」「LINE TODAY」のコンテンツ費用が増加したことから、前四半期比8.9パーセント増加し、81億7,300万円になりました。
販売手数料は前四半期比18.1パーセント増加し、48億7,900万円となりました。これは「LINE FRIENDS」および「LINEバイト」における売上増加が主な要因です。
外注費は「LINE NEWS」のコンテンツ提供料、金融事業などの戦略事業に関する開発外注費およびコンサルティング費の増加により、前四半期比8.8パーセント増加の88億1,100万円になりました。
減価償却費はサービス拡大に伴うサーバーの増設により、前四半期比13.1パーセント増加し、32億8,300万円になりました。
その他の営業費用は、「LINE FRIENDS」の売上増加に伴う製造原価の増加、「LINE Pay」でのプロモーション実施によるポイント引当金の追加、年度末税金計上により、前四半期比47.4パーセント増加し、142億8,300万円となりました。
従業員報酬費用及びマーケティング費用
当四半期の従業員報酬費用は、「LINE Pay」や金融事業を含む戦略事業の積極展開に伴い当該事業分野の人員を増強した結果、前四半期比4.5パーセント増加し、154億円になりました。2018年12月末時点の正社員数は、前年同期比で約1,200人増加し、5,593人となりました。
マーケティング費用は、国内における「LINE Pay」事業でのプロモーション活動に加え、タイの「LINE MAN」、台湾の「LINE Pay」や「LINEショッピング」においても積極的なプロモーションを展開したことにより、前四半期比3.0パーセント増加し、59億円となりました。
営業利益及び四半期純利益
第4四半期の営業利益は94億円、一時収益を除いた営業損失は73億円、当期純利益は19億円、一時収益を除いた当期純損失は126億円になりました。
私からの説明は以上です。