2019年1月30日に行われた、株式会社サイバーエージェント2019年9月期第1四半期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料
スピーカー:株式会社サイバーエージェント 代表取締役社長 藤田晋 氏
1.四半期決算
藤田晋氏:本日は、お集まりいただきましてありがとうございます。みなさまもご存じかと思いますが、先ほど、当社は17年ぶりに下方修正を発表させていただきました。本日はその内容と今後の見通しを中心として、ご説明させていただきたいと思います。
まずは今期の四半期……当社は9月期決算ですので、10-12月は第1四半期ですけれども。この四半期の売上高は過去最高を更新しておりまして、「AbemaTV」もWAUギネスを更新し、ベースも上がり売上高も増えた。
そして、広告も一応過去最高を更新している。
あとゲームは、『ドラガリアロスト』という新しいタイトルに、この10-12月はプロモーションを非常に集中させたことで、広告宣伝費が大幅に増えているという結果になっております。
1.四半期決算[連結売上高]
こちらが連結売上高の推移なんですが、継続的に規模を拡大していて、売上高も成長はさせているんですけれども。
このあとを見ていただくとわかりますが、これを上回るペースでコストを増やしていったというか、投資を強めていった結果、計画に狂いが生じたというのが、今回の業績修正のおもな理由でございます。
1.四半期決算[連結営業利益]
今回の四半期の営業利益は53億円なんですけれども、中身を見ると、実は非常に大きく出遅れておりまして。
この期中にいくつか投資育成事業の株を売却したこともあって、数字がなんとか50億円ぐらいに乗っているんですけれども、当社のなかでは、「もうこのぐらい出遅れたら、第1四半期の時点で下方修正を出したほうが正しい判断だ」といたしました。
1.四半期決算[販売管理費]
こちらが販売管理費の推移なんですけれども、見ていただいてわかりますとおり、見事な右肩上がりというか……コストをかなり増やしてきておりまして。
もう(2018年)11月の段階で、「計画よりもコストが増えて、売上が伸びていない」ということで、全社的に新規の採用をストップし、宣伝広告費を中心に見直しをかけたんですけれども、10-12月では間に合わず。
(2019年)1-3月以降はこのコストの増加が落ち着き、その引き締めの効果が出てくると思いますが、現時点では非常に増えてしまっている状況です。
1.四半期決算[連結役職員数]
採用も、かなり積極的に行っておりまして。
この1年で(連結役職員数が)600人ほど増えているんですが、中途採用もかなり積極的に全社を挙げてやっていました。いったん(2018年)11月の段階ですべてストップし、サイバーエージェントグループ社内での人材の異動を中心にしていく方針に変えております。
1.四半期決算[損益計算書]
損益計算書は、こちらのとおりと(なっています)。
1.四半期決算[貸借対照表]
貸借対照表も、いつものとおりでございます。
2.2019年度 業績見通し[業績見通しの修正]①
2019年度業績(見通し)を、修正させていただきました。先ほど僕のブログで、「時系列を通じて、どういう経緯でここに至ったか」というのはご説明したんですけれども。
まず、先ほど言いました去年(2018年)の11月から、もうブレーキを踏んでいるんですけれども。
そもそもコスト構造の異変に気が付いたのは、だいたい去年の夏ぐらいでございます。①の第4四半期(7-9月)の間に気が付いたんです。それまで昨年の第1四半期・第2四半期を見てみると、けっこう予想に対してもオーバーラップで推移をしていて、やっぱりコストが増えても、それ以上に売上が伸びるので、飲み込んでいたということがあったんですが。
第3四半期は、少し下がりはしたものの、「季節要因もあるかな」という判断をしていたんですけれども。第4四半期で「足元の数字がよくない」と(考えました)。
ただ、我々のなかで、9月末に『ドラガリアロスト』のリリースを予定していました。これが社内ではかなり期待のタイトルになっていて、初月のスタートがよければ、それがすべてコストを潤してしまうので、「この時点でブレーキを踏む必要はない」と判断しました。
7-9月の最後に『ドラガリアロスト』をリリースし、初月の売上が30億円という……ものすごく期待していたほどの結果ではないんですけれども、かなりよいスタートを切ったということで、業績予想を(連結営業利益で)300億円というかたちで出したんですけれども。
その後しばらくして、非常にユーザー数は増えるんですけれども、それに対して「課金がそんなに伸びるゲームになっていない」と判断しました。11月の段階でコストを絞り込もうとしたけど、出遅れてしまったという結果になっております。
わずか1ヶ月の間で下方修正して、大変申し訳ございませんでしたけれども、100億円予測を下げて、200億円の(連結)営業利益とさせていただきました。
2.2019年度 業績見通し[業績見通しの修正]②
我々経営陣のなかでは、「『AbemaTV』以外の(既存)事業でこれまで約500億円の年間利益を出していたので、そのうち200億円を将来への投資として『AbemaTV』に使っていこう」という考え方をしていたんですけれども。
それを下げて、400億円の営業利益のうちの200億円を投資するという考え方から、あらためて再スタートを切るという考え方にいたしました。
2.2019年度 業績見通し[業績見通しの修正]③
再スタートのラインと言いましたけれども、このかたちから既存事業の400億円のところを増益させていき、先行投資の「AbemaTV」のマイナス幅を減らしていく。その両輪で、今後あらためて増収増益を目指していこうと考えております。
少し、日本語がわかりづらいかもしれないんですけれども。(収益構造の)「異変を反映した」というのは、「売上の伸び以上に、コストが伸びてしまっていた」ということです。広告費などはわりと早く削れていくんですが、人件費は一度採用してしまっているので、今後増収していくスピードを待たなければいけない部分もありますから、それに沿った業績予想に修正しました。
今回、「300億円(の連結営業利益予想を)そのままにして、出遅れはしたけど、これから達成を目指してがんばる」という選択肢も、実はなくはなかったんですが。そうすると完全に経営が後手に回ってしまって、正しい判断に支障をきたすということで、とにかく「今考えられる悪材料を、いったん出し尽くしたい」ということで、下方修正をさせていただきました。
それによって、(連結)営業利益の200億円という数字は、もちろん上回るつもりでやっていくつもりですので、今後出てくるニュースをポジティブなものにして、株式市場にも伝えていきたいと考えております。
3.インターネット広告事業[売上高(四半期)]
それでは、個別の事業の概況をご説明させていただきます。
まず、インターネット広告事業です。売上高としては、過去最高を更新した四半期になるんですけれども。顧客業界としては、なかなか今かつてのようなゲーム業界とか、金融あるいは仮想通貨のような業界とか、けっこう市場全体の数字を押し上げるような広告業種が見当たらないという時期に入っておりまして。そういう意味では、トップラインの伸びは少し弱いかなという感覚でございます。
3.インターネット広告事業[営業利益(四半期)]
営業利益です。この部門も「AbemaTV」の先行投資と言いましたけれども、ゲーム事業にしても広告事業にしても、かなりこの中での先行投資をやっていまして。
とくに、ナショナルクライアントの獲得に向けたクリエイティブ体制の強化、テクノロジー対策・強化を人員増、そして買収等によって新会社設立などをやっていますので、この部門も同じく、かなり人員が増えたという結果になっています。
3.インターネット広告事業[今後の予定]
今後としては、サイバーエージェントの広告部門の強みが、完全にテクノロジーとクリエイティブという会社になってきたと自負しています。そういったテクノロジー・数字に強い広告会社といったところで、新規の広告客層の開拓を続けていきたいと考えています。
4.ゲーム事業[売上高(四半期)]
続いて、ゲーム事業です。
『ドラガリアロスト』に、かなり我々経営陣が依存しすぎていた面もあるんですけれども。それ以上に、第1四半期は既存事業の調子があまり振るわないという結果になっていました。
第2四半期は、この(2019年)1月以降です。1月はけっこうよかったので、第2四半期以降に回復してきてくれるとは思っていますけれども、この終わった第1四半期に関しては、既存のタイトルがけっこう落ち込んだのも、出遅れた原因となっています。
4.ゲーム事業[セールスランキング]
これ(セールスランキング)は先ほど言いましたけど、年始からよくなったので、1月はよかったですし。
4.ゲーム事業[今後の予定]①
その次の次のページに出てきますけれども、我々の中では、大きな周年のものがこの2月(に1つ)、そして3月に2つあります。そういう意味では、第2四半期は回復が見込めるのではないか。2月以降はまだわからないですけれども、そのように考えています。
4.ゲーム事業[営業利益(四半期)]
1ページ飛ばしましたけれども(戻りまして)、ゲーム事業の利益面がガクッと落ち込んでいるのは、この期にかなり広告宣伝費を使ったことが原因になっています。
4.ゲーム事業[今後の予定]②
今後の予定に関しては、バンダイナムコエンターテインメントさんと一緒に配信する予定である『荒野のコトブキ飛行隊』。こちらは、今ちょうど「AbemaTV」でもアニメを配信しているタイトルでございまして、アニメとゲームを一緒に出していく取り組みをやっています。これがまた新規開拓(となっています)。
4.ゲーム事業[今後の予定]③
前回の決算資料に載っていた『ウマ娘』のゲームは、2018年冬中に出す予定だったんですけれども、「さらにクオリティアップする期間が必要だ」ということで、こちらは延期させていただきました。
これらのタイトルが今進んでいるものですので、この中から、また新たなタイトルがリリースされていきます。
5.メディア事業[売上高(四半期)][営業利益(四半期)]
続いて、メディア事業です。
「AbemaTV」の売上も好調に伸びていまして、けっこう数字が出てきたので、グラフもきれいに右へ上がってきました。
今回の下方修正によって、全社的にコストの引き締めへ動いています。「AbemaTV」の投資計画は、基本今までどおりではあるんですけれども。テレビ事業の特性として、放っておくとコストがどんどん膨張しやすい傾向があります。
この機会に、「番組がうまくヒットしなくても、なかなか止めるきっかけがない」とか、「多額のコスト・予算が膨らんでいく」といったものを、一度ひととおりきれいにしたいということで、「コストを見直して、また投資を続けていく」という考え方をしています。
ちなみに、さっき「ゲーム事業はCMをやった」と言いましたけれども、「AbemaTV」もこの第1四半期にCMをやっていますので、なんだかんだでコストが膨らんだ四半期であったということでございます。
5.メディア事業[AbemaTV]①
(「AbemaTV」の)アプリのダウンロード数は、順調にずっと右肩(上がり)で伸び続けて、3,700万ダウンロード(を突破しました)。
5.メディア事業[AbemaTV]②
WAUも順調に伸びています。
一昨年(2017年)の『72時間ホンネテレビ』で729万WAUという数字を出して(いましたが)、どうしてもこれは一過性になってしまう。大きな特番で人がいっぱいきても、なかなか「AbemaTV」に居着かないということで、昨年(2018年)の1年間は「とにかくレギュラー番組を強化していく」という方針でやってきたんですけれども、地力のベースがそこに追いついてきたと思います。
5.メディア事業[AbemaTV]③
これは、年末年始のトピックスです。
昨年(2017年12月31日)やった『朝青龍を押し出したら1,000万円』みたいな大型特番を、実はいくつか仕込んでいたんですけれども、いずれも最後に出演者に断られたりして実現には至りませんでした。それでも、着実にユーザー数を伸ばした年末年始となりました。
5.メディア事業[AbemaTV]④
毎年最優秀賞をもらっているんですけれども、「Google Play『ベスト オブ 2018』」を昨年も受賞しました。あと、「2018年10代女子が選ぶトレンドランキング」で第3位に入ったり。あと「流行ったコト」で、「AbemaTV」の恋愛リアリティショー『太陽とオオカミくんには騙されない』が5位に入ったりと、若い女子に対する支持層が着実に広がった1年になったと思います。
5.メディア事業[AbemaTV]⑤
今新しく出荷されていくテレビでは、だいたいリモコンに「AbemaTV」のボタンを搭載してもらえるような取り組みをしていますけれども、そういった取り組みを強化しています。
通信会社では、ソフトバンクの「ウルトラギガモンスター+」で割引されるものに「AbemaTV」を組み込んでもらったり、アニメレーベル(CAAnimation)を設立したりと、他社と協業する機会を非常に増やしています。電通・博報堂DYメディアパートナーズとも資本(業務)提携をしたことで、営業体制は強化されています。
ということで、これまではどちらかと言うと、「AbemaTV」単独で非常にがんばってきたと思うんですが、今後は他業種との提携を増やしていくつもりでいます。
5.メディア事業[AbemaTV]⑥
あと1つの変化として(視聴スタイル別の視聴時間についてご説明します)。
2019年4月に(2016年4月の「AbemaTV」開局から)丸3年になるんですけれども。「AbemaTV」は、インターネット上にテレビを作るという構想ですから、「リニア放送を見せたい」ということでやってきたんですが、ネットでやっていることもあって、どうしてもオンデマンド視聴に流れてしまう。
とくに学んだこととして、ニュース番組とかスポーツ中継、将棋や麻雀のようなもの、または生中継のもの。そうではないパッケージで作ると、どうしてもみんなオンデマンドで見てしまう。とくに「AbemaTV」が出すドラマは、95パーセントくらいがオンデマンドで見られていて、月曜10時に放送しても、そこはショーケースのような役割で、その後オンデマンドで見られるという傾向がありますので。
そこはユーザーの利便性を最も追求したかたちで、リニアとオンデマンドのハイブリッド性を強化していきたいと考えています。
5.メディア事業[AbemaTV]⑦
これは初めて開示していますが、オンデマンドの「Abemaビデオ」などを使える「Abemaプレミアム」の会員数です。
もともと、WAUをとにかく最重要視してきたので、有料会員になると、完全にクローズドなものになって広がりがなくなるので、「Abemaビデオ」の会員を増やすというのは、当初はぜんぜん強化していなかったんですけれども。昨年に入って、そこを伸ばすところをやり始めて、(2018年12月)現在は35万8,000人と、どんどん伸びてきています。
ちなみに「Abemaプレミアム」(という名称)で、「Netflix」や当然「Amazon」「Hulu」などを想像されると思うんですが。「見たいコンテンツがあって入る」というのは、もちろんあるんですけれども、「Abemaプレミアム」の特徴として、(有料)会員になると機能面でかなり使えるというところが支持されています。
例えば、「追っかけ再生」で、(放送の)ちょうどの時間にきていなくても見られるとか、通信環境が悪いところでも見られる「ダウンロード機能」が使えるとか。あと、リニア帯じゃなくてもコメントが見られる「見逃しコメント機能」。
これらを使いたければ、「プレミアムに入ってください」というかたちにしています。
5.メディア事業[AbemaTV]⑧
去年はちょっとレギュラーを強化したんですが、非常に世の中の話題を呼ぶ『72時間ホンネテレビ』とか『亀田興毅に勝ったら1,000万円』とか、そういう番組が弱かったので。今年は、あらためて特番を強化していくことと、やはりドラマで当てたいと(考えています)。これを当てることは、ユーザー数を増やすことに一番大きな役割を果たすということで、ドラマと話題性のある特番を強化する方針を、今はもっています。
(2019年)2月18日から始まる『1ページの恋』は、完全に若年層をターゲットで(作っています)。なかなか今は純愛もののテレビドラマが作りづらい中で、「純愛ものを見たい」という声に応えるかたちで始まるドラマでございます。
5.メディア事業[AbemaTV]⑨
今新しい番組の中に、日本財団の提供する資金の中で10億円をこの番組(『10億円会議』)向けにご用意いただいて、社会に役立つアイデアをもっている人に、必要な金額を提供する(ものがあります)。
これは、財団がいつもやっていることではあるんですけれども、テレビ番組にすることで、「そういった機会があることを、多くの人に知ってもらう」ということとかをやっています。
5.メディア事業[AbemaTV]⑩
「Abemaビデオ」も広告も、「AbemaTV」でけっこう売上面が調子良く伸びていますけれども。今後はDVD化とか、他サービスへの版権の販売などのパブリッシング事業部門を立ち上げたものとか。あと、(2019年)4月-6月のどこかからスタートできると思うんですが、公営ギャンブルを放送するチャンネルを作り、それと同時に券売事業を行うものも準備していたり。
あと、いわゆる投げ銭機能のようなものですが、今は「ギフティング機能」も開発してございます。あと2月からは、海外から「AbemaTV」が見られる。最初は主要6ヶ国でテスト的にスタートして、問題がなければ、全世界から見られるようにしていく予定でございます。
5.メディア事業[AbemaTV]⑪
先ほど言いましたとおり、他社との協業を強化していくところと、そういった放送外収入や、M&A、IPの強化を通じて、広告・課金もそうなんですが、いろんなビジネスモデルを確立することで、まったく新しいメディアのあり方を作っていきたいなと考えています。
5.メディア事業[AbemaTV]⑫
下方修正を出したときに……この言葉、あまりもう使いたくないんですけれども(笑)。
「AbemaTV」も1回引き締めますけれども、この事業はしっかりと投資すべき事業であるということで、今後も売上をぐんと伸ばし、ちゃんとふさわしいコストをかけてやっていきたいと考えています。
以上でございます。ありがとうございました。