男性が平日にベビーカーで歩いているとき、「今日はお仕事お休みですか?」と聞かれるのは珍しいことではありません。とはいえ、シチュエーションによっては、働いていても、働いていなくても、答えるのに若干の気まずさを感じさせる質問です。それは、「ちゃんと仕事しているのが普通のパパ」という世間の目があるからではないでしょうか。
昨年7月、ニューヨークタイムズ紙で、「妻の方が稼ぐことを、夫も妻も認めたがらない」(筆者訳)という記事が配信されました。
記事によれば、夫より妻が多く稼いでいる家庭において、妻が国勢調査官に収入額を申告する際、実際の収入よりも平均して1.5%少なく申告したのに対し、夫は2.9%多く申告していたことが判明。他の家庭と比較して誤差が大きかったといいます。
また、アメリカの世論調査機関の調査では、7割の男女が「良い夫であるために、経済的に家族を支えることが重要」と感じており、「男性が稼ぐこと」へのプレッシャーが強いことがうかがえます。
日本においても、同様のプレッシャーがあることは否めません。専業主夫にとって、「パートナーの方が稼いでいること」の後ろめたさは、場合によっては専業主婦よりも大きいのかもしれません。
人生の選択肢は多い方がいいけれど…
現在、専業主夫の道を選ぶ男性は少数派です。「子育てや家事を夫婦のできる方がやる」というスタイルがなかなか叶わないのは、会社や社会で男女に期待される役割が異なることや、一度キャリアから離脱するとなかなか元のポジションに戻れない職場の風土も一因となっているのではないでしょうか。
主体的に子育てを担っている男性が、「えらいねー」「協力的ね」と言われずに当たり前とされる時がやってきたなら。キャリアに空白期間ができてもきちんと復帰できる職場があれば。長い人生において男性が仕事を休み、「専業主夫」という期間を設けることへの抵抗感が軽減されるのかもしれません。
【参考】
『おとうさんといっしょ』(川端裕人著、新潮社・2008年刊)
『When Wives Earn More Than Husbands, Neither Partner Likes to Admit It』(The New York Times)
北川 和子