2025年度は物価上昇を背景に、年金生活者支援給付金の基準額が引き上げられました。
高齢者世帯の家計は、医療費や生活費の上昇によって負担が増しており、「年金だけでは暮らしが成り立たない」という声も少なくありません。
こうした状況を踏まえ、所得が一定基準以下の方を対象に年金に上乗せして支給されるのが「年金生活者支援給付金制度」です。
本記事では、その仕組みや対象要件、実際の給付額をわかりやすく解説するとともに、世代別・男女別の年金額データも紹介します。
ご自身やご家族が制度の対象になるかを確認し、今後の生活設計を考えるきっかけにしてください。
1. 「年金生活者支援給付金制度」ってどんな制度?
「年金生活者支援給付金」は、公的年金を受給している方のうち、所得が一定基準以下の世帯に対して支給される給付金制度です。
物価上昇や年金額の減少により生活が厳しい高齢者などを支援する目的で、2019年10月の消費税率引き上げに合わせて導入されました。
この制度は、公的年金に上乗せする形で支給されるため、対象となれば年金の振込額と一緒に受け取ることができます。
ただし、年金受給者であれば誰でも支給されるわけではなく、所得や世帯状況などの条件を満たす必要があります。
1.1 年金生活者支援給付金の財源
「年金生活者支援給付金」の財源は、2019年10月に引き上げられた消費税率10%のうち、社会保障財源として確保された一部によってまかなわれています。
本来、消費税率の引き上げ分は、少子高齢化が進む中での社会保障の安定財源として位置づけられており、医療・介護・子育て支援と並んで高齢者への生活支援も重要な柱とされています。
その一環として導入されたのが、この給付金制度です。
1.2 「障害年金生活者支援給付金」と「遺族年金生活者支援給付金」の支給要件
年金生活者支援給付金には、「障害年金生活者支援給付金」と「遺族年金生活者支援給付金」、そして「老齢年金生活者支援給付金」の3つがあります。
そのうち、「障害年金生活者支援給付金」と「遺族年金生活者支援給付金」の支給要件は以下のとおりです。
- 障害基礎年金もしくは遺族基礎年金の受給者
- 前年の所得(※1)が479万4000円(※2)以下
※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は、給付金の判定に用いる所得には含まれません。
※2 扶養親族等の数に応じて増額。
1.3 老齢年金生活者支援給付金の支給要件
「老齢年金生活者支援給付金」は、老齢基礎年金を受給している方のうち、一定の所得基準を満たす世帯に支給される給付金です。
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は90万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は90万6700円以下(※2)
※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下である方には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
なお、年金額が少ない理由として「加入期間が短い」「現役時代の収入が少ない」などが考えられますが、このような方々が最低限の生活を維持できるようにするため、「年金生活者支援給付金」によって補填する仕組みとなっています。
給付金は年金に上乗せして支給されるため、対象となれば通常の年金支給日(偶数月の15日)にまとめて振り込まれます。