近年、教育に関連する事業の倒産が増えています。
少子高齢化のあおりを受けてか、学習塾の規模は縮小傾向にあります。しかし、不思議なことに、大手学習塾の業績は好調です。これはいったいどうしてなのでしょうか?
弱肉強食化する塾業界
先日、帝国データバンクが2018年の教育関連業者の倒産動向調査を発表しました。このデータによると、2018年の倒産件数は91件を記録しました。これまで年間で最も倒産数が多かったのは、リーマンショック直後の2009年(93件)であり、2017年は84件を記録しましたが、2018年は前年を抜いて、これまでのワースト2位となりました。
その一方で、負債金額は27億6300万円と比較的少ないものでした。この数字は2015年の31億2600万円を下回り、過去10年では最少の負債額となっています。要するに、倒産件数は非常に多かったものの、1件あたりの負債額は平均すると小さかったということになります。
これらの事実から考えてみると、多くの金額を扱う大規模業者の経営は安定していると見ることができます。反対に、小規模業者は苦戦し、倒産が相次いでいると考えられます。
塾に対する保護者の声
一方で、少子化のためか、保護者も子ども1人あたりにかける金額が増えているようです。ネットやSNS上で、塾に通わせる保護者(と見られる人々)の声を見てみましょう。
「私立幼稚園の月謝並みに塾代が。その他に冬期講習やら追加講座とか…」
「中学受験にどのくらいお金かけたのって聞かれたけど、改めて思い出しただけで頭がクラクラする。これでもし落ちたりしたら立ち直れないかも」
また、塾選びについても、次のような声があります。
「合う塾が見つかれば子供も居場所が増えて喜びますし勉強だけでなく色々な事を学べるので家はいいことだらけでした。お金出す価値はあるかもとは私は思いました」
「息子の場合は、とにかく『寝ないような授業形態』『勉強が嫌にならない』『安い』って感じで選んだよ」
「塾業界でも過度に安い授業料の塾は疑った方がいい。低賃金では優秀な人材は来ないし講師の定着率も低い」
いろんな基準で塾を選ぶ方が見られますが、いずれにしても、「自分の子どもに合った塾」を考えて選ぶことが大事でしょう。
生徒の側の声はどうか?
一方、塾に対する生徒(と見られる人々)の声も見てみましょう。
「お母さんの少ない収入から私のために高い塾代出してくれてんのに私はなんで追試になんかなってんだろ 申し訳ないって思ってきたわ そう思って頑張ってるけど……」
「塾行きたくないー〇〇〇(名前)には集団は合わない笑 だけど個別は高いしもう無理」
「正直、塾や予備校に何百万も払って通うくらいなら勉強法を学んでオシャレなカフェとかで勉強した方が成績上がると思うな」
「塾に行きたいが為にバイトして塾代稼いでた私」
両親の収入だけでは塾に行くことができず、アルバイトでお金を貯めていた苦学生もいるようですね……。
スマートフォンやタブレットで塾のあり方に変化
最近では、教材などのアプリや、映像授業サービスなども学習の補助としてよく見られるようになりました。イー・ラーニング研究所が取った「子どもの生活に関するアンケート」によると、約6割の子どもがスマートフォンやタブレットを使って学習をしているといいます。
こうしたネットを使った勉強に対するネット上の意見をまとめてみました。
「塾嫌い派の人間だからすごい嬉しい、何より安い」
「映像授業だからサボろうと思えばサボれちゃうから自制心…頑張ろう」
「スタディサプリのような試みはめっちゃいいけどやはり予備校に行ってる受験生のように横の繋がりとか学習時間を確保する強制力がないのがネック」
「ネット塾やアプリは安いけど本人にやる気がないとダメ」
これらは、いつでも気軽に学びたい分野を学ぶことができるので効率が良いですし、無料~月額1000円前後で利用できることを思えば、学習塾の料金と比べると非常に安価です。一方で、勉強内容を管理できなかったり、本人にやる気がないとモチベーションが続きにくかったりという難点もあります。
効率化すれば何でもいいわけでもない
ITの発達は効率化を推進してくれますが、安いサービスだと画一的な教育になってしまうことが多くあります。また、多くの場合、人と人との関わりも希薄になってしまいます。これらがネットサービスやアプリの課題ともいえます。
生徒の進度に合わせてカリキュラムを組んだり、生徒に合わせた指導をしたりできるのが、小規模業者の長所でした。今でもそうした教育が必要な生徒もたくさんいます。そのような要望に応えていく体制を残しつつ、効率化を進めることが、今後の教育の課題なのかもしれません。
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