日本の医療保険制度は、年齢や職業によってさまざまな種類があります。原則として75歳以上が対象となる「後期高齢者医療制度」もその一つです。しかし、心身に何らかの障がいを抱え、日常生活に困難を伴う方々の負担を和らげるために、65歳からでも加入できる特例措置が設けられています。今回は、この制度の仕組みと、なぜ65歳から加入するメリットがあるのか、具体的な例を交えて解説していきます。
※本記事では、この「一定の障がいがある方のための特例措置」による加入を、便宜上「障害認定による加入」または「障害認定」と表記します。
1. 65歳から加入できる後期高齢者医療制度「障害認定」
日本の医療保険制度には、国民健康保険、協会けんぽ、組合健保、共済組合など、さまざまな種類があります。
それぞれの加入者の平均年齢も違います。
加入者(令和5年3月末)
- 市町村国民健康保険:2413万人
- 協会けんぽ:3944万人
- 組合健保:2820万人
- 共済組合:982万人
- 後期高齢者医療制度:1913万人
平均年齢(令和4年9月末)
- 市町村国民健康保険:54.2歳
- 協会けんぽ:38.9歳
- 組合健保:35.9歳
- 共済組合:33.1歳
- 後期高齢者医療制度:82.8歳
65~74歳の割合(令和4年度)
- 市町村国民健康保険:44.6%
- 協会けんぽ:8.2%
- 組合健保:3.5%
- 共済組合:2.4%
- 後期高齢者医療制度:1.4%
後期高齢者医療制度は原則75歳以上が対象ですが、実は65歳から加入できることもあります。それが「一定の障がいがある方のための特例措置」としてある障害認定で加入するケースです。
1.1 後期高齢者医療の障害認定【東京都の例】
後期高齢者医療制度への障害認定による加入は、各都道府県の広域連合が運営しているため、条件が異なります。例えば東京都の場合ですが、東京都後期高齢者医療広域連合では「対象となる障害の状態」を以下の通りとしています。
- 障害年金1級または2級
- 身体障害者手帳1級、2級、3級、または4級の一部
- 精神障害者保健福祉手帳1級または2級
- 東京都愛の手帳(療育手帳)1度または2度
特に、身体障害者手帳の「4級の一部」が対象となっている点は、他の広域連合と比較して対象が広いといえます。これらに該当する65歳から74歳の方は、この制度に加入するために住んでいる市区町村の窓口で申請し、後期高齢者医療広域連合から「一定の障がいがある」と認定される必要があります。
障害認定で後期高齢者医療制度に加入することは任意なので、75歳になるまではいつでも撤回して、元の健康保険に戻ることも可能です。ただし、一度認定を受けて加入すると、元の健康保険の脱退手続きが必要になります。