4. 【仮徴収と本徴収】2つのタイミングで保険料は計算される

公的年金からは、税金や社会保険料(健康保険料・介護保険料など)が天引き(特別徴収)されます。

「天引き額は一年間ずっと同じ」と思いがちですが、実は年度の途中で金額が変わるのが一般的です。

その理由は、年金から天引きされる住民税と社会保険料の計算が、二段階(仮徴収・本徴収)のしくみになっているためです。

4.1 ステップ1:年度前半は「仮徴収」

年金から天引きされる住民税や国民健康保険料などの社会保険料は、前年(2024年)の所得をもとに計算されます。しかし、その正式な年額が確定するのは毎年6月~7月頃です。

そのため、金額が確定していない年度前半(4月・6月・8月支給分の年金)では、まず前年度2月と同額が暫定的に天引きされます。これを「仮徴収」と呼びます。

4.2 ステップ2:年度後半は「本徴収」

前年の所得が確定し、その年度に支払うべき社会保険料の正式な年額が決まると、徴収方法が切り替わります。

まず、確定した年額から、仮徴収として支払った合計額を差し引きます。そして、残った金額を年度後半の支給回数で割って天引きします。これが「本徴収」です。

多くの場合、本徴収は10月支給分からですが、自治体によっては8月から始まることもあります。

4.3 前年の所得が大きく変わった人は要注意!

前年の所得が増加すると、秋以降の年金の手取り額が想定外に減ってしまうことがあるため注意が必要です。

例えば、以下のように前年の課税所得が増えるケースがこれにあたります。

  • 不動産の売却や退職金の受け取りで、一時的に大きな所得があった
  • 年金以外にパート収入や不動産収入などがあった
  • 配偶者控除などの各種控除の適用がなくなり、課税対象額が増えた

このような理由で前年の所得が増えた場合、年度後半の「本徴収額」が、前半の「仮徴収額」に比べて大幅に高くなることがあります。

その結果、秋以降に天引きされる金額が増え、年金の手取りが大幅に減ってしまう可能性もあるのです。ご自身の状況をあらかじめ確認しておくと安心です。

5. 年金以外にも頼れる資金形成も

今回は年金制度の仕組みのおさらいから、現在年金を受給している60歳から90歳以上までの高齢者が毎月いくらぐらい年金を受け取っているかについて詳しく見てきました。

最近は、年金だけでは老後が不安だからNISAやiDeCoで資産運用して老後に備えるという話をテレビやネットでよく見かける方も多いと思います。実際、今回の記事で見てきたとおり今の高齢者が受け取っている年金の平均受給額はひと月20万円にも満たない金額です。

老後はそこまで生活費はかからないと言っても、社会保険料の負担が増えていたり物価高で生活コストが上がっている今の状況では月20万円にも満たない年金収入だけで老後の生活を支えるのは少々心もとないと感じる方も現役世代の方の中にはいらっしゃるでしょう。

そのため、老後への不安が大きいという方は今のうちから年金以外に頼れる老後資金の準備を始めましょう。NISAやiDeCoは毎月少額から積立投資ができますし、貯蓄型の保険商品の中にはあらかじめ将来受け取れる金額が確定しているものもあります。ご自身に合った金融商品で老後への備えを始めましょう。

参考資料

鶴田 綾