9月は食品をはじめとした値上げが続き、家計への負担が増えているご家庭も多いことと思います。そんな中、来月10月15日は今年5回目の年金支給日であり、残る支給日は10月と12月の2回となりました。家計が気になる今、年金の手取り額をしっかり把握しておくことは大切です。
日本の公的年金は「2階建て構造」と表現され、1階部分の「国民年金」と2階部分の「厚生年金」から成り立っています。
国民年金は国内に住む20歳以上60歳未満の全員が加入対象で、保険料は一律です。一方、厚生年金は会社員や公務員が国民年金に上乗せして加入し、収入に応じた保険料を納めます。今回は、そんな年金の手取り額が、10月に変わる人がいるのはなぜなのか、その仕組みについて解説します。
1. 【秋の年金ニュース】10月分から年金の手取り額が変わる?
公的年金からは、税金や社会保険料(健康保険料・介護保険料など)が天引き(特別徴収)されます。
「天引き額は一年間ずっと同じ」と思いがちですが、実は年度の途中で金額が変わるのが一般的です。
その理由は、年金から天引きされる住民税と社会保険料の計算が、二段階(仮徴収・本徴収)のしくみになっているためです。
1.1 仮徴収
年金から天引きされる住民税や国民健康保険料などの社会保険料は、前年の所得をもとに計算されます。しかし、その正式な年額が確定するのは毎年6月~7月頃です。
そのため、金額が確定していない年度前半(4月・6月・8月支給分の年金)では、まず前年度2月と同額が暫定的に天引きされます。これを「仮徴収」と呼びます。
1.2 本徴収
前年の所得が確定し、その年度に支払うべき社会保険料の正式な年額が決まると、徴収方法が切り替わります。
まず、確定した年額から、仮徴収として支払った合計額を差し引きます。そして、残った金額を年度後半の支給回数で割って天引きします。これが「本徴収」です。
多くの場合、本徴収は10月支給分からですが、自治体によっては8月から始まることもあります。
前年の所得が増加すると、秋以降の年金の手取り額が想定外に減ってしまうことがあるため注意が必要です。
例えば、以下のように前年の課税所得が増えるケースがこれにあたります。
- 不動産の売却や退職金の受け取りで、一時的に大きな所得があった
- 年金以外にパート収入や不動産収入などがあった
- 配偶者控除などの各種控除の適用がなくなり、課税対象額が増えた
このような理由で前年の所得が増えた場合、年度後半の「本徴収額」が、前半の「仮徴収額」に比べて大幅に高くなることがあります。
その結果、秋以降に天引きされる金額が増え、年金の手取りが大幅に減ってしまう可能性もあるのです。ご自身の状況をあらかじめ確認しておくと安心です。