この記事の3つのポイント
- 編集部では2015年8月20日から25日にかけての株式市場の大幅下落を“第2次中国ショック”と呼んでいます。
- 中国ショックとはいいながらも、投資家はこれまで市場をけん引してきたバリュエーションが割高となっていた内需株を売却し、バリュエーションが割安に見える中国関連株やコモディティ株などを嗜好しました。
- バリュエーションを見ながらセクターローテーションがはじまっていると考えるのが自然です。
第2次中国ショックで上げた銘柄・下げた銘柄
2015年8月20日から25日にかけて起きた株式市場の大幅下落を“第2次中国ショック”と呼びたいと思います。その際、一時的に株式市場全体は大きく下落したものの、その後急反発をしたため、ほっと胸を撫でおろしている個人投資家も多いのではないでしょうか。
今回の下落は中国を震源地とした、世界同時株安という様相でした。したがって、日本株においても中国関連株が大きく下落することで一段落したとお考えの読者の方も多いのではないでしょうか。
筆者自身もそう思い、今回はTOPIXで時価総額トップ50の銘柄に関して、
- 第2次中国ショック前の2015年8月20日から直近底値である25日までの株価下落率
- 8月25日から28日までの株価上昇率
- 8月20日と28日の株価騰落率
以上、3項目について確認してみました。いずれも終値ベースの比較です。
その結果を示したのが、図表1です。
図表1:“第2次中国ショック”で上げた銘柄・下げた銘柄(TOPIX時価総額トップ50)
8月20日⇒25日 | 8月25日⇒28日 | 8月20日⇒28日 | ||
---|---|---|---|---|
下落率 | 上昇率 | 騰落率 | ||
1 | 村田製作所 : 6981(TSE) | -9.9% | 14.8% | 3.4% |
2 | ファナック : 6954(TSE) | -6.5% | 8.6% | 1.6% |
3 | 伊藤忠商事 : 8001(TSE) | -10.4% | 12.2% | 0.5% |
4 | 三井物産 : 8031(TSE) | -8.8% | 9.9% | 0.2% |
5 | 日本電産 : 6594(TSE) | -10.5% | 10.4% | -1.2% |
6 | 三菱商事 : 8058(TSE) | -10.5% | 10.2% | -1.4% |
7 | 富士フイルムホールディングス : 4901(TSE) | -9.7% | 9.2% | -1.4% |
8 | 楽天 : 4755(TSE) | -9.7% | 8.7% | -1.8% |
9 | ソニー : 6758(TSE) | -12.2% | 11.8% | -1.9% |
10 | 日産自動車 : 7201(TSE) | -10.0% | 8.9% | -1.9% |
28 | TOPIX | -11.8% | 8.2% | -4.6% |
41 | 日立製作所 : 6501(TSE) | -12.0% | 6.7% | -6.1% |
42 | 野村ホールディングス : 8604(TSE) | -13.4% | 8.3% | -6.3% |
43 | 富士重工業 : 7270(TSE) | -17.2% | 12.9% | -6.4% |
44 | NTTドコモ : 9437(TSE) | -10.8% | 4.6% | -6.7% |
45 | ソフトバンクグループ : 9984(TSE) | -9.8% | 3.4% | -6.8% |
46 | ヤフー : 4689(TSE) | -12.2% | 5.9% | -7.1% |
47 | 東日本旅客鉄道 : 9020(TSE) | -13.0% | 6.7% | -7.2% |
48 | 武田薬品工業 : 4502(TSE) | -12.3% | 4.9% | -8.0% |
49 | 三菱地所 : 8802(TSE) | -13.1% | 5.1% | -8.6% |
50 | 東海旅客鉄道 : 9022(TSE) | -17.0% | 9.1% | -9.5% |
出所:SPEEDAをもとに筆者作成
投資家の売買動向に意外な傾向
結果をまず簡単に見ていくと、以下のような傾向が見て取れます。
- 村田製作所、ファナック、商社株など、中国もしくはコモディティ関連株が、意外にも第2次中国ショック前よりも上昇
- 第2次中国ショックに売り込まれ、戻し切れていないのが、鉄道株や不動産株、情報通信株などの内需関連銘柄
- 一時は急激な円高に振れたのち円安に戻したものの、株価の反発が弱い自動車株
まとめ
実は、中国ショックとはいいながらも、投資家はこれまで市場をけん引してきたバリュエーションが割高となっていた内需株を売却し、バリュエーションが割安に見える中国関連株やコモディティ株などを嗜好したとも考えられます。
仮にこのトレンドが続くのであれば、これまでの株式市場の相場の潮目が変わったことになります。引き続き相場の転換点が近づいているという意識で注視していきたいと思います。
注:本記事は個人投資家向け経済金融メディアLongine(ロンジン)の記事をダイジェスト版として投信1編集部が編集し直したものです。
LIMO編集部