統計に見る世帯の貯蓄額と負債額の平均はいくらか
総務省の統計で老後に向けた資産形成を考える
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皆さんの中には、他の世帯がどのくらいの貯蓄をしているのか気になっている、という人も多いのではないでしょうか。老後資金を準備しているような世帯では、他の家庭を参考にしたいという方もいるのではないでしょうか。その際に目安となるのが世帯当たりの貯蓄額の平均ではないでしょうか。ここでは、2人以上の世帯における貯蓄額と負債額の統計データについてみていきながら、今後の運用計画などに参考にしていただければと思います。
統計における貯蓄額の平均とは
平成29年(2017年)の総務省による「家計調査報告[貯蓄・負債編]平成29年(2017年)平均結果の概要(二人以上の世帯)」によると、次のような結果となっています。
- 2人以上の世帯における貯蓄額(貯蓄現在高)の平均は1812万円
- 2人以上の世帯における貯蓄額の中央値は1074万円
- 年間収入は617万円
- 貯蓄の年収比は293.7%
※貯蓄額の中央値である1074万円には貯蓄額がゼロの世帯を除いたベース。貯蓄額がゼロの世帯を含めると1016万円。
平均値と中央値とは
世帯の貯蓄額の平均をみると、「自分の家庭はそんなに貯金をしていない!」と焦ってしまう人もいるでしょう。
これは、世帯の平均の貯蓄額は、富裕層など多くの貯蓄を持つ人も含めた値の平均値となっているためです。
一般の人の貯蓄額のイメージを持つためには、「平均(値)」ではなく、「中央値」が参考になります。
ちなみに、世帯の貯蓄額の中央値をみてみると、先ほど見たように1000万円強という値が出ており、先ほどの平均値よりは小さな値となりました。
世帯の貯蓄額は過去からどう推移してきたのか
貯蓄額の過去10年の推移を見ていると、少しずつではありますが、増加傾向となっています。2017年の平均は先ほど1812万円とふれましたが、2009年には1638万円となっていました。平均でこの10年ほどで100万円以上増えたことになります。
また、中央値で見ると、2009年に988万円でありましたが、2017年には1074万円となっています。
統計における負債額の平均とは
先ほどと同じ調査をもとに負債について見てみましょう。
まず、すべての世帯での負債現在高の平均は517万円となっています。
ところが、皆さんはすぐにお気づきだと思いますが、この中には負債を抱えていない世帯も含まれてしまいます。そこで、「負債保有世帯」についての平均などを見ると以下の通りです。
- 2人以上の世帯の負債額(負債現在高)の平均額は1379万円
- 2人以上の世帯の負債額の中央値は1080万円
- 負債保有世帯の比率は37.5%
世帯の負債額は過去からどう推移してきたのか
先ほど2017年の負債額は517万円、また負債保有世帯の負債額は1379万円とふれましたが、この平均値は過去どう推移してきたのでしょうか。
これは、いずれも増加傾向となっています。全世帯の負債額は過去10年で見れば、2011年の462万円から517万円に増加しています。また、負債保有生体の負債額についてみると、2009年の1184年から増加傾向です。
一方で、負債保有世帯の割合は減少傾向です。
2008年には41.1%あった水準が現在は37.5%となっております。
貯蓄額と負債額からみえてくる日本の世帯
貯蓄には不動産は含まれていないため、「持ち家派」の家計のバランスシート全体を考える際には不動産を考慮しないといけません。
老後資金を考える際にも、定年退職前に住宅ローンを完済し持ち家がある―いわゆる「持ち家派」で家賃が発生しないケースと、一方、「賃貸派」で家賃が支出としてあるケースでは老後資金の考え方も変わってくるでしょう。
したがって、貯蓄額と負債額だけを見るだけでは必ずしも全体像は見えてはきませんが、他の世帯がどの程度の貯蓄と負債を抱えているのかを知ることができたのではないでしょうか。今後の資産形成の参考にしていただければ幸いです。
参考にした資料
総務省「家計調査報告[貯蓄・負債編]平成29年(2017年)平均結果の概要(二人以上の世帯)」
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