5. 将来の年金受給額に影響大!「106万円の壁ってなに?」
2025年6月13日に成立した「年金制度改正法」には、アルバイト・パートなどの働き方と関わりが深い、いわゆる「年収106万円の壁」を撤廃する改正が含まれています。
5.1 「年収106万円の壁」とは?
「106万円の壁」とは、パート・アルバイトなどの短時間労働者が年収が106万円以上になると、社会保険(健康保険・厚生年金)の扶養から外れ、自分自身で保険料を支払う義務が発生する目安です。
保険料負担により手取りが減ることから、収入が基準額を超えないよう労働時間をコントロールする「働き控え」が生じる原因の一つとされてきました。
また、社会保険の適用対象となる企業規模はこれまで段階的に拡大されてきており、2024年10月からは「51人以上」の事業所となっています。
今回の改正では「3年以内の賃金要件の撤廃」と「10年かけて企業規模要件の段階的撤廃」がおこなわれることが決まりました。
5.2 「社会保険の加入対象の拡大」短期労働者の加入要件の見直し
2025年7月現在、パートタイムなどで働く短時間労働者が社会保険に加入する要件は、以下の5つをすべて満たす必要があります。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 2か月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない
- 所定内賃金が月額8万8000円以上(賃金要件)
- 従業員数51人以上の企業で働いている(企業規模要件)
今回の改正により、このうち4の「賃金要件」と5の「企業規模要件」が撤廃されます。
いわゆる「106万円の壁」は、全国の最低賃金の引き上げ具合を見極めながら、3年以内に廃止へ。社会保険に加入する企業の規模は、10年かけて段階的に拡大されます。
6. まとめにかえて
今回は厚生年金の受給額の決まり方や、受給額の多い都道府県、少ない都道府県、また国民年金の都道府県別の平均年金月額などを詳しく見てきました。
厚生年金の受給額が多い都道府県ベスト5では、奈良県を除いて東京都を含む関東の都市部がランキング上位を占めています。これは、厚生年金の受給額は現役時代の収入や年金に加入していた期間が大きく影響することが原因としてあげられます。一般的に現役時代に収入が高かった方は将来受け取る年金額も高い傾向にあります。
そのため地方に比べ給与水準も高い傾向にある東京などの関東都市部は、年金額も他の地方に比べて受給額の水準が高くなっています。一方、国民年金については収入など関係なく納める年金保険料は皆一律です。また、将来の年金額は年金保険料を納めた期間に応じて決まるため都道府県別で見ても差異はあまり見受けられませんでした。
老後の生活にしっかり備えたいという方は、本記事で取り上げた都道府県別の平均年金受給額はあくまで参考程度にとどめて、ねんきんネットやねんきん定期便でご自身の将来の年金見込額を確認して、老後資金準備にとりかかりましょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構 年金用語集「は行 報酬比例部分」
- 厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ」に関するQ&A(キャリアアップ助成金関係)
鶴田 綾