5. 「加給年金」ご存じですか?年の差夫婦は要確認
公的年金には、本来の老齢給付のほか「現役時代から知っておきたいしくみ」もたくさんあります。「加給年金」もそのひとつです。
「加給年金」とは、厚生年金保険の加入期間が20年以上ある人が「65歳になった時点で、一定条件を満たす扶養家族がいる場合」に加算される年金です。
「年金の家族手当」などとも呼ばれる制度で、本人の厚生年金に「加給年金」が加算されます。加給年金の対象となる世帯は以下の通りです。
- 厚生年金加入期間20年以上の人が、年下の配偶者や18歳未満の子を扶養している世帯
令和7年4月からの加給年金額(および年齢制限)
配偶者:23万9300円
※65歳未満であること(大正15年4月1日以前に生まれた配偶者には年齢制限はありません)
1人目・2人目の子:各23万9300円
※18歳到達年度の末日までの間の子、または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子
3人目以降の子:各7万9800円
※18歳到達年度の末日までの間の子、または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子
配偶者が65歳になるまで加算され、歳の差が大きいほど受給期間が長くなるしくみです。
厚生年金が全額停止の場合は加給年金も停止となる点には注意が必要です。また、配偶者が65歳になった時点で、加給年金は終了し、振替加算という制度に移行します。
6. 将来のために、今からできる備えを
2025年度の公的年金額は増額され、老齢基礎年金は月額6万9308円、厚生年金(夫婦2人分モデルケース)は月額23万2784円となります。厚生年金は現役時代の収入や加入期間によって受給額が大きく変わるため、男女間で差が生じる傾向にありますが、共働き世帯の増加により今後は変化すると見込まれます。また、配偶者や子がいる場合に加算される「加給年金」のような制度も活用できます。公的年金は老後の大切な収入源ですが、それだけでは十分でない場合もあります。将来の生活設計を見据え、ご自身の年金見込額を「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で確認し、早めに準備を始めることが大切です。
参考資料
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「老齢年金請求書の事前送付」
- 日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」
村岸 理美