1. 在職老齢年金とは
まずは、在職老齢年金とはどのような制度かを解説していきます。
1.1 制度の概要
在職老齢年金制度とは、60歳以上の方が、社会保険(厚生年金)に加入する働き方をしながら老齢厚生年金を受け取る場合に、収入と年金額に応じて、年金の一部または全額が支給停止される仕組みのことです。
在職老齢年金制度により支給が調整されるのは老齢厚生年金のみであり、老齢基礎年金は調整の対象外です。 収入金額がいくら大きくても、老齢基礎年金が減額されることはありません。
また、自営業やフリーランスの方は、社会保険に加入をしていないため、収入が多くても年金額が調整されることはありません。対象外です。
1.2 調整の仕組み
在職老齢年金制度によって年金額が調整されるかどうかは、以下の2つの合計額により決定します。
- 基本月額:老齢厚生年金の年額を12で割った額
- 総報酬月額相当額:{標準報酬月額(およそ毎月の給与額)+ 過去1年間の賞与額}を12で割った額
上記の合計額が、支給停止の基準となる金額(2024年度は50万円)を超えた場合に、年金額が調整されます。
1.3 調整金額の計算
現行の法律による、具体的な調整金額の計算方法は以下の通りです。(令和6年度価格)
・(基本月額 + 総報酬月額相当額) の合計額が50万円以下の場合
→調整なし:年金は全額支給されます。
・(基本月額 + 総報酬月額相当額)の合計額が50万円を超える場合
→年金支給額の調整:超えた額の半額(1/2)が、毎月の年金額から支給停止されます。
ここまでは、現行の在職老齢年金制度について説明をしてきました。次章では、2025年6月の国会にて成立した改正法案による在職老齢年金制度の変更点について詳しく解説いたします。