2018年中ごろから一気に風向きが変わった半導体設備投資。サムスンや東芝といったメモリー大手各社が新規投資を抑制するなど、18年上期の好調から一転、下期は調整局面となった。
そのなかでも、韓国SKハイニックスだけは強気の投資戦略を維持していた。DRAMならびにNANDフラッシュで設備導入時期の前倒しを要請、シェアや技術格差を埋める好機と捉え、積極的な動きを見せていた。
しかし12月に入り、その姿勢が一気に崩れた。韓国・清州にあるNAND新工場「M15」の設備導入を中断、中国・無錫にあるDRAM新棟「C2F」の導入規模に関しても、見直しがかかったもようだ。
想定を上回るペースで価格下落
背景にあるのが、想定を上回るNAND価格の下落だ。NANDは、2D-NANDから3Dへのシフトにより供給能力が高まったほか、歩留まりも改善したことから、需給環境が軟化。これにより、NAND価格は18年年初以降、下落を続けてきた。
120GB-TLC(トリプルレベルセル)ベースのコンシューマー用SSDは年初段階で33ドルを超える価格水準にあったが、11月に入り18ドルを割り込む展開となっており、おおよそ半値にまで落ち込んでいる。特に秋口以降は価格下落のペースが強まっており、NAND各社の収益を圧迫するようになってきた。
SKハイニックスは、DRAMと異なりNANDに関しては確固たるポジションを築けておらず、シェアも低い。技術的にもサムスン、東芝が一括エッチングの64層クラスを量産化する一方、SKハイニックスが手がける72層品はアレイスタックと呼ばれる、一括エッチングではないプロセスを採用しており、他社に比べてコスト競争力が高くないと言われている。
ゆえに、価格下落など不況期には真っ先に収益低下、赤字に陥りやすいと見られており、足元の状況を考えても、同業他社に比べて収益性が低下していることが容易に想像できる。
年末出荷分から一部納期調整
こうした状況下、SKハイニックスとしても「耐えきれなかった」というのが最も適切な表現だと思うが、ついに積極投資のスタンスを見直す決断をした。
設備導入の中断を決めたM15ラインは、3D-NANDの主力工場として総額20兆ウォン(工場建屋2兆ウォン、製造装置18兆ウォン)の設備投資が予定されており、18年10月には竣工式を開催。文在寅大統領をはじめ、韓国政財界から450人余りが出席するなど大きな関心を集めていた。
M15は利川の「M14」からの移設分、および新規導入を組み合わせてラインを構築。19年第2四半期(4~6月期)から72/96層品の量産を開始する。今回、18年末の装置出荷分から一部納期調整がかかったもようで、年明け以降も非常に流動的な状況となっている。
DRAM投資も縮小傾向
さらに、DRAM投資についても一部見直しが入り始めた。中国・無錫工場の新棟「C2F」でも年末から設備導入を開始する予定であったが、この導入規模を当初予定から見直している。
半導体製造装置メーカーにとって、SKハイニックスはメモリー投資縮小の状況下において頼みの綱ともいえる存在だっただけに、今回の投資方針変更は大きな打撃となっている。足元ではインテルの投資拡大などが下支えの要因となっているが、メモリーメーカーのほとんどが新規投資を凍結させているなか、少なくとも19年上期は苦しい事業環境が続くことになりそうだ。
電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳