6. ~年金コラム~ 受給スタート年齢は「60歳~75歳」に繰上げ・繰下げが可能!

老齢年金の受給開始は「原則65歳」からですが、60歳~64歳で早く受け取り始める「繰上げ受給」と、66歳~75歳に遅らせて受け取る「繰下げ受給」を選ぶこともできます。

6.1 繰上げ受給の減額イメージ

繰上げ受給の増額イメージ

出所:日本年金機構「年金の繰上げ受給」をもとにLIMO編集部作成

繰上げ受給の減額率は、以下の計算式で表すことができます。繰上げタイミングの下限となる「60歳0か月」で受給した場合、減額率は24.0%です。

減額率(最大24%)= 0.4%(※1)× 繰上げ請求月から65歳に達する日(※2)の前月までの月数(※3)

※1 昭和37年4月1日以前生まれの方の減額率は、0.5%(最大30%)となります。
※2 年齢の計算は「年齢計算に関する法律」に基づいて行われ、65歳に達した日は、65歳の誕生日の前日になります。
(例)4月1日生まれの方が65歳に達した日は、誕生日の前日の3月31日となります。
※3 特別支給の老齢厚生年金を受給できる方の老齢厚生年金の減額率は、特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢に達する日の前月までの月数で計算します。

6.2 繰下げ受給の増額イメージ

繰下げ受給の増額イメージ

出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」をもとにLIMO編集部作成

繰下げ受給の増額率は、以下の計算式で表すことができます。繰下げタイミングの上限となる「75歳0か月」で受給した場合、増額率は84.0%です。

増額率(最大84%(※1)) = 0.7% × 65歳に達した月(※2)から繰下げ申出月の前月までの月数(※3)

※1 昭和27年4月1日以前生まれの方(または平成29年3月31日以前に老齢基礎(厚生)年金を受け取る権利が発生している方)は、繰下げの上限年齢が70歳(権利が発生してから5年後)までとなるため、増額率は最大で42%。
※2 年齢の計算は「年齢計算に関する法律」に基づいて行われ、65歳に達した日は、65歳の誕生日の前日となる。
(例)4月1日生まれの方が65歳に達した日は、誕生日の前日の3月31日。
※3 65歳以後に年金を受け取る権利が発生した場合は、年金を受け取る権利が発生した月から繰下げ申出月の前月までの月数で計算される。

繰上げ受給では、前倒しした月数に応じた減額率が適用されますが、早く受け取れます。

反対に、繰下げ受給では後ろ倒しした月数に応じた増額率が適用されますが、受け取り開始までの生活資金の確保が必要となります。

なお、一度確定した「減額率・増額率」は生涯続きます。繰上げ受給の場合「65歳になったから本来の年金額に戻る」ということはありません。

繰上げ受給・65歳からの受給・繰下げ受給、どれがお得になるかは、働き方や健康状態、他の収入源などにより個人差があります。

損益分岐点を理解しながら、資産状況やライフプランに合わせて慎重に検討していきましょう。

7. まとめにかえて

65歳以上の無職夫婦世帯の平均的な家計を見ると、年金収入だけでは生活費を賄うのが難しい現状が浮き彫りになっています。

これまでの貯蓄状況や退職金事情などにより、老後資金のゆとりには大きな差が生じているのが実情です。

しかし、年金の基本的な仕組みを理解し、年金受給額を増やす方法を知っておくことで、将来に向けた選択肢が広がり、老後への漠然とした不安を和らげることにも繋がっていくでしょう。

公的年金だけで豊かな老後生活を送ることが、この先さらに難しくなる可能性は高いと言えます。だからこそ、現役時代からの計画的な資産形成が、今まで以上に大切となるでしょう。

参考資料

長井 祐人