特に、毎日の食卓に欠かせないお米や野菜といった生鮮食品の価格は、じわじわと上がり続けています。こうした日々の変化の背景には、企業同士の取引価格、いわゆる「企業物価」の動きがあります。

2025年5月、日本銀行が公表した企業物価指数は前年同月比で3.2%の上昇となりました。原油価格の下落で伸び幅はやや落ち着いたものの、農林水産物の価格が42.8%も上昇するなど、生活に密接な部分への影響は大きく続いています。

今回は、この企業物価指数の動きが私たちの家計や将来の資産形成にどう関わってくるのかを、解説していきます。

1. 【3万円給付金】物価高の影響を大きく受ける一定水準の所得の世帯に向けて進行中

2024年12月に可決・成立した2024年度補正予算には、「特に物価高の影響を受けやすい「住民税非課税世帯」を対象とする給付金が盛り込まれています。

今回の支給額の基本は「1世帯あたり3万円」です。申請受付からや支給までの一連の給付作業は各市区町村が担当しています。

1.1 子ども1人につき2万円の加算

給付金の支給対象世帯のうち「子育て世帯」を対象に、18歳以下の子ども1人につき2万円が加算されます。

「夫婦+対象となる子ども2人」の世帯であれば、支給額は合計7万円です。

【ご注意】給付金の申請締め切り日や申請方法、細かい支給要件などは市区町村により異なります。お住まいの自治体の最新情報は、ホームページや広報誌などでご確認ください。LIMOでは個別のお問い合わせへのお答えはいたしかねます。

2. ある一定の所得の世帯とは?「住民税非課税世帯」について確認しよう

住民税の仕組みにも触れながら、住民税非課税世帯となる要件などを整理していきましょう。

2.1 住民税の基本をおさらい

住民税は、住んでいる都道府県や市区町村に支払う地方税で、その地域の公共サービスやインフラ整備の財源となっています。

個人住民税は、均等割(※1)と所得割(※2)の合計です。

※1 所得に関係なく一律課税となる部分
※2 所得に応じて税額が決まる部分

均等割・所得割ともに免除になることを「住民税非課税」と言います。「住民税非課税世帯」は、世帯全員が住民税非課税となる世帯を指します。

なお、「住民税の所得割のみ非課税」となる区分もあります。ただし今回の給付金の対象となるかどうかは自治体により異なるため、必ずお住まいの市区町村などの基準をご確認ください。

2.2 住民税が非課税となる<3つの要件>

住民税が非課税となる要件は、以下のいずれかに該当した場合です。

  1. 生活保護を受けている
  2. 障害者、未成年者、寡婦(夫)、ひとり親で、前年の所得が135万円以下である
  3. 前年の所得が各市町村の基準を下回る

1と2の要件は全ての市区町村で共通となっています。

一方で、3の所得要件は市区町村ごとに異なる基準があります。

3. 知っているようで知らない「住民税非課税世帯」の基準についてご紹介

「住民税非課税世帯」に該当する所得や収入の限度額を確認していきます。

市区町村ごとに基準が異なりますが、ここでは札幌市の例を見てみましょう。

3.1 【札幌市の例】「住民税非課税世帯」となる《所得》の基準

  • 扶養親族を有さない方:45万円
  • 扶養親族を有する方:35万円×家族数(本人+同一生計配偶者+扶養親族数)+31万円

「収入」から各種控除や経費などを差し引いた最終的な手取り金額が「所得」です。そのため、年収で考える方がわかりやすいという人もいるかもしれません。

しかし住民税非課税の限度枠は、収入額だけではなく収入の種類や扶養親族数などの諸条件によって変動するため、判定基準がやや複雑です。

4. 住民税非課税の基準をもっと詳しく見ていきましょう~札幌市の場合~

今度は「世帯構成と収入の種類別」に住民税非課税となる基準について、札幌市の例から見てみましょう。

札幌市で「住民税が非課税となる所得基準」と、それに対応する収入金額について「扶養親族なし」と「扶養親族1名」の場合を比べてみましょう。

4.1 扶養親族なし

  • 非課税となる合計所得金額:45万円
  • 給与収入のみの場合の収入金額:100万円
  • 公的年金収入のみの場合の収入金額(65歳未満):105万円
  • 公的年金収入のみの場合の収入金額(65歳以上):155万円

4.2 扶養親族1名

  • 非課税となる合計所得金額:101万円
  • 給与収入のみの場合の収入金額:156万円
  • 公的年金収入のみの場合の収入金額(65歳未満の方):171万3334円
  • 公的年金収入のみの場合の収入金額(65歳以上の方):211万円

例えば、単身世帯(扶養親族0人)の場合、給与収入のみであれば100万円が非課税限度額ですが、65歳以上で公的年金収入のみの世帯であれば155万円まで引き上がります。

また、扶養親族が1名いる世帯の場合、給与収入のみの場合は156万円、65歳以上で公的年金収入のみの場合は211万円となり、単身世帯よりも非課税限度額が高くなります。

このように、住民税が非課税となる限度額は、世帯構成や、65歳以上であれば収入の種類(給与収入か年金収入か)によって変動します。

5. 「住民税非課税世帯」になりやすいのは年金生活者である高齢者が多い

65歳以上の年金収入のみの世帯では、住民税の非課税限度額が高く設定されています。

一般的に年金生活に入ると現役時代よりも収入が減少するうえ、65歳以上の方には公的年金に対する所得控除が大きく、また遺族年金が課税対象とはなりません。

そのため、高齢者の年金生活者は「住民税非課税世帯」に該当しやすい傾向があるのです。

厚生労働省の「令和5年国民生活基礎調査」から、住民税が「課税される世帯」の割合を見てみましょう。【一覧表】住民税課税世帯の年代別割合

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出所:厚生労働省「令和5年国民生活基礎調査」をもとにLIMO編集部作成

  • 30歳代:88.0%
  • 40歳代:90.0%
  • 50歳代:86.4%
  • 60歳代:78.3%
  • 70歳代:64.1%
  • 80歳代:47.5%
  • 65歳以上(再掲):61.9%
  • 75歳以上(再掲):50.9%

※全世帯数には、非課税世帯及び課税の有無不詳の世帯が含まれます。
※総数には、年齢不詳の世帯が含まれます。
※住民税課税世帯には、住民税額不詳の世帯が含まれます。

住民税が課税される世帯の割合は、30~50歳代では約90%でしたが、60歳代で78.3%となります。その後65歳以上は61.9%、75歳以上は50.9%となっています。

このように、年齢が高くなるにつれて、住民税が課税される世帯の割合は低下する傾向にあります。

ただし先ほど触れたように、住民税非課税世帯の判定基準となるのは「収入(所得)」です。

そのため、年金収入は少ないものの、十分な預貯金があってそれを取り崩して生活している高齢者世帯も一定数含まれていると考えられます。

6. 【60歳代・70歳代の意識調査】今の年金受給額では「日常生活費もカバーできない」

金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査 2024」では、二人以上世帯のうち60歳・70歳代の約3割が「年金だけでは日常生活費程度もまかなうのが難しい」と答えています。

6.1 「年金にゆとりがない」と感じる理由とは?

また年金ではゆとりがないと考える世帯が「不安を感じる理由」は「物価上昇で支出が増えると見込んでいるから」がトップに。60歳代で63.3%、70歳代で62.8%にのぼります。

次いで「医療費の個人負担が増えるとみているから」は60歳代で28.3%、70歳代で34.8%、「介護費の個人負担が増えるとみているから」は60歳代で18.1%、70歳代で26.4%です。

7. 物価指数から見る今後の傾向 これからの年金生活者はどうなる?

企業物価の変動は、やがて私たちの生活にも波及し、消費者物価へと影響を及ぼします。特に今回のように、農林水産物の価格が大幅に上昇した場合、食費を中心とした生活コストの上昇につながりやすいといえるでしょう。家計を管理する立場としては、「なぜ価格が上がっているのか」を知ることが、無理のない対策への第一歩になります。

また、こうした物価の変化は、資産形成を考えるうえでも大切な視点となります。インフレに備えた分散投資や、将来の生活費を見据えた資金計画は、早めに意識しておくことで安心感につながるのではないでしょうか。

日々の生活の中で「また値上がりか…」と不安を感じることがあっても、背景を知り、準備をしておくことで、見えない将来に対する備えは確実に進めていけます。物価のニュースは一見難しく感じられるかもしれませんが、「家計」と「未来」に結びつけて考えてみるのも良いかもしれません。

参考資料

9. まとめ

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