2025年6月、福岡市で92歳の男性が運転する車による痛ましい事故が発生しました。一時は減少していた75歳以上の高齢運転者による死亡事故も、令和2年以降は再び微増の傾向が見られ、令和6年には410件と再び400件を超えています。

高齢ドライバーの運転免許証を自主返納する時期については、「まだ運転を続けるか」「そろそろ運転を卒業するか」というだけでなく、住んでいる環境や仕事で車を使う方にとっては簡単には決められない悩ましい問題でもあります。

今回は、警察庁のデータをもとに運転免許証の自主返納の現状や、運転を続ける際の《身を守る備え》について解説します。

1. 【75歳以上】高齢ドライバーによる死亡事故が微増傾向

まずは、警察庁交通局が令和7年2月27日に発表した「令和6年における交通事故の発生状況について」、75歳以上高齢運転者(一般原付以上運転)による死亡事故件数の推移をみていきましょう。

75歳以上高齢運転者(一般原付以上運転)による死亡事故件数の推移

75歳以上高齢運転者(一般原付以上運転)による死亡事故件数の推移

出所:警察庁交通局「令和6年における交通事故の発生状況について」

75歳以上の高齢運転者による死亡事故件数は、一時は減少していたものの令和2年を底に再び微増傾向にあります。令和6年は410件発生しており対前年より26件増えています。また、免許保有者10万人当たり75歳以上高齢運転者による死亡事故件数をみると、75歳未満運転者のおよそ2倍と依然として高い水準であるのがわかります。

死亡事故件数が再び増えつつある背景には、運転を続ける75歳以上の人口増加や、加齢による身体機能・判断力の変化に加え、車に頼らざるを得ない生活環境など、複合的な要因があると考えられます。

こうした背景の中、「そろそろ運転を卒業すべきか」と悩む方も増えており、運転免許の自主返納という選択肢が注目されています。