国内半導体製造装置メーカー各社の2018年度(19年3月期)通期見通しは、メモリーなどで主要顧客の投資計画が相次いで見直されたことで、前工程分野を中心に業績の下方修正が目立った。後工程では組立装置も前工程同様のダウンサイクルを示しているが、テスト分野では上方修正を行う企業があるほか、フォトマスク関連もトレンドとは異なる動きを示しており、半導体製造装置が横一線で低迷しているとはいえない状況だ。
前工程は顧客ミックスで明暗
期初時点では18年度も引き続きメモリー投資が活況を呈する前提で、東京エレクトロンを中心に前工程装置メーカーの計画は強気なものが目立っていた。しかし、5月にサムスンがDRAM投資の延期を決めて以降、半導体投資サイクルの潮目が大きく変わり、18年上期の好調から一転、下期は調整局面へと入ってきた。
実際に3月期決算の会社の多くは上期実績に関しては総じて好調をキープしているものの、下期計画を大きく見直しており、メモリー投資減速の影響は大きい。
東京エレクトロンは従来予想に対して、SPE(半導体製造装置)売上高を1200億円弱引き下げたほか、日立ハイテクもCD-SEMがメモリー投資の減速でネガティブな影響を受け、約200億円見通しを下方修正した。一方でロジック分野のウエイトが高いSCREENなどは、主要顧客の投資が回復基調にあることなどから計画を据え置いており、同じ前工程装置でも顧客ミックスにより、明暗が分かれている。
新川、ディスコなど組立装置も減収基調
組立装置も力強さに欠ける。メモリー投資減速が波及しているほか、米中貿易摩擦による需要減を危惧して主要顧客であるOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly & Test)の投資意欲が減退している。
ダイサーやグラインダー大手のディスコは、次四半期の業績開示にとどめており、当初は10~12月期売上高予想を前四半期比横ばい程度と見込んでいた。しかし、7~9月期決算発表時にこれを同12%減へ引き下げた。新川もメモリー顧客の投資見直しの影響を受け、上期業績のうち、主力のワイヤーボンダー売上高が前年同期比58%減という厳しい状況に置かれている。
好調な理由はテスト時間の伸び
一方で、テスト分野は主要企業が上期決算にあわせて通期見通しを上方修正するなど、例外的な動きを見せている。アドバンテストは通期売上高見通しを従来予想の2300億円から2650億円に修正。ウエハープローバー大手の東京精密も今期すでに2度の上方修正を行うなど活況ぶりがうかがえる。
テスト分野では現在、デバイスによってはテストタイムの長時間化が顕著に進んでいるところがあり、テスターやプローバーなどの必要台数が増加している。モバイル用プロセッサーではAI機能の導入やカメラ複眼化に伴う画像処理機能の負荷増大がテスト時間を伸ばす要因となっている。また、ドライバーICにタッチコントローラー機能を統合したTDDI(Touch and Display Driver Integration)では従来のドライバーICに比べてテスト時間が約3倍に伸びており、テスト関連装置の受注を押し上げる要因となっている。
EUV特需も需要押し上げ
同様に、マスク関連も技術トレンド変化の波を受けて、好環境を享受する。足元ではマルチプルパターニングに対応した需要増に加え、AIやサーバー、仮想通貨といった、いわゆるHPC(High Performance Computing)分野の立ち上がりに伴い、先端ロジックにおける顧客数が増加していることもマスク需要を押し上げる。実際に、TSMCが1~3月決算発表時に18年通年設備投資金額を増額修正したが、要因の1つとしてマスク生産能力の拡充を挙げている。
また、量産導入を控えるEUVリソグラフィーもプラス材料の1つ。マスクおよびブランクス検査装置大手のレーザーテックは、世界唯一のEUV波長を用いたEUVマスクブランクス検査装置を製品化しており、売り上げ計上は20年6月以降ながらも、足元の受注ベースではそれが大きく貢献している。
電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳