マスコミの多くは、公の存在であると同時に民間企業ですから、経営が立ちいかなくなっては困ります。そこで、やはり売れるものを出そうとします。そうした時に、人々が悲観論を楽観論より聞きたがっているとすれば、悲観論を優先的に採り上げるのは当然のことでしょう。

人々は悲観論が大好きです。「大不況が来る」と書く方が「景気は問題なし」と書くより確実に売れるでしょう。真剣に「最悪のシナリオを考えて、備えを万全にしたい」と考えている人もいるでしょうし、単に面白おかしくホラー小説を読むような感覚で読む人もいるでしょうが。

今ひとつ、「マスコミの使命として政府を監視する」というものがありますが、これを「政府を批判することが自分たちの使命である」といったニュアンスで捉えているところもあるようです。そうしたところは、経済がうまく行っている部分は控えめに報道し、経済がうまく行っていないところは大きく報道するといった傾向が出かねません。

一例として、政府(正確にはGPIF)は年金の運用をしていますが、運用で利益が出た時は控えめに報道し、損失が出た時は大きく報道される傾向があるように感じます。そこで、一般の読者の中には「政府は年金の運用で失敗しているので、我々の老後の年金がいっそう減ってしまう」と考えている人もいるようです。

しかし、実際の統計を見ると、年金の運用は長期で見れば十分に儲かっています。まあ、株価が上昇しているのですから、当然なのですが。

余談です。マスコミは、珍しいことを報道します。「犬が人を噛んでもニュースにならないが、人が犬を噛めばニュースになる」というわけです。その観点からは、「政府は運用が上手だから、儲かって当然だ。稀に損をするから珍しがってマスコミが報道しているのだ」といった解釈も無理をすれば成り立ちますね。相当無理だと思いますが(笑)。

バイアスを割り戻して考えることが必要

以上、世の中に流れている情報に悲観論のバイアスがかかっていることがご理解いただけたと思います。そうであれば、実際の世の中がどうなっているのかを知るためには、バイアス分を調整してやらなくてはいけません。

自分がサングラスを通して世の中を見ていることがわかれば、「実際の世の中は見えているより明るいはずだ」、と考えるべきなのです。

そこで筆者は、受け取った情報を総合して感じ取った世の中の姿を、若干明るい方向に修正してから取り込むようにしています。したがって、おそらく世の中の人々が取り込んでいる情報より楽観的な情報が脳に取り込まれているのだと思います。

それに基づいて情報を発信しているので、普通の人からは筆者は楽観派に見える、という面もあるようです。もちろん、そうでなくても筆者が楽観派であることは全く否定しませんが。

本稿は以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

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塚崎 公義