本記事の3つのポイント

  • 国立国際医療研究センター(NCGM)と㈱日立製作所は11月5日、次世代医療の実現に向けた連携協定を締結
  • 連携室、手術室内の医療機器を連動させ、ナビゲーションなど手術時に医師をサポートする技術の強化に取り組む次世代型手術室の開発や、先端技術を活用した医療現場の改善などを進める
  • 日立は、ヘルスケア分野を社会イノベーション事業における注力4事業分野の1つとして位置づけ、画像診断装置などの診断・臨床分野からインフォマティクス分野まで、医療の質の向上と効率化を実現するソリューションを提供

 国立国際医療研究センター(NCGM、東京都新宿区)と㈱日立製作所(東京都台東区)は11月5日、次世代医療の実現に向けた連携協定を締結した。両者は、15人程度の体制で2019年1月にNCGM内に連携拠点をプレオープン、同年4月から正式オープンし、国際的に模範となる安心・安全な医療の実現を目指す。ニーズ探索の段階からNCGM内で協創活動を展開することでイノベーション創成を活性化させ、手術室の高度化や医療従事者の働き方改革を中心として、幅広い分野で連携を進める。

次世代型外科手術室の開発

 具体的な連携分野は、①次世代型外科手術室の開発、②働き方改革の推進、③先端技術を活用した医療現場の改善の3つだ。

 ①においては、これまで外科手術において、特定の診療科に特化した手術室の高機能化が進められてきたが、臨床の現場では、診療科横断的な手術に対応でき、人手不足を補い、より安全な手術が行われる手術室を実現することが求められている。NCGMは、研究開発をミッションとするナショナル・センターの中でも総合病院を持ち、診療科間の垣根が低いのが特徴である。また、外科手術室は様々な診療科が利用するユニットであり、NCGMの総合力を生かしやすい分野である。

 両者は連携室、手術室内の医療機器を連動させ、ナビゲーションなど手術時に医師をサポートする技術の強化に取り組むとともに、看護師の業務やモノ・人の流れまで全体をパッケージとして、より安心・安全かつ医療充実者が働きやすい手術室の実現を目指す。また、これらのパッケージを新興国などの医療の質の向上に役立てることを検討する。

働き方改革の推進

 ②では、一人ひとりが活躍でき、多様な働き方を可能とする1億総活躍社会の実現に向け、医療の現場でも働き方改革の推進が必要不可欠になっている。両者は、デジタル技術を活用した働き方改革を推進し、医療従事者がワークとライフを両立するとともに、患者指向型の病院づくりを進める。具体的には、ロボットが医療従事者の業務を代行することの可能性を検証するため、日立のコミュニケーションロボット「EMIEW3(エミュースリー)」の臨床現場での導入に係る実証研究を行う予定である。

先端技術を活用した医療現場の改善

 ③では、日立が持つ画像診断技術や音声認識技術、指静脈認証技術などを活用し、病院の様々な課題解決に向けた応用可能性を探る。

 NCGMは、日本の医療分野における国際貢献の中核的機関として、感染症その他の疾患についての調査、研究、医療技術の開発、医療の提供および医療従事者の育成などを行うことを目的として設立されたナショナル・センターで、高度総合医療の提供および研究開発を担い、日本を含むアジアの総合病院の模範として医療を牽引することをミッションとして掲げている。

 日立は、ヘルスケア分野を社会イノベーション事業における注力4事業分野の1つとして位置づけ、画像診断装置、粒子線がん治療システムなどの診断・臨床分野からITを活用したサービスなどのインフォマティクス分野まで、医療の質の向上と効率化を実現するソリューションを提供している。

電子デバイス産業新聞 大阪支局長 倉知良次

まとめにかえて

 記事にもあるとおり、日立製作所はヘルスケア事業を注力分野の1つと位置づけ、事業拡大に取り組んでいます。17年11月には、地域包括ケアシステムの実現を支える医療機関や介護事業者へワンストップサービスの提供を目指して事業再編を実施を発表。18年4月1日付で、日立製作所の医療機器事業に関する保守サービスおよび営業・サービス支援部門と電子カルテ事業を子会社の日立メディカルコンピュータへ集約しています。

電子デバイス産業新聞