11月24日に台湾で統一地方選挙が行われました。台湾全土の22の市長や知事などを決める今回の統一地方選挙は、2020年に実施される総統選挙の前哨戦と位置づけられ注目されていました。与党民進党は、地盤としてきた南部の高雄市や台中市など直轄市の7つの首長ポストを失う大敗に終わりました。

2020年の総統選の行方は不透明に

2年半政権を担ってきた蔡英文政権の政策への不満から事前の予想でも民進党の苦戦が見込まれていましたが、年金改革に対する強い反発や、民進党政権に批判的な中国との関係悪化が経済的な不透明感につながっており、蔡政権への不満票が結果に表れた形となりました。

選挙での大敗を受けて、蔡総統は記者会見を開き、支持者たちを失望させたことに心から謝罪すると述べて、責任をとって民進党のトップを辞任しました。蔡総統は、総統の職には現任期中とどまりますが、党のトップを辞任したため1年余り後に実施される総統選挙への立候補の道が閉ざされる可能性が高まり、政権への求心力が低下することも危惧されます。

ただ、民進党のみならず、次期総統選には、与党民進党も野党国民党も有力な候補者がおらず、必ずしも国民党が有利になったとも言い切れません。2000年以降、二大政党がそれぞれ政権を担ったものの、有権者、特に若者たちの就職や賃金という問題への政府の取組みが不発に終わり、不満が高まっていて、若者たちの政党離れは加速しています。

米中の覇権争い激化と台湾

蔡政権は発足当初から中国との対話を継続する意図で、中華民国体制の維持と「92年コンセンサス」を歴史的な事実として受け入れる姿勢を見せるなど、譲歩をしてきました。

しかし、中国は、そうした譲歩を評価せず、「92年コンセンサス」の明確な受け入れを蔡政権に迫り、これを受け入れない場合は、台湾との対話を行わないと表明しました。以来、中台の対話は停止したままです。前政権で中国寄りの政策を採った国民党が勢力を巻き返したことは、台湾と中国の今後の関係を変化させる可能性を高めます。

そうなると、米国がどういう反応をするかが注目されます。以前に拙稿でも指摘したとおり(『半導体をめぐる台湾と中国の駆け引きを背後で見張るトランプ政権』2018月6月27日公開)、米国と台湾は半導体の最新技術が移転してしまうことを怖れて、最新技術を持ち出すことを制限しています。

ファブ企業は、中国子会社を作り、中国国内で半導体生産を始めて中国国内に供給する半導体の一部をまかない、中国政府の顔も立てています。しかし、技術移転には非常に慎重な姿勢を維持しています。米国は、中国への知的財産の移転に非常に厳しい態度を取っており、台湾の対中慎重姿勢を支援しています。

半導体の生産と技術競争は、軍事的にも重要であることは言うまでもありませんが、経済面での覇権にも大きく影響します。米国は、台湾を支援して技術移転を抑制する一方で、中国には知的財産権の侵害を訴えて、貿易摩擦を仕掛けているのです。台湾の次期総統選は、米中の覇権争いにも影響を及ぼすものとして注目されるでしょう。

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