仕事をしていると、報告書やプレゼン資料などをつくる機会が多くあると思います。また、オフィシャルなものでなくとも、SNSなどで自分の書いた文章を多くの人が目にするような機会も増えました。

 ただ、メンタリストでビジネス心理関連の著作も多いロミオ・ロドリゲス Jr.さんは、そうしたシチュエーションに「誰でもついやってしまいがちな罠」が潜んでいると指摘します。同氏の著書『仕事は嫌いじゃないけど、人間関係がめんどくさい!』から、知らないうちにこの「罠」にハマってしまう心理と、それを避けるための「3つの鉄則」をご紹介します。

「出来のいい資料」を必死につくってしまう心理

 ある日、あなたは上司に呼ばれ、こんなことを言われました。

「おい、君! この報告書は何が言いたいのかさっぱりわからん。つくり直してこい!」

 あなたは「言葉は丁寧にしたし、グラフもつけて、数字もしっかり入れ込んでいて、せっかく時間をかけてつくったのに、そんな言い方はないだろ……」と不満に思うかもしれません。

 しかし、現実問題として、あなたがいかに報告書の見た目をつくり込んだとしても、それは上司にとって本質的には関係ありません。なぜか? 上司にとって重要なのは「ポイントがわかること」であり、報告書の「出来のよさ」「見た目のよさ」ではないからです。

 実は私たちは、この「出来のいい報告書や資料を必死になってつくる」という罠にはまる危険が、非常に高いのです。その奥に潜む心理としては、「上司に認められたい」「上司に自分は頭がいいのだとアピールしたい」という意識があるといわれます。

頭をよく見せようとするほど「バカっぽく」なる

 日本には「急がば回れ」という素晴らしい教えがありますが、もし上司に、自分は「できる人間」だとアピールしたいのであれば、「頭をよく見せようとするだけの資料は決してつくらない」というのが正しい答えです。悲しいかな、頭をよく見せようとした瞬間、報告書・資料などが「バカっぽく」なってしまうのです。その理由がわかるお話をひとつご紹介しましょう。

 2003年にスタンフォード大学で、75人の学生に、2つの文章を読んでもらって印象を尋ねるという、非常にシンプルな実験が行われました。

1.シンプルな言葉で書かれた文章
[例]今日は天気がいい。太陽も明るく照っていて暖かい。

2.内容は「1」と同じ文章ながら、言い回しを難しくした文章
[例]今日はとても気分が素晴らしく、快晴で、雲ひとつない。空を見上げると、暖かい光の輪があり、燦燦(さんさん)と光を地上に下ろしていて、目が開けられないくらい眩(まぶ)しい。

 これら2つの文章を見せた上で、どちらのほうが頭がいい文章だと感じるかを尋ねてみたところ、ちょっと意外な結果になりました。