3. 高年収層が直面する「老後資金」や資産形成の課題
年収1000万円を超える層は「老後も余裕がある」と見られがちですが、現実にはそうとは限りません。
公的年金の限界と、生活水準を維持し続ける難しさ。高年収だからこその悩みが、老後資金の課題として浮かび上がっています。
3.1 公的年金には“上限”がある
厚生年金は「報酬比例」で決まるとはいえ、保険料の上限は標準報酬月額65万円(年収ベースで約1170万円)までです(出所:日本年金機構「厚生年金保険の保険料」)。
それ以上の年収があっても、年金受給額はそれほど増えません。高収入の人ほど、「思ったより年金が少ない」というギャップを感じる傾向があります。
3.2 高収入ゆえの落とし穴:生活水準が下げられない
高年収層は、住宅・教育・レジャーなど生活水準が高くなりがちです。一度上げた生活の質はなかなか下げられず、収入が減っても支出を減らせない“生活固定化”のリスクを抱えます。
上記は、世帯年収「1000~1200万円未満」と「1200万円以上」の2人以上世帯の貯蓄額データです。
世帯年収が1200万円以上の世帯でも6.0%が貯蓄ゼロという実態も浮き彫りとなっており、「高収入=貯蓄が多い」とは言い切れません。
年収が高い世帯へのイメージと老後の備えには大きなギャップがあることがわかります。
4. 年収アップを目指しながら「貯蓄」もコツコツと…
目標の年収として掲げられることの多い「年収1000万円」。
日本の給与所得者に占める年収1000万円以上を稼ぐ人の割合はごく僅かであることがわかりました。
また年収が高いからといって、老後は年金収入だけで悠々自適に暮らせるとは言えません。
年収の多寡によらず、各世帯で支出をコントロールして老後に向けた備えが必須であるといえるでしょう。
参考資料
- 国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」
- 総務省統計局「家計調査 / 貯蓄・負債編 二人以上の世帯 詳細結果表」
- 厚生労働省「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」
- J-FREC 金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
マネー編集部年収班