5. 2025年度の年金額は1.9%の増額も「実質的に価値は目減り」という現実
2025年度(4月分から)の公的年金額は、前年度より1.9%の引き上げとなりましたが、物価上昇率には追い付けておらず、実質目減りとなっています。
日々の暮らしに必要なモノやサービスの値上げが止まらぬいま。老後の資産や家計管理に漠然とした不安を抱く人もいるでしょう。
なお、総務省が公表した「家計調査報告 家計収支編2024年(令和6年)平均結果の概要」から、シニア世帯の家計収支の状況を見てみると、70~74歳は11.8%、75歳以上は9.4%の赤字率となりました。
また、社会保障給付(主に公的年金)が21万7558円、20万7623円と、実収入の9割を占める一方で、非消費支出(税や社会保険料)の負担は、毎月3万円台となっています。
もちろん、貯蓄額、年金額、そして必要な老後の生活費には世帯差・個人差があります。「我が家の場合」に当てはめて、シミュレーションしながら、老後の生活設計を考えていきましょう。
6. まとめにかえて
今回は、70歳代世帯の貯蓄事情や、遺産に関する考え方、また公的年金の受給額についても確認してきました。
そもそも老後に受け取れる年金額に対して、かなり少ない印象を持たれた方も多いかもしれません。さらに老後には「万が一」の事態が起こり大きなお金が必要になることも。
将来受給できるお金と、さらにそれに対していくらお金が不足してしまう可能性があるのか。これを逆算して今からできることを探していけると良いですね。
7. ※豆知識※「働き方×収入」で年金はこう変わる!《多様なライフコースに応じた年金額》
厚生年金は現役時代の働き方や収入によって、年金額が大きく異なります。厚生労働省は2025年度の年金額改定の公表時に、多様なライフコースに応じた年金額を5パターン提示しています。
多様なライフコースに応じた年金額
出所:厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
7.1 パターン①:男性・厚生年金期間中心
年金月額:17万3457円
- 平均厚生年金期間:39.8年
- 平均収入:50万9000円※賞与含む月額換算。以下同じ。
- 基礎年金:6万8671円
- 厚生年金:10万4786円
7.2 パターン②:男性・国民年金(第1号被保険者)期間中心
年金月額:6万2344円
- 平均厚生年金期間:7.6年
- 平均収入:36万4000円
- 基礎年金:4万8008円
- 厚生年金:1万4335円
7.3 パターン③:女性・厚生年金期間中心
年金月額:13万2117円
- 平均厚生年金期間:33.4年
- 平均収入:35万6000円
- 基礎年金:7万566円
- 厚生年金:6万1551円
7.4 パターン④:女性・国民年金(第1号被保険者)期間中心
年金月額:6万636円
- 平均厚生年金期間:6.5年
- 平均収入:25万1000円
- 基礎年金:5万2151円
- 厚生年金:8485円
7.5 パターン⑤:女性・国民年金(第3号被保険者)期間中心
年金月額:7万6810円
- 平均厚生年金期間:6.7年
- 平均収入:26万3000円
- 基礎年金:6万7754円
- 厚生年金:9056円
この年金額例では、厚生年金加入期間が長く、収入が高いほど年金額が増加していることがわかります。
将来受け取る年金水準を大きく左右するのは、「国民年金と厚生年金のどちらが中心だったか」という点だということも見て取れます。