3. どうしても「故人の預金口座から引き出したい場合」の対応方法は?
相続手続きが完了していない期間に、どうしても故人の口座から資金を引き出す必要がある場合、「預貯金の払い戻し制度」を活用する方法があります。
3.1 必ず知っておきたい!「預貯金の払い戻し制度」とは?
「預貯金の払い戻し制度」とは、遺産分割手続きがまだ完了していない場合でも、故人の預貯金の一部を払い戻すことができる制度で、2019年7月1日から施行されました。
「預貯金の払い戻し制度」を活用することで、相続人は遺産分割協議が終わる前でも、故人の口座から一定額の預金を引き出すことが可能です。
払い戻しできる金額は下記の計算式で算出され、各金融機関ごとに上限額は150万円となっています。
【払い戻しができる金額】
- 相続開始時の預金額 × 1/3 × 払戻しを行う相続人の法定相続分
ただし、手続きの詳細や必要書類は金融機関によって異なる場合があるため、利用を検討する際は、直接該当の銀行に問い合わせて確認することをおすすめします。
4. 【予備知識】ネット銀行の口座も同じ対応になる?
近年、ネット銀行の利用者が増加していますが、相続時の対応には一般的な銀行と異なる点がいくつかあります。
ここでは、ネット銀行の口座凍結や相続手続きに関する特徴を説明します。
4.1 ネット銀行の口座が凍結されるタイミングは?
ネット銀行の口座も、名義人の死亡が銀行に知られた時点で凍結されます。
これは一般の銀行と同様の仕組みですが、ネット銀行は支店や窓口がないため、相続手続きはオンライン上や郵送で行う必要がある点が異なります。
4.2 ネット銀行の相続手続きの流れを確認
相続手続きの基本的な流れとしては、まず家族が銀行に故人の死亡を報告し、銀行指定の必要書類を提出します。
一般的に、戸籍謄本や相続人の本人確認書類、遺産分割協議書(場合によっては)が求められます。
銀行によってはオンラインで手続きが可能なところもありますが、郵送のみ対応の銀行もあるため、事前に確認することが大切です。
手続きが終了すると、預金は相続人に渡され、故人の口座は解約されます。
なお、ネット銀行の口座は直接相続することはできません。
4.3 ネット銀行の相続手続きで注意すべきポイントとは?
ネット銀行は通帳がないため、家族が口座の存在に気づきにくいという課題があります。
利用していたネット銀行を特定するには、メールの履歴や銀行からの通知書を確認する方法が有効です。
こうしたトラブルを避けるために、口座情報を家族と共有したり、エンディングノートに記録しておくことが大切です。
利便性の高いネット銀行ですが、相続手続きは通常の銀行よりもやや複雑になりやすいため、あらかじめ準備をしておくことで、円滑な手続きを進められるでしょう。
5. まとめにかえて
銀行口座は、名義人本人が管理・利用するものであり、ご家族の方でも、勝手に使うことはできません。
もし、口座の持ち主が亡くなってしまったら、残された資産や借金は、法律で決まった相続人全員で話し合って分けることになります。
亡くなった後に誰かが無断でお金を引き出してしまうと、後でご家族のトラブルの原因になることもありますので、注意が必要です。
とはいえ、葬儀費用などですぐにお金が必要になるケースもあるでしょう。そんなときには、今回ご紹介する制度を利用するのもひとつの方法です。
いざというときに慌てないよう、元気なうちからご家族で相続について話し合っておくことが大切です。
参考資料
足立 祐一