5. 【2025年度】公的年金は1.9%、年金生活者支援給付金は2.7%の増額に

公的年金と年金生活者支援給付金の支給金額は、年度ごとに見直しがおこなわれます。令和7年(2025年)度の年金額例や、支給金額についても触れておきます。

5.1 公的年金の年金額は「1.9%引き上げ」

公的年金は、物価や現役世代の賃金の動向を踏まえて改定されます。2025年度は、前年度より1.9%の引き上げとなりました。

増額率が適用されるのは、6月13日(金曜日)に支給される「4月・5月」分の年金からです。

2025年4月分(6月13日(金曜)支払分)からの年金額

2025年4月分(6月13日(金曜)支払分)からの年金額

出所:日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」

  • 国民年金(老齢基礎年金(満額)):6万9308円(1人分)
  • 厚生年金:23万2784円(夫婦2人分)

※昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金の満額は月額6万9108円(対前年度比+1300円)
※厚生年金は「男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)」で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準

3年連続のプラス改定にはなりましたが、マクロ経済スライド(※)によって物価上昇率を下回る改定率となっており、実質的には年金額は目減りしている点には留意が必要でしょう。

※マクロ経済スライドとは:「公的年金被保険者(年金保険料を払う現役世代の数)の変動」と「平均余命の伸び」に基づいて設定される「スライド調整率」を用いて、その分を賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除するしくみ

5.2 年金生活者支援給付金の支給金額は「2.7%引き上げ」

「年金生活者支援給付金」は、低所得の年金受給者で一定要件を満たす人が受け取ることができるお金です。2カ月に一度の年金支給日に、公的年金に上乗せして支給されます。

年金生活者支援給付金の支給金額

年金生活者支援給付金の支給金額

出所:日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」

  • 老齢年金生活者支援給付金:基準額:月額5450円
  • 障害年金生活者支援給付金:障害等級1級6813円・2級5450円
  • 遺族年金生活者支援給付金:月額5450円

老齢年金生活者支援給付金のみ、上記の基準額をもとに保険料納付済期間や免除期間に応じて実際の給付額が計算されるため、個人差が出ます。

6. 【2025年度の年金は実質目減り?】公的年金の増額は物価上昇率に及ばない

公的年金の受給額は金額だけで見れば増えていますが、物価上昇率に追いついていないため、実際に購入できるモノの量や質で見ると、むしろ生活は苦しくなる可能性がある点に留意が必要です。

日本年金機構では、年金受給額引上げ水準の決め方についてまとめています。

2025年度の年金額の改定について

2025年度の年金額の改定について

出所:日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」

まず、物価上層率と賃金上昇率のうち「低い方」を採用します。この時点で物価変動率の同等以下の引上げ率しか望めません。

さらに、平均余命の伸びを勘案して、個々の受給額を減らす「マクロ経済スライドによる調整」という項目があります。平均余命が伸びると、一人に対する平均的な年金受給期間が延びるため、年金制度を維持するために、一人あたりの受給額を抑えなければならないのです。

年金の引き上げ率が物価上昇率よりも下回っていると、購入できるモノの量や質でみたときの実質的な受給額はむしろ目減りしています。金額は増えているように見えても、年金受給者の生活はより苦しくなる可能性がある点に留意が必要です。

7. まとめにかえて

これまで、2025年度の年金額や公的年金制度の仕組み、標準夫婦の定義について確認してきました。年金は老後の生活を支える大切な収入源ですが、受給額や制度の内容は、その時代に応じて変化していく可能性があります。

常に最新かつ正確な情報を把握し、ご自身やご家族の将来に必要な資金について考えておくことが、豊かな老後生活の第一歩です。

今後も年金制度の動向に注目しつつ、必要に応じて貯蓄や資産形成で備えておきましょう。

参考資料

中本 智恵