日本が知らない香港の実力と将来性~香港行政長官が初訪日

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香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が、10月29日から11月2日までの日程で就任後、初来日しました。主な目的は、香港貿易発展局(HKTDC)が主催する経済交流イベント「think GLOBAL, think HONG KONG」への出席でした。

これは、香港政府が世界の主要都市で開催している香港の大型プロモーションイベントで、日本では2012年以来6年ぶり2回目の開催、規模も前回を上回るものでした。日本と香港の官界、財界からも多数の人が参加し、会場には香港に関心を持つ約3000人もの人々が詰めかけました。

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実は経済自由度世界一の香港

香港については、正しい情報がしっかりと日本には伝わっていないと思うことが少なくありません。香港は小さな都市ですが、イギリスが植民地統治した155年の長きにわたって創り上げてきた自由経済体制を、今では「一国二制度」のもとではありますが堅持しています。

事実、米国のヘリテージ財団とウォール・ストリート・ジャーナルによる「経済自由度指数」(Index of Economic Freedom)では、香港は24年連続で経済自由度世界一の座にあり続けています。

また、金融都市としての地位も、今では東京を凌駕しています。資産運用センターとしては運用額で見ると世界4位、アジアではナンバーワンです。資本市場としてはニューヨーク証券取引所と香港証券取引所は肩を並べ、今年は必ずしも株式市場にとってよい環境とは言えませんが、中国本土の企業を中心に株式の新規公開(IPO)が続いています。

香港は、低税率かつ分かりやすい税制の都市ですが、政府は健全財政です。政府の決算はここ数年黒字です。行政トップの香港行政長官が女性であることに象徴されるように女性の社会進出も進んでおり、勤労者の男女比率はほぼ同率に近いほどです。

金融業界にいると、普段仕事をしていて、取引先の相手が女性であることが実に多いのも香港の特徴です。日本並みに高齢化は進み、日本を抜いて世界一の長寿大国となりましたが、元気な老人が多く「老人都市」という言葉は聞いたことがないという不思議な都市です。

意外と日本との関係も深い

日本との関係を見ると、日本の農産物の世界最大の輸出先は香港なのです。そして、香港からの訪日客は2017年には220万人と、人口730万人の都市の約4分の1の人が日本を訪問するほど、「親日」であると言えます。

香港の街には、日本語を使った看板も多く見られますし、日本発祥の飲食店やリテールショップも多く、日本の製品も溢れています。日本のカルチャーシーンに憧れる若者も多く、「日本ブランド」への信頼感も絶大なものを感じます。

香港には1393社の日系企業が拠点を構えていると言われます。1393社というと、香港に進出している外国企業の国別内訳で日本は最多となり、米国を抑えてトップです。これほど、日港関係は深く親密なのです。

壮大な「グレーターベイエリア構想」

さて、キャリー・ラム行政長官のもう一つの訪日目的は、グレーターベイエリア構想をプロモーションすることでした。これは、2017年に中国の全国人民代表大会で国家戦略と位置づけられた新しい開発計画です。

香港・マカオ・広東省にまたがるデルタ地域に、カリフォルニア州のシリコンバレーに匹敵するハイテクメガロポリスを創ろうという構想で、2017年末時点で居住人口は6900万人、中国全体の国内総生産(GDP)の12.4%を占める一大経済圏です。ちなみに17年の経済成長率は9.2%に達し、中国全体の6.9%をはるかに凌駕しました。

グレーターベイエリア構想は、目に見える形で香港周辺地域を変えつつあります。その一つが、9月に開通した香港と中国本土を結ぶ「広深港高速鉄道」です。深圳経由で香港と広東省の省都広州が直接つながりました。

そして、もう一つが10月に開通した「港珠澳大橋」です。金融都市かつ世界的レベルの研究機関や人材教育機関のある香港と赤いシリコンバレー深圳、そして経済的な規模も大きい広東省が、より結びつきを強めれば、近いうちに米シリコンバレーの背中を捉えることもありうるでしょう。

日本に注目する香港

香港は、日本にとても注目しています。日本と香港は高齢化という共通の問題を抱えています。世界一の長寿都市である香港、第2位の日本が共同で高齢化対策に関連する事業を進めること、高齢化に対応可能な社会システムを作ることは、将来高齢化が深刻化する中国をにらめば、大きな先行者メリットになるでしょう。

また、フィンテック企業の取り込みも活発化しています。なにより、香港は世界有数の金融都市であり、金融機関もひしめき合うほどたくさんあります。商品やサービスを変えていく力として、日本人や日本企業の持つアイデアや技術には、とても注目が集まっています。それだけではなく、考え方も取り組み方もスピード感を重視します。変化はとても速く、対応にもスピードが求められる時代です。

日本の方にも、香港をアジアや中国へのゲートウェイとして活用するメリットを改めて考えていただければと思います。

Nippon Wealth Limited, CIO 長谷川 建一

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長谷川 建一
  • 長谷川 建一
  • ニッポン・ウェルス・リミテッド・リストリクティド・ライセンス・バンク
  • 取締役兼CIO (Chief Investment Officer)

京都大学卒、MBA(神戸大学)。 シティバンクグループ日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、2000年にシティバンク日本のリテール部門で商品開発や市場営業部門のヘッドに就任。2002年にシティグループ・プライベートバンクのマーケティング部門ヘッドに就任。
2004年末、東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)に移り、リテール部門マーケティング責任者として活躍。2009年からは国際部門でアジア・リテール戦略を担い、2010年は香港にてBTMUウエルスマネージメント事業の立ち上げに従事。
2013年よりNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(ニッポン・ウェルス・リミテッド・リストリクティド・ライセンス・バンク)にてCOOに就き、2017年3月よりCIOを務める。