パッケージ基板やプリント配線板などを手がけるイビデンは、2019~21年度の3カ年で総額700億円を投じ、ICパッケージ基板の生産能力を大幅に増強する。主力拠点の大垣中央事業場 第2棟および大垣事業場(ともに岐阜県)に生産設備を導入し、21年度までにパッケージ基板の生産能力を現行比50%増強(層数換算)する。
「実際は2倍ぐらいの引き合い」
パッケージ基板やプリント配線板で構成される電子事業は、22年度に売上高2000億円(17年度実績比1.7倍)の達成を中期目標として掲げている。目標達成に向け、高水準の投資を行っていく構えで、18~22年度の4カ年の設備投資総額(全社ベース)は2000億円を見込んでいる。次年度(20年3月期)も18年度比2.6倍の650億円を予定しており、およそ7割を電子事業に充てていく。
大垣地区へのパッケージ基板の増産投資はその一環。19年度から順次稼働を開始し、20年度後半から本格量産を開始。すでに先行して実施している投資分の寄与も含めて、21年度までに生産能力を現在の1.5倍に引き上げる見通しだ。
大型の増産投資について、青木武志社長は、「実際は(能力に対して)2倍ぐらいの引き合いをもらっており、短期で応えられるキャパアップの上限」だとして、旺盛な需要があることをうかがわせた。まずは、足元で需要が好調なデータセンター用CPUなどのパッケージ基板需要に対応するとともに、GPUなどを含む新分野のパッケージ基板などにも対応できる生産ラインに構成していく。
上期実績は増収増益も計画未達
電子事業の上期(4~9月)実績は、売上高が前年同期比8%増の602億円、営業利益が10億円(前年同期実績5億円)の増収増益となった。従来予想に対し、売上高、営業利益ともに若干の未達となったが、PCB事業が新製品立ち上げ効果などにより、7~9月期に黒字化するなど収益改善が進捗しているほか、パッケージ基板はサーバー、クライアント向けともに好調に推移。とりわけ、データセンター向けの受注が好調で増収増益となった。一方で、スマートフォン向けを中心とするCSP基板は、ファンアウトパッケージの採用に伴う影響が継続しており、低迷を余儀なくされている。
通期見通しは、売上高は従来から変更なく1300億円を見込んでいるが、営業利益は55億円から80億円に上方修正を図った。上期から下期にかけて、パッケージ基板の増産が一部寄与するほか、プリント配線板も主要顧客向けの生産がピークを迎えることから、収益貢献を果たす見通し。
反転攻勢に向けた大きな一手
同社の基板事業は近年、不振に喘いできた印象だ。長年事業を牽引してきた主力のMPU向けに関してはパソコンの出荷台数減少に直面。その後、スマートフォン向け基板ビジネスに活路を見出すが、パッケージ基板(CSP基板)では、主要顧客がFOWLP(Fan Out Wafer Level Package)の採用に舵を切ったことで、受注減に悩まされた。プリント配線板についても、アジア系企業との競争激化など、主力分野のほぼすべてで当初描いていた事業展開を果たせずにいた。
そういった意味では、今回の大型投資は反転攻勢に向けた大きな一手といえそうだ。足元ではデータセンター用CPU向けのパッケージ基板の引き合いが強まっているほか、今後はGPUや2.5D、さらには5Gインフラなどの関連する通信プロセッサーなど同社が得意とするハイエンドパッケージ基板の需要拡大が期待できる環境にある。
競合企業の新光電気工業も、18年5月にフリップチップ(FC)パッケージ基板の生産体制強化を発表。高丘工場(長野県中野市)を中心に製造設備を導入し、FCパッケージの生産能力を20年度(21年3月期)までに2割増強する考えだ。
ここ数年、停滞感が強かったハイエンドパッケージ基板だが、パッケージ技術の複雑化やカスタムニーズの向上といった追い風を受けて、明るい兆しが見え始めてきた。
電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳