2. 公的年金だけでゆとりある老後は過ごせる?
50歳代の貯蓄状況について確認してきましたが、老後の生活費を国民年金や厚生年金だけでカバーできれば、高額な貯蓄は必要ないとも考えられます。では、現在のシニア世代は公的年金だけでゆとりある老後を過ごせているのでしょうか。
2.1 ゆとりある老後生活には37万9000円必要
生命保険文化センターが行った「生活保障に関する調査」2022(令和4)年度」によると、夫婦二人でゆとりある老後生活を送るために必要な金額は、平均37万9000円という結果でした。
夫婦二人に必要な日常生活費は最低で月額平均23万2000円で、ゆとりを持たせるには平均14万8000円が追加で必要と考えているようです。
ゆとりを持たせた分の使い道には、旅行やレジャー、日常生活費の充実、趣味や教養、身内とのつきあいなどが挙げられています。
しかし、これらの費用をカバーできるほど公的年金を受給できているのでしょうか。
2.2 国民年金・厚生年金の平均受給額
厚生労働省年金局が公表した「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金受給額は平均14万6429円、国民年金は平均5万7584円です。
たとえば、会社員だった夫と専業主婦だった妻の二人世帯の場合、22万2383円(16万6606円+5万5777円)が毎月の受給額となり、ゆとりある老後生活に必要な金額である37万9000円よりも15万7000円ほど不足する計算になります。
最低限必要な23万2000円はカバーできる可能性がありますが、ゆとりある生活を送るには公的年金だけでは難しいといえます。
3. まとめにかえて
50歳代で3000万円以上の貯蓄額があるのは、二人以上世帯で10.7%、単身世帯で11.2%という結果で、約10世帯に1世帯の割合となっています。
50歳代は年金受給開始まであと十数年であり、老後資金の準備を本格的に始めたい世代です。貯蓄のない世帯も多いことから、思い立ったときからすぐに始めることをおすすめします。
参考資料
- J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」
- 公益財団法人 生命保険文化センター「生活保障に関する調査」2022(令和4)年度」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
木内 菜穂子