現在50歳代の方は、あと十数年前後で年金生活が始まる方が多いでしょう。人生100年時代といわれて久しいですが、長い老後生活をゆとりをもって過ごすにはまとまった貯蓄が必要です。

老後に必要な金額は世帯ごとに異なりますが、たとえば3000万円以上の貯蓄のある世帯はどのくらいいるのでしょうか。また、老後は公的年金だけで十分な暮らしができるのでしょうか。

本記事では、50歳代で貯蓄額3000万円以上ある世帯の割合や、ゆとりある老後生活に必要な金額を解説していきます。

1. 50歳代で貯蓄3000万円以上ある人はどのくらい?

50歳代で、貯蓄額3000万円以上ある世帯はどのくらいいるのか、J-FLECが公表した「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」をもとに、二人以上世帯と単身世帯とにわけて確認していきましょう。

なお、同調査の貯蓄額には、預貯金のほか株式や投資信託、積立型保険商品なども含まれています。

1.1 二人以上世帯は10.7%

50歳代二人以上世帯で、貯蓄額3000万円以上を保有している世帯は10.7%です。約10世帯に1世帯が、3000万円以上の貯蓄があることになります。

しかし、50歳代というと定年退職まであと10年前後という年代であるため、老後資金の準備がすすんでいない世帯が多いともいえます。

実際に、50歳代二人以上世帯の平均貯蓄額は平均値が1168万円で、中央値が250万円という結果です。「平均値」と「中央値」は、それぞれ以下のような特徴があります。

  • 平均値:データの値の合計をデータの個数で割った値。データの中に極端に大きなまたは小さな値があると、その影響を受けやすく実際の平均とはかけ離れることがある。
  • 中央値:データの値を小さい順に並べたときに、ちょうど真ん中になる値。極端な値の影響を受けにくいため、実際の平均に近い数値とされる。

このような特徴があることから、実際の平均を知るには中央値の方が適しているとされています。したがって、50歳代二人以上世帯の平均貯蓄額は、250万円ほどといえます。

では、貯蓄額ごとの世帯割合を見てみましょう。

貯蓄額ごとの世帯割合(50歳代・二人以上世帯)

貯蓄額ごとの世帯割合

出所:J-FREC 金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」を元に筆者作成

最も多いのは「金融資産なし」で29.2%を占めており、約3割の世帯が貯蓄がないことがわかります。2番目に多いのが「3000万円以上」で10.7%、3番目が「100万円未満」で8.7%です。

貯蓄のない、またはほとんどない世帯と、高額な貯蓄を保有する世帯の差が広がっています。

1.2 単身世帯は11.2%

50歳代単身世帯で貯蓄額が3000万円以上ある世帯は11.2%です。二人以上世帯よりも若干多いですが、やはり1割程度にとどまっており、老後資金が十分に準備できている世帯は少ないことがわかります。

単身世帯の平均貯蓄額は、平均値が1087万円で中央値が30万円です。実際の感覚に近い平均額は中央値の30万円となっており、二人以上世帯の平均値250万円よりもかなり少額になっています。

では、貯蓄額ごとの世帯割合も確認しましょう。

貯蓄額ごとの世帯割合(50歳代・単身世帯)

貯蓄額ごとの世帯割合

出所:J-FREC 金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」を元に筆者作成

50歳代単身世帯では、「金融資産なし」が最も多く40.2%を占めており、次いで「100万円未満」が13.1%となっています。そして3番目に多いのが「3000万円以上」で11.2%です。

金融資産なし、または、あっても100万円未満という世帯が53.3%を占めており、平均値が30万円というのも納得できる結果となっています。