6. 高齢者の医療費は実際どのくらいかかる?
年金だけで生活するシニア世帯にとって、医療費の自己負担は大きな関心ごとのひとつです。年齢を重ねるごとに病院にかかる頻度や薬の処方も増えやすくなり、医療費の支出はどうしても避けられません。
では、実際に高齢者はどの程度の医療費を支払っているのでしょうか。
厚生労働省「国民医療費の概況(令和4年度)」によると、75歳以上の後期高齢者1人あたりの年間医療費総額は約94万円。
多くの75歳以上の方は「後期高齢者医療制度」により医療費の窓口負担が1割(一定所得以上は2~3割)になるため実際の負担はもっと少なくなりますが、それでも年金で生活する方からすると大きな出費といえるでしょう。
また、70歳から74歳の1人あたりの年間医療費総額も約85万円ほどとなっており、年齢に関係なく一定の医療費支出が継続的に発生していることがわかります。
さらに、慢性的な病気や複数の診療科を受診するケースでは、月1万円以上の医療費負担が常態化している家庭もあります。これに加えて、入院や手術などが必要になると、一時的に数十万円単位の出費も考えられるため、医療費は年金生活における“見えない不安要素”とも言えるでしょう。
こうした医療費負担に備えるためには、「高額療養費制度」や「医療費控除」などの支援制度の活用、さらには医療費を見込んだ老後資金の設計が欠かせません。
7. まとめにかえて
本記事では、標準的な夫婦が2025年6月13日(金)の年金支給日に、2人で「約46.5万円」を受けとるとはどういうことか、という視点で年金制度や年金生活の実態を考察してきました。
働き方が多様化する現代において、会社員の夫&専業主婦の妻で構成される夫婦世帯は「標準」とはいえません。
あくまでも年金の給付水準を把握するための目安として捉えておきましょう。
夫婦2人で年金支給日に「約46.5万円」を受けとれたらうらやましいと感じた人もいるでしょう。しかし、これは2カ月分。月額にすると23万円ほどになります。
月額23万円ほどの年金収入で夫婦2人の生活費をカバーするのは容易ではないでしょう。
少子高齢化により将来的に年金の給付水準は減少していく見通しです。現役世代の人たちはこうした現状を知ることで、老後に向けて何をすべきか、考え、行動していく必要があるでしょう。
参考資料
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 日本年金機構「令和6年4月分からの年金額等について」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」
- 厚生労働省「国民医療費の概況(令和4年度)」
- 金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」
和田 直子