糸井氏「売上が多少伸びたのは、大したことじゃない」通期決算で振り返る、ほぼ日の土台

2018年10月24日に日本証券アナリスト協会主催で行われた、株式会社ほぼ日2018年8月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料 質疑応答パートはこちら

スピーカー:株式会社ほぼ日 代表取締役社長 糸井重里 氏
株式会社ほぼ日 取締役CFO管理部長 篠田真貴子 氏

2018年8月期決算説明会

篠田真貴子氏(以下、篠田):みなさまこんにちは、株式会社ほぼ日の篠田でございます。今日はまず私から、この8月で決算をいたしました、40期(2018年8月期)の業績説明。それから、今期に当たります41期(2019年8月期)の業績予想について、簡単にご説明します。

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そのあと糸井から、足元の業績と、将来のほぼ日についての全般のお話をさせていただきます。

業績のお話に入る前に、先日適時開示させていただきましたが、私はこの11月の株主総会をもって、退任させていただくことになりました。

このあたりは、コーポレートサイトにもちょっとメッセージを出させていただいたんですが、ほぼ日に入ってから10年間やってまいりました。昨年(2017年)3月に上場を果たし、本当に手探りではございましたが、投資家さまをはじめ、みなさまのお力添えもあって、ほぼ日は上場企業として、慌てずに落ち着いて行動できるようになったかなと思っております。

このタイミングで、私は「責務を果たせたのかな」と考えるようになりまして、糸井と相談しましたところ、すぐに意見が一致しまして、このような決断になりました。

このようなかたちでみなさまとお会いするのは、これで最後になりますけれども、ほぼ日はこれからも、もっともっとおもしろい会社になっていくと思いますので、ぜひ引き続きご関心を持って、見ていただければと思っております。よろしくお願いします。

それでは、40期のご説明をさせていただきます。

株式会社ほぼ日とは

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毎回、「当社は何であるか」をお話ししています。ここは(今回も)ちょっとお伝えさせてください。

株式会社ほぼ日は、人々が集う「場」をつくり、「いい時間」を提供するコンテンツを企画、編集、制作、販売する会社です。

ほぼ日の提供するおもな場

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この「場」というのは、具体的には次のスライドにあるようなものです。

「ほぼ日刊イトイ新聞」は主要事業ですけれども、今期については、右下にあります「生活のたのしみ展」や「ほぼ日の学校」。そして、こちらにある「ほぼ日のアースボール」。こういった新しい取り組みを手がけて、業績を作ってまいりました。

サマリー

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それでは、今日のお話のサマリーをご紹介します。

まず、今期(2018年8月期)の事業ですが、売上高は前期比で2割超、具体的には25.4パーセント成長することができました。主力商品の「ほぼ日手帳」は(前年版から、販売)部数を11万部伸ばしまして、2018年版の販売を78万部で着地させております。

先ほどお伝えしたように、新事業の「ほぼ日のアースボール」であるとか「生活のたのしみ展」、あるいは「ほぼ日の学校」。こういったものを手がけてまいりました。

進行期(2019年8月期)の取り組みについて(私からのご説明の)最後に少しご紹介しますけれども、先にお伝えしますと、主力商品の「ほぼ日手帳2019」が、(2018年)9月1日から発売を開始しております。今年は9月から、中国で新しく簡体字版を発売しまして、中国市場での取り組みを一層強化しております。

それから、9月に「第3回生活のたのしみ展 出張巡回展」という位置付けで、初めて東京を離れて、大阪の阪急うめだ本店で開催いたしました。

「ほぼ日の学校」は1講座から始まったところが、今は2つ目・3つ目の講座や単体イベントなど、内容を拡充しています。

業績予想については、売上・利益ともに増加の見込みでございます。

【第40期の事業報告】P/L 対前期・対予想比較

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第40期(2018年8月期)の事業報告をお伝えしてまいります。

表の左側で当期の数字、真ん中で対前期、右側で2018年8月期の予想に対してどうであったかをお示ししています。主に、一番左と真ん中のところでご説明します。

まず、売上高は50億円を達成しまして、50億3,700万円となりました。うち、「ほぼ日手帳」が30億6,300万円で、構成比では60.8パーセントです。上場時には約7割でして、当時からも長期的なテーマとして、「『ほぼ日手帳』のみの依存から、もうちょっと広げていきたい」と申し上げてまいりましたが、この2年間で、そこについては少し進展があったかなと思っております。

手帳以外の商品群の「ほぼ日商品」が15億8,500万円で、構成比としては約3割。伸び率でいくと、ここが55.2パーセントで、大きく伸びております。

先ほど申し上げた「生活のたのしみ展」を、この事業年度においては第2回・第3回の2回をやって、その前の年度と比べると、回数も増やし規模も大きくした。これが、売上が伸びた大きな要因です。

もう1つは「ほぼ日のアースボール」という、AR技術を活用した専用アプリと連動させる地球儀の商品ですけれども、こちらも新商品として販売しています。こういったところが、この(「ほぼ日商品」の)売上を伸ばした要因です。

実は、今お話しした商品構成が影響しているのが売上原価で、売上高の伸び率の25.4パーセントに対して、売上原価の伸び率が37.7パーセント。計算していただければわかりますが、原価率が若干悪化しています。

今申し上げた「(「ほぼ日手帳」以外の)売上を作っていく新しい取り組み」で、まだまだ利益率に改善の余地がある状況の中で、さまざまな実験をしているところなので、その構成比の変化が主な要因で、このようなことが起きています。

販管費は21億4,700万円で、前事業年度に比べて17.7パーセント伸びました。売上高の伸びほどではないのですけれども、大きく伸びているのは、基本的には営業費用です。私どもの主要販路は通販ですので、そちらに関わる費用が増えたこと。

それから、「生活のたのしみ展」というイベントの開催費用。これは、前年になかったタイプの費用です。こういったものを使いました。それから、人材も増やしていまして、そういった人件費のアップもここに(含まれています)。

これらをトータルして、営業利益は12.3パーセント増の5億6,200万円、経常利益は17.7パーセント増の5億6,700万円となりました。

【第40期の事業報告】販路別売上高

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いつものように、売上の内容を別の切り口で見ていきます。

まず、販路別。こちらは(濃い色で)囲ってあるところが、当社の直販でございます。こちらが26.9パーセントと、全体の売上の伸び(25.4パーセント)より、若干高く伸びました。それは、「生活のたのしみ展」自体が直販であることと、Web販売も伸びました。こういった要因によるものです。

卸販売も遜色ない伸び率で伸びていると思うのですが、こちらは「ほぼ日のアースボール」、それから「ほぼ日手帳」の中で「ほぼ日5年手帳」という新商品を(2017年)12月に発売していまして、このあたりの卸の出荷。それから、海外向けの卸販売も強化していまして、こういったものが、ここの卸の部分に貢献しています。

【第40期の事業報告】地域別売上高

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それでは次に、海外・国内で見ていただきます。

今年度に関しては、国内が伸びました。海外も伸びているのですけれど、伸び率でいくと10.2パーセントで、7,900万円増です。これも繰り返しになりますが、売上を大きく作った新しい取り組み(「生活のたのしみ展」など)は全部国内(のもの)ですので、当然ここが伸びる構造になっています。

海外の中で国別で見ると、これは、これまで四半期ごとの(決算)説明会でお話ししたとおりなのですが、(比率が)一番大きい中国は、実は金額が減っていまして、(一方で)他の国が伸びて、トータルでは伸びている構造になっています。

細かく精査をすると、中国向けは確かに減っているんですが、最終的なユーザーとしての中国のユーザーの数は伸びている状況です。他のアジアの国は、代行業者さんのような方たちがいったん当社から買って、それを最終的に買われるのが(以前と)変わらず中国国内のユーザーであるという動きが見えております。

ここまでが、売上の内容です。

【第40期の事業報告】貸借対照表(18/8末時点)

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貸借対照表ですけれども、これは、前年と比べて何か大きく目立った変動があるというものではございません。

(ただ)これまで、もし四半期ごとで見ていただいていたとすると、かなり四半期の中では変動がありました。と言うのは、主力商品が「手帳」という季節商品でありますので、この(2018年)8月末の段階の棚卸資産が、かなり大きい状態で期末を迎え、9月からどんどん売っていって、それが四半期を追うごとに売掛債権になり、現金になり……という変動をしています。

【第40期の事業報告】ほぼ日手帳について①

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それでは、少し定性的に、今お話しした内容を画像で見ていただこうと思います。

「ほぼ日手帳」については、スライドを2つご用意しました。1つは新商品で、(2017年)11月に発売しました「ほぼ日手帳weeks MEGA」という、ページ数を増やしたもの。それから12月に、新商品で「ほぼ日5年手帳」が出ています。

【第40期の事業報告】ほぼ日手帳②

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さらに、(2018年)3月に発売したのが「ひきだしポーチ」という商品です。

これは、小物をたくさん入れて持ち運べるポーチ型(の商品)なんですが、「ほぼ日手帳」のカバーと同じデザインなので、そういった意味で「ほぼ日手帳」の商品群の1つとして位置づけました。ユーザーの方にも「そういうもの」として見ていただいて、好評でございました。

【第40期の事業報告】「生活のたのしみ展」①

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次に、第2回と第3回の「生活のたのしみ展」のご紹介をします。

まず、こちらは第2回の「生活のたのしみ展」。ちなみに第1回は、上場直後の2017年3月に、六本木ヒルズで行いました。このスライドが第2回で、同じ六本木ヒルズなんですが、より広いアリーナという場所を使って、初めて60ブースぐらいの規模で行っています。

【第40期の事業報告】「生活のたのしみ展」②

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次の第3回は、この間の(2018年)6月に、恵比寿ガーデンプレイスに場所を移しました。

初めて春夏シーズンという、ちょっと暖かい時期の開催になりまして、販売だけではなくて場の賑わいを作る。単なる販売以外に、「商店街」という概念から、ワークショップであったりパフォーマンスであったり、そういったものも組み合わせて、「街のフェス」というコンセプトに進化させながら、取り組みを進めてまいりました。

【第40期の事業報告】生活のたのしみ展③

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(「生活のたのしみ展」の)規模感でいくと、今ご説明したのが……(表を指して)ここが第2回、こっちが第3回なんですけれども。

第1回と比べると、面積で倍くらい。出店数でいくと、2倍から3倍です。お客さまの数はちょっとカウントできないので、ご参考までにレジの取引件数をお示ししているのですが、第1回と比べると、倍以上まで伸びています。

先ほどちょっと触れた、今期(2019年8月期)の業績に入ってくるものですが、(2018年)9月に第3回の「出張巡回展」という位置付けで、初めて東京を離れて、阪急うめだ本店で開催いたしました。阪急うめだ本店の9階・10階の祝祭広場という大きなスペースで、イベントというかたちでやっています。

こちらは(会期が)6日間で、これまでの第2回・第3回よりはちょっと面積が狭いこともあって、出店数はどうしても絞らざるを得なかったのですが、それでも取引件数としてはまったく遜色ないかたちになりました。関西のお客さまにも、ずいぶんたくさん(足を)お運びいただき、喜んでいただけたなと思っています。

【第40期の事業報告】ドコノコ①

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あとは、今期の(事業報告の)その他のところをご説明していきます。

犬や猫と親しむための「ドコノコ」というアプリなんですが、こちらは(2018年)6月で、ローンチしてから2周年を迎え、DL数は約21万回、1日のアクティブユーザー(DAU)が1万8,000人という水準で、堅調に推移しています。

こちらは、単にSNS的に楽しいというだけではなくて、例えば、迷子掲示板機能の進化であったり、迷子になったときの迷子を探しているポスターを、ボタン1個で作れるという機能を付けて、ペットと暮らすみなさまへの安心のサービスを拡充している、といったことがあります。

右側の「迷子さがしゲーム」は、もしご自分のペットが迷子になったときに、どう探せばいいのかというのを、ゲーム形式で理解していただくような取り組みも行っています。

【第40期の事業報告】ドコノコ②

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それから、「ドコノコ」については、海外にも拡充を始めていまして。

アプリなので、世界80ヶ国でダウンロードされて使われているんです。実際に……フランスですかね? この写真は。オフ会に糸井重里も行くような活動をいたしました。

【第40期の事業報告】ほぼ日のアースボール①

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次の新しい商品として、「ほぼ日のアースボール」です。

(「ほぼ日のアースボール」を見せる)

篠田:みなさまもご覧になったことがあると思うんですけれども、これでございます(笑)。軽いやつです。アプリを使って見ていただけるんですが、(2017年12月に)発売して、まだ10ヶ月なんですけれども、おかげさまで多くの方に使っていただいています。

【第40期の事業報告】ほぼ日のアースボール②

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この間、アプリを楽しんでいただけるメニューを、どんどん拡充していまして。

最近ですと、JAXAのご協力をいただいて、宇宙飛行士の油井(亀美也)さんがISSに滞在していた当時のお写真と、そのころの日記のようなメモを、何日かに一度配信するというコンテンツ(「JAXA宇宙飛行士 油井亀美也が語るISS滞在記」)も、今ご用意しています。

【第40期の事業報告】ほぼ日の学校①

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最後に、今期の取り組みとしてご紹介したいのは、「ほぼ日の学校」です。

古典をほぼ日の切り口で取り上げることを、チャレンジとして行っています。実際に何が起きているかと言うと、99人の生徒さんに来ていただいて、第1回の講座はシェイクスピアだったんですが、14回のシリーズでした。

教えてくださる方々も、いわゆるシェイクスピア研究者の方もいらっしゃるんですけれども、例えばこちらのように、実際にシェイクスピアの劇を演出された方(串田和美氏)とか、あるいは、「シェイクスピアが好きだ」「学生時代から、ずっと好きなんです」という投資家の方にご来場いただいて、ご自身の投資という仕事と、シェイクスピアから学んだことが、どうつながるのかというお話をしていただくなど。

大きく言うと、普通に現代に暮らす私たちにとっても、実は古典がものすごい知恵の宝庫であるし、「おたのしみ」の宝庫であることを、一緒に味わっていただくものにしたいと思っています。

その後、(2018年)7月からの第2シリーズで、「歌舞伎」を手がけるようになりました。今は……ちょうど今日(2018年10月24日)、募集が終わったんでしたっけね。第3シリーズは、『万葉集』でございます。

【第40期の事業報告】ほぼ日の学校②

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これ(「ほぼ日の学校」のライブの授業)だと、99人しかいらっしゃれませんので、「オンライン・クラス」も始めました。

今見ていただいたような授業の動画を、フルバージョンと、縮めて見やすくしたバージョンで編集して、少しずつ配信数を増やしているところでございます。

ここまでが第40期(2018年8月期)の業績と、質的なところで取り組んだものをご紹介しました。

【第41期の取組み】業績予想について

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私からは、次のスライドが最後になりますが、第41期(2019年8月期)の業績予想とその前提について、簡単にお伝えします。

(表の)左が、さっきお話しした2018年8月期の実績です。真ん中が、この(2018年)9月から始まりました、2019年8月期の予想になっています。見ていただくと、今期は売上高の伸びは4.7パーセントで、52億7,200万円と考えています。「ほぼ日手帳」が33億円、それ以外の商品が16億600万円といった構成で考えています。前期(2018年8月期)と比べると、伸び率が抑えめではあるのですが。

それぞれ前年と比べますと、例えば「ほぼ日手帳」については、今の前提には大型の新商品が入っていません。それから、こちらの「ほぼ日商品」も、この過去1年間に生んできた、例えば「ほぼ日のアースボール」のような商品、あるいは「生活のたのしみ展」。

どちらも出したばかりで、まだ実験段階だと思っていますので、今期については、それを長期的にさらに伸ばしていくための、さまざまな位置付けの実験をする年だと考えています。ですので、数字的には(前期ほどの)伸びは見えませんけれども、質的には内部でかなりの工夫をした活動を前提にして、このような数字にしました。

売上原価は、若干原価率が改善するのですけれども。これは先ほどお話しした、2018年8月期が、その前(2017年8月期)に比べて原価率が悪化したのと、まったくロジックが一緒です。若干「ほぼ日手帳」の構成比率が上がることが、この原価率の変化(改善)の主な要因であるとお考えいただければと思います。

これらの結果として、営業利益の伸び率は約9パーセントの、6億1,400万円です。利益の伸びとしては、大きく言いますと「安定的に成長させる」ということで、今期の業績予想を考えています。

私からは、ここまでにいたします。ここからは、糸井からお話をさせていただきます。ありがとうございました。

第41期の取組み

糸井重里氏(以下、糸井):糸井重里です。数字は、これでもう語ることがないんですけれども。あんまり(みなさまに)望まれているような、「月に行く」だとかそういう話は、今年はできないので(笑)。地味な話になります。

(会場笑)

糸井:今発表された数字に表れていることは、実は去年(2017年)がんばったせいではありません。上場前に「こういうことをやっていこうぜ」と種をまいた部分が、発芽して葉っぱをつけて、花をつけたり実をならせたりすることが始まってきたということなので。

一見「去年は、よくがんばったな」というムードは、社内ではちょっとあるんですけども、実はその前に、こうさせるためにやってきたことを、1個ずつやってきたことの影響が出てきたと考えています。

相変わらず、「ほぼ日手帳」がエース・4番としてがんばっているみたいな状況で、よくそのことについてのご批判も受けるんですけど、自分たちも「そうでないところ」に収益のもとがあったり、あるいは「ほぼ日を知られる要素になる窓口が、いくつもあったほうがいい」ということは、思うんですが。

その1つずつの要素は、例えば「ほぼ日のアースボール」。つまり、一家に一つ地球儀があるような「ほぼ日のアースボール」があったり、「ドコノコ」という犬猫のアプリがあったり、「ほぼ日の学校」があったり……というかたちをとってはいるんですけれども。やっぱり「ほぼ日手帳」というものの持つポテンシャルを、僕自身が少し軽く考えすぎていたかなという反省は、多少あります。どう言ったらいいですかね、非常に心理的なものなんですけど。

こういう数字のやり取りの話をするときに、必ず「『手帳の会社』でしょう?」とまとめられるのが、正直に言って、心理的にちょっと悔しかったんです。つまり、手帳を売っている会社は今までにもあったわけで、それと一緒にされたくないという気持ちが、妙に過剰にあったような気がして。

そこのところで、「ほぼ日手帳」が持っているポテンシャルを、僕は少し低く見積もっていたんじゃないかということを、この1年、さまざまな局面で反省をいたしました。反省したからと言って、何かを改めるというよりは、手帳が人々に与える喜び・影響が、思ったものとずっと違って、もっと大きかった。

【第41期の取組み】ほぼ日手帳2019

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例えば、中国に2度ばかり行っているんですけど、中国の人たちが「手帳」という言葉を、違う使い方をしていたんです。「ほぼ日手帳」が現れる前に。

「手帳」という言葉はもっと日記に近くて、思ったことをただ記しておくことだった。でも、貼ったり絵を描いたり、自分の心象をそのまま文字にしたりというかたちで、その「綴じた紙の束が自分の記録になっていって、喜びを作っていく」という概念は、なかったんだそうです。

ですから、「『手帳』と言ったら、私たちにとっては『HOBO』のことです」と。「HOBO」というのは、「ほぼ日」のことなんですけど。「ほぼ日刊イトイ新聞」を知らない方々が「ほぼ日手帳」を使い始めていて、「こんなおもしろいものがあったのか」というかたちで使っている。それから、「『手帳』と言ったら、『ほぼ日』のことなんですね」ということを、作っている僕らが意識できていなかったことに気がつくわけです。

それから、日本中でユーザーの方々に集まっていただいて、お互いの手帳の使い方を見せっこしたり、さまざまなアドバイスをしあったり、喜びを語りあったりという企画を、ずっと繰り返してやっているんですけど。そこでも、自分たちが考えていた「今までの手帳メーカーがやれなかったことを、僕らがニッチな商品としてやり始めたら、こんなに当たった」ということを超えていた。

少なくとも、「ほぼ日手帳」が出てくるまではこんな使い方をしていなかったし、手で書くことは、これからどんどん駄目になっていくと思っていた。でも実際には、どんなにスマートフォンが流行しても、みんなが1つずつスマートフォンを持つようになっても、「ほぼ日手帳」を買う人は増えているし、それを「いいな」と思う人は増えている。

この事実が今まで、ちょっと自分たちは自信がなさすぎたんじゃないかということと、もう1つは、「『いつまでも同じように手帳を作っている』と思われるのは、ちょっと悔しい」という、一種のクリエイティブ魂みたいなもので、「そんなことはないぞ」「こんなものもやっている」と言いたい気持ちが、ちょっと過剰にあったんじゃないか。そのバランスをとっていくことが非常に大事なんじゃないかと思ったのが、この1年でした。

もちろん、手帳の改良・改善、あるいはもっとすてきに見えるような努力、使っている人たちへの調査。さまざまなことはやってきたんですけれども、本当に本腰を入れてやろうと思って動き出したのは、僕の意識の中では、今年のこの1年で、本当に始めたというつもりでいます。

だから当期売上高が伸びたとは、そんなに簡単につながるものではないと思うんですけれども、今やっていることが、この後の年に、必ずまた実を結んでくるんだと思っています。手帳も、「何もしなくても伸びる」という甘い考えではなくて、「本当のよさ」を本当に伝えて、手帳を使っている人たちがより喜べるようにということを、がっぷり四つで取り組むことを決意して、今がありますので。これは、2年先、3年先までになったときには、きっと手帳のジャンルでも、変わっているんじゃないかと考えています。

今はお取引先へのお礼参りをしている最中なんですけど、驚くほどお取引先が、私たちの「『ほぼ日手帳』のチームのメンバーだ」ということに、誇りを持ってくださっている。これはすばらしいことで、そのへんのチーム総体でやっているという意識が、我々のいわゆるブランド力を伸ばしてくれて、信頼を高めてくれている源なんじゃないかということを考えている最中に、今のように手帳のお取引先を回っていると、ますますそのことが身にしみてわかります。

お取引先だとかお客さんが、自分たちを支えていることが目に見えてわかるようになったのも、この1年だったと思うんです。それは、主に「生活のたのしみ展」というフェスです。商品やら「たのしみ」を中心にしたフェスをやることで、お客さんが喜んでいる姿がそのままわかるということと、何よりもすごかったのは、アルバイトを募集したときに(募集人数の)何倍もの、非常に優秀で誠実なアルバイトの人たちがたくさん来てくれたことです。

【第41期の取組み】第3回「生活のたのしみ展」出張巡回展

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それは、(出張巡回展を)阪急うめだ本店でやるときの大阪での募集も同じでした。東京でも同じです。それから、今度の大阪については、東京でアルバイトをした人が「またやりたいから」と、大阪で申し込んだりしている。旅費もかかりますし、宿泊費もかかる。でも、「あのアルバイトをすることは、私の生活のたのしみなんだ」という考え方で。

極端な例を語っているように思われるかもしれませんけど、それに準ずるような気持ちで、「本当は行きたいんだけど」みたいに思っているアルバイトの人たちが、たくさんいた。

そのアルバイトの人たちにとても刺激されて、ほぼ日の乗組員たちが、「彼ら彼女らの先輩として見本になるような働き方を、自分たちができているのか」ということを、また新たに問いかけるようになって。

その循環がお客さんに対して、「生活のたのしみ展」に行くと、みんなが楽しそうに忙しそうに働いているのを見て、「行くだけで元気になる」ということを言われる。

つまり自分たちが、昔からのヒエラルキー的な一種の組織論で、何か考えたことが……「脳」の役割をしている、スタッフのてっぺんの人たちがいて、そこですばらしい理念なり戦術やら戦略やらを考えて、下の人たちに伝えていくかたちではなくて、それぞれの働く場所にいる人たちが、非常に自発的に自分たちのクリエイティブを、あるいは自分たちの労力を惜しまずに仕事をしていってくれる姿を見ていて。

それは、お客さんにまで関わることで。お客さんたちが、「自分たちが『ほぼ日手帳』を育てている」という意識が、すごく強いんです。そういうものを見ていて。

同時に、関連会社の人たち、あるいは作家の人たちが、「『ほぼ日手帳』の仕事をしていくのは、楽しくてうれしいことなんです」「誇りを持ってやります」「我々のところは他のいろんな人たちに負けないように、これだけのことをやっています」というのを、工場の人たちみんなが言ってくれるような、そういうつながりを、改めて発見できた。

僕らが100人足らずの会社で、「ああでもない、こうでもない」とやっていることが、単にサービスとしてやっているわけでもなければ、すばらしい企画をみんなにお願いするためにやっているのでもなくて。いろんな関係した人たちが考えてくれたり、やってくれたりしたことを、自分たちの血や肉にしてできてきた会社なんだということが、改めてわかった1年だと思っています。

ですから、この1年で「売上が多少伸びた」みたいなことは、正直に言いますと、大したことない……と、言っちゃいけない場所だとはわかっているんですが、本当に重要なことはそこじゃなくて。

これから先、自分たちの体力が付いて、心から自分たちが、お客さんたちもいてほしい会社になる1歩が、本当にできたという実感ができたこと。これが、これからのほぼ日の、いわば「土台ができたな」というイメージが、非常に強い1年だったと思います。

すぐに稼ぎ出さなくてもいいと思いながら作ったものが、いくつかありまして。例えば、「ドコノコ」というアプリは、今の今……ちょっと出してもらっていいですか? 「ドコノコ」の遠景。

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一番最終的な理想は、世の中のすべての犬猫と、その家族がネットワークされる。これは遠景として、遠くに見える景色としてイメージしていることです。

よく笑い話的に言うのは、オバマもザギトワちゃんも入っていないんですよ、まだ。これは、オバマ元大統領もザギトワちゃんも、犬を飼っているんで。それがこの中に一世界市民として、「うちの犬はね……」というかたちで、アルバムに残すようなネットワークが作られていくというのが、遠景としてあるわけです。

同時に、さまざまな紛争国の国境線の向こう側とこっち側に、すぐ近くに犬がいたり、猫がいたりするわけですけれども、それが僕らのアプリからしたら、近所にいる犬や猫なんです。国境の向こうにいようが、こっちにいようが。そういう、鳥が軽々と国境を行ったり来たりするような役割を、動物はできると思いますし、動物をかわいいと思って世話をしていく人間たちの心は、そんなふうになっているんじゃないかなと思うんです。

それが「本当に(そう)なったね」と言えるのが、「ドコノコ」にとっての遠景であります。中景という、そんなふうになる前に「こうなっていたらいいね」というのは、犬猫を飼うときに、「アプリ入れた?」と言い合うような、「『ドコノコ』に入った?」というのが、狂犬病の予防注射やなんかと同じように、みんなが入っていることで、よその犬や猫と、自分の家の犬や猫が、同じように愛すべき対象になっていくという。

そのネットワークが住民台帳として機能するようになることが、1つの中景であり、海外での人々の認知も、同時にそれと並行して進んでいくのが中景です。すぐ近くでは、もうすでにすっかり楽しまれていますけれども、犬や猫に「登録」という概念が入ることによって、野良猫や野良犬の身分がカウントされていなかった時代に比べて、動物に対する人間の豊かな文化みたいなものが、少しずつ認識されていっている。

今は、アプリの中の1,000万人、2,000万人がやっているようなゲームに比べたら、まだまだ小さい数ですけれども。少なくとも、「テレビの番組で、ちょっと見たよ」と言われる程度の数にまでなっている人たちが、お互いに「うちの犬見ましたか?」「うちの(犬も)登録します」。あるいは、「自分のタイムラインの中に、おたくの犬を入れましたから」みたいなことが(言われるようになる)。

あるいは、迷子を探すときのやり取りが、もうすでにすっかり行われていますけれども。「うちの近所に来ているようですから、うちにあるカメラをそっちに向けておきます」だとか、協力体制ができていたりして。そういうのが近景としてあるんですけれども、この中に。

正直に言うと、「ドコノコ」というアプリについては、まだどうやって稼ぐのかというところが、確実になっていません。今もある程度、それぞれの人たちの犬や猫のカレンダーやら、本やらを作ったりはしているんですけれども、そういうレベルのことじゃなくて、何かがあるんだと思います。

YouTubeが出始めのときに、「なんで、こんなことをやっているんだ」と思った人がいたかもしれませんけれども、これがあることによって、少しでも人々が喜んでくれるという集団が放っておいても増えてくるということは、これが「必要なもの」だったからだと思うんで。

この先にどうビジネスが入ってくるかというのも、だんだんと目鼻が付いてくるのではないかと。「ドコノコ」は典型的にそういうソフトだったので、うちの事業として「稼いでねえな」と言われそうな事業だったので、1つの例として、とくにご説明しました。

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あるいは、「ほぼ日のアースボール」という軽い地球儀。そこにありますけれども。

これによって、さまざまな学習教材にもなりますし。テレビを見ながら、例えばワールドカップのサッカーがあるときに、「ここの国の選手か」と言って、それについてまた見るだとか、「どんな国から来たんだろう?」と、そういうのを調べたりもできますし。

前回のオリンピックのときには、(国ごとに)メダルを宇宙に向かって積み上げて、「どれくらい、他国がたくさんメダルをとっているか」というアプリ(「ニョキニョキのびるメダルタワー 2018平昌オリンピック編」)を入れたりもしましたけれども。

(ほかにも)どこの土地から恐竜の化石が見つかったということを元にして、恐竜が現れる(「小学館の図鑑NEO 新版『恐竜』」)とか。そういうARを使った遊びとして成り立つことが、まずは普通にコンテンツとして充実していくようになります。

今の今は、まだ「どこにもある常識的な地球儀」になっていないんですけれども、いずれは、一番の遠景のところでは、普通に……例えば、外国のご家庭で何かお訪ねしたら、居間のどこかにこれが転がっていたという景色が見えてくるというのが、遠景としてあります。

あって邪魔になるものでもないし、なくても困らないと言ってしまえば、それまでなんですけれども。要するに、これだけグローバルと言われている時代に、僕らは地球についてあまりにも親しみがないところからすると、数千円の投資で、これが転がっている家庭が常識になってくるというのは、これもまた、ありえないことではないと思っています。

(遠景の)途中に、多言語版の「ほぼ日のアースボール」を生産できるようにしていきたい。アメリカ語(英語)版、フランス語版、ロシア語版みたいなことができていくのが、途中の中景としてあります。宣伝やら、自分たちのインフォメーションに使いやすいところがあるので。

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今はすでに、JAXAの方々が非常に協力してくださっていて。先ほどの油井さんとのコンテンツ作りなんかも、JAXAが「これを機会に、今度はじゃあどこの」(とやり取りしています)。種子島からロケットを打ち上げているんですけれども、「種子島を見たら、そこのロケット打ち上げ施設の紹介ができるように、できたらうれしいですね」「ああー、します、します」みたいな、そういうやり取りができていますし。

テレビ局も、世界を旅する新番組だったりとか、そういうのがたくさんありますから。そういうタイアップなども、近景としてですけれども、広げていきたいなと思っています。

【第41期の取組み】ほぼ日の学校

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あと、「ほぼ日の学校」なんですけれども。

いろんなIT系の会社が、「今は、コンテンツの時代だ」と言い始めました。とっくに、コンテンツの時代だったと思います(笑)。だけど、見る人が望んでいなかったんです、たくさんのコンテンツを。「コンテンツが足りない」という意識が、なかったんですね。

でも、さてみんなが(コンテンツを)見るようになったら、コンテンツが足りないことが明らかになったんです。ですから、キャラクターの版権だとかに法外な値段がついて取引されたり、「これがちょっと映っていたら、もう消さなければならない」とか。さまざまな、シンボルの取り合いが行われています。

それで、作家なんかも、出版はとくにそうですけれども、ベストセラーを書く作家が大切にされて、その他のものを書く人たちの本は、本当に数千部がやっとという状況になっています。でも、発表する場がないから、出版もできなくなるという状況があります。インターネットの上では、いわゆる素人で、本を出していない作家の奪い合いが行われ始めました。

こんなことをやっていても、たどり着く先というのは、「人がたくさん見たから」といってアクセスが伸びるというような泥仕合になるのは、もう目に見えていますし、すでに問題は起こっています。

つまり、素人が「大勢の人に(作品を)見てもらおう、稼ごう」としたときに、「スキャンダルになっていく」というのは、わりに当然のことなので、普通に見て楽しめるコンテンツや「知ってよかった」というコンテンツに出会う方法(を得るの)が、インターネット上では本当に難しくなっています。

一方で、大学とかが自分のところの授業を無料で(インターネット上に)出すようなことも始めていると思うんですけれども、やっぱり、ものすごく敷居が高い。となると、僕らはこれから、「何が『コンテンツ』として、自分たちにとって重要なのか?」ということを、本気で考える必要が出てくる。

その考えの中から生まれたのが、「ほぼ日の学校」というものです。

例えば、小林秀雄の長年の編集者が出版社で定年になって、今まで小林秀雄と一緒に過ごしてきた問答の蓄積であるとか、編集をするときに、どんなことが起こっていたかとか。この(問答の)解釈について、どんな話をしたかという、その属人的な知識や情報みたいなものというのは、その人がいなかったら、どこにもないものなんですけど……発表する場は、どこにもありません。

例えば、シェイクスピアで僕らは(「ほぼ日の学校」を)始めましたけど、「シェイクスピアって、難しいんじゃないの?」っていう人は近寄らないですし、「シェイクスピアは、全部読んじゃったよ」という人は、そういう仲間同士で集まって、シェイクスピアの話をしているだけです。

でも、シェイクスピアはおもしろいんです。そして、「シェイクスピアはおもしろいんです」という最初のインフォメーションをするのは、僕らの役目です。

で、シェイクスピアについて本当に知り尽くしている先生、そして、シェイクスピアを本当に楽しんでいる人、シェイクスピアを応用して稼いでいる人。いろんな人がいますけど、そういう人を集めた授業をやることによって、シェイクスピアという人類の文化遺産が、我々の「たのしみ」になりお役に立つということが、ありうる。

それと同時に僕らは、それを語れる人たちとのお付き合いが深まっていきますから、「ほぼ日刊イトイ新聞」としても、「ほぼ日の学校」の紹介をすることというのは、どこの雑誌にもない僕らの独自のコンテンツとして、言わば……権威でも独占でもないんですけど、「『何々』といえば『何々』だね」「シェイクスピアは、そういえばほぼ日がやってたね」というかたちで、「ほぼ日」と「シェイクスピア」というものが、関係のある僕らの「仕入先」として(それを通じて、語れる人たちと)お付き合いをしてもらえることが増えていくんですね。

もうすぐ、また「万葉集講座」が始まりますけど。『万葉集』というものも、「どうして、ただの民と天皇が同じように、歌を詠んでいる本があったんだろう?」ということから、歌謡曲を歌っている人、あるいは江戸時代に戯作をしていた人。そういうものが、「日本の歌」というかたちですーっと1本の筋でつながって、「詠う」だとか「韻律のある文章の鑑賞」だとか「たのしみ」だとかが、僕らのこれからのコンテンツになっていく。

同時に、固定してしまう「趣味」から、何かを知ったり学んだり語り合ったりすることが、「たのしみ」として……会社員が、早く(仕事の)時間が終わったときに、飲みに行くほかに行く場所として、カルチャーセンターみたいなものが(あるように)。

そこで終わるんじゃなくて、1つの「おたのしみ」「エンターテインメント」の場として、「『ほぼ日の学校』に寄って、帰るんだ」という人たちが、もう現れはじめている。

みたいなところに、僕らの「仕入先」としての「ほぼ日の学校」を考えると、いろんな人たちが「授業料はいくらなの?」「何でどう稼ぐの?」ということの手前にある、これから人にとって必要とされていく「予感」に、僕らは投資をしていくわけです。

それで、そのための人材に僕らのところへ来てもらったり、組んでいったりということが始まっているのが、この1年半ぐらいのところですかね。そういうことができてきた「足場」(をもと)に、また来年が始まっていくことになります。

ちょっとばらばらと……いつも台本があると喋れないので(笑)。ばらばらと、普通に友達に喋るみたいに、順番に喋ってしまいましたけど。

トータルで言いますと、土台ができた。ある程度働ける筋肉ができたのが今だということと、筋肉ができた以上は、もう少し「冒険」とまではいかないかもしれませんけど、「上場会社というものは、こうやるべきだ」というところに、ちょっと裃を着させられていた感じがあったものをちょっと脱いで、フリーに動く場所に、体力やらお金やらをもっと使っていくことになるでしょうという……これ、今のところはインサイダーじゃないですよね?

(会場笑)

糸井:漠然と言えば、今はもうそういう時代に入りはじめました。そんなことが、ここを経営している私の発表になります。

あ、ついでに言いますと……おかげさまかはわからないんですけど、日経BP社から、『すいません、ほぼ日の経営。』という本が、先日(2018年10月)18日に出ました。謎の会社のほぼ日というものに、「なんで、そんなにおかしい会社が成り立っているんですか?」とインタビューしていく人がいて、僕としては「めんどくさいなあ」と思いながら、それに答えていくんです(笑)。

(会場笑)

糸井:めんどくさいんですよ(笑)。で、「そっちの言葉をちゃんと使えないといけない」とは、今はもう思っていないんで、質問されてもときどき「わかりません!」と言っています。でも、正直に語ったつもりの文章なので。

僕の「嫌さ」が後書きに入っていますので、できれば先に後書きを読んでいただいて、「嫌だったんだろうなあ」と思いながら、前に戻っていただいて(笑)。

(会場笑)

糸井:読んでいただくと、「組織や経営とかと無縁で過ごしてきた人間が、どうして今(のほぼ日)みたいなことを、こんなふうにやっているんだろう?」ということの、漠然とした謎が解けるかもしれませんので……1,620円ぐらいなんですけど。売れると、喜びます(笑)。

(会場笑)

糸井:日経BP社も喜びます(笑)。そんな宣伝で、ご挨拶を終わりにします。どうもありがとうございました。質問があれば、お願いします。

質疑応答:篠田氏の退任を、糸井氏はどう思っている?

質問者1:東洋経済のヤマダです。貴重なお話、ありがとうございます。糸井さんにしか聞けないことを、この場で聞きたいので。篠田さんをロスするということについて、改めておうかがいしたいです。お願いします。

糸井:「平気です」というのは、言えません。10年間、やっぱり夫婦漫才みたいにやってきてますので。同時に、篠田さんに乗っけてた荷物が、多岐に渡りすぎてたんですよ。肩書きは「CFO」という、うちで唯一のアルファベットの肩書きなんですけど。本当はCFOに専念してもらったほうがよかったのかもしれませんけど、例え話で出してちょうどいいと思うのは、いわば分校の1人の先生みたいになってたんですね。

僕が見た篠田さんの一番の特質は、すごい通訳能力なんですよ。それは語学の面でもそうですし、あらゆる場所でその能力がやっぱり圧倒的に高くて、おかげで全部引き受けて(もらって)いたというところがあると。同時に、まんべんなく点を取ってもらうようなことを、いつまでも僕らがそれに合わせてそれぞれの仕事がある状態は、ちょっと小学校っぽすぎるなと思って。

じゃあ、「篠田さん、これに専念してください」と言ったら、外国に飛んでもらわなければならないみたいなところがあるので。「ああ、上場のための10年に、一番やっぱり必要だったんだろうな」ということと、篠田さん自身が一番得意な能力を活かしながらやってきたことが、「次は何なんだろう」と思いかけてきた、その時期が重なったので。じゃあ、お互いにちょっと乱暴なことをやり、「それぞれ道を分かちましょう」ということになったので。

これは批判されるかもしれませんけど、「次の方は誰ですか?」というのは、いないんですよ。ちゃんとした会社になろうと思ったら、それはいさせると思うんですけど、「それは『経理』という名前ではだめなの?」「『財務』という名前ではだめなの?」という問題から捉え直して、組織を作り直そうと思ってます。

「CFO」というところで、なんとなく篠田さんを想像してる時代を、もう1回1から考え直そうと思ってますので、ダメージがないはずはないんですけども、やれると思います。

質問者1:2点目は、株主総会なんですけれども。今回の特徴を教えてもらいたいのと、マスコミ(向け)に今回も開いてくれるのかどうか確認を、ここでさせてください。

糸井:今回は、午後から始めます(笑)。

(会場笑)

糸井:すごい特徴だと思うんですよ。ゆっくりお昼を食べてから、夜まで付き合いましょうみたいなことですから。前は株主総会という、法律に決められた時間を中心に作りました。でも今回は、そこをone of themにしました。

ですから、正直に言って、僕は株主総会の……借りてきたような言葉を使い続けるのが苦手で、なんとかあれを、今(この場で)喋ってるみたいにしたいんですけど、「そういう言い方、だめなんだよ」というのが多すぎるので……そこは、おもしろくないんです。書いてあることばっかりですから。

その前後に思いっきりいろんなことを言えるので、そこをトータルに捉えて「株主総会」と考えていただくようにして。とくに、総会の前の第1部に、講演があります。前回は総会の後にありました。

なぜ前に持ってきたかというと、「やっぱり、ちょっと僕らは変な会社なんだ」ということを、先に知ってもらったほうがいいなと思ったので。濱口(秀司)さんの講演から始めると、明らかに「変」だと思うんですよ。そこで濱口さんとちょっとだけ僕が喋ったあとに、ちゃんとした(株主)総会をやって、またそのあとで、いろんなことをやります。

「(株主さまの)ご家族の方1名さまも、一緒にどうぞ」というふうにしましたので、やたらと人数も多い。また株主総会フェスみたいになるかもしれませんし、買い物もできるようにするので、ちょっと儲かるかもしれません(笑)。

(会場笑)

糸井:「特徴って、どこ?」というのはないんですけど、そんなような、1日楽しめる株主総会になるはずです。

質問者1:マスコミにも公開されますか?

篠田:どうぞ。

糸井:どうぞ。

質問者1:3点目は細かい質問ですけど、先ほどの遠景・中景・近景のところで、「ほぼ日のアースボール」のところで、中景で多言語版(を生産する)ということでした。これは(具体的に)決まってないかもしれませんが、いつごろの見通しか気になりましたので、教えてください。

糸井:あんまり、はっきり言っちゃいけないんだよなあ。仕組み上大変なんですよ、実は。そこに描かれている文字が、全部「絵」として認識されてARが成り立ってるので、そんなに簡単じゃない。やればできるんですが、お客さんのアテをつけながらやってかなきゃいけないので……注意しながら言うと、やっぱり2020年を1つの大きなうねりとして捉えてますので。いろんな問題は、けっこう2020年に向けてがんばろうと思っております。

質問者1:ありがとうございました。

質疑応答:現在のほぼ日は、どのようなステージにある?

質問者2:エース経済研究所のサワダと申します、ご説明ありがとうございました。私からは1点だけなんですけど、社員の方の意識ですとか育成について、お話をいただきたいです。

上場から「意識を変えたい」とお話しされていて、上場されて、その成果が少し出たことはお話しいただいたんですけれども、現在の状況はどういったステージにあると認識されているのかということと、「今後の課題」……と言うとちょっと堅苦しいので、今後気をつけていかれるようなこと。どのようなことをお考えでしょうか?

糸井:プロジェクトごとにすごくラディカルな部分まで喋ることが、圧倒的に増えたと思ってます。「なぜこれをするのか」「どうしてこれがいけないのか」「どうやってやるのか」。つまり、(社是の)「夢に手足を。」という言葉を作っておいたことが、非常に役に立ちました。

「手足がない夢を語らない癖」が、ついていると思います。同時に、この遠景・中景・近景というキーワードで、夢にあたる部分って、遠景だと思うんですよ。「本当にそうなっちゃったらいいよなあ」というのが夢にあたる部分なんだけど、そのためには、今やることはつながっている必要がある。

それが、とくに「上場」という意識も無意識にあるのかもしれないんですけど、それぞれの人間の中に「どうやってやるんだ」というところの具体性が、非常に身体化したと思っていますので。自分も気づいたことを伝えていきますけど、それが「染み込む度合い」が、随分増したと思いますね。同時に、「生活のたのしみ展」で激しい動きをやっていますので、そこで身についたことも大きいと思います。そんなことでしょうかね。

気をつけていることは、昔から同じですね。「つまらないことをやるなよ」というのは、気をつけてますね。この間、気仙沼に行って親しいみなさんと集まったんですけど。

(菅原茂)市長が、「糸井さんのとことやるときには法則があって、『どんなお願いをしても絶対一生懸命やってくれようとするんだけど、つまんないことは一切やろうとしない』。これを覚えておかないと、本当にうまくいくことはないので、それをこちらも磨きます」って言ってました(笑)。

(会場笑)

糸井:ありがたい言葉だと思いますよね。

質問者2:どうもありがとうございました。

質疑応答:「株主とのつながり」で、発見したものは?

質問者3:日経新聞のイガワです。先ほどの糸井さんのお話の中で、「顧客や取引先が御社を支えているのは、目に見えてわかるようになった」とありましたが、株主とのつながりという意味で何か発見したことがあれば、教えてください。

糸井:「株主」というものは、いろんな定義があると思うんですけど、「株の顧客」なんですね。会社を分けたものが「商品」だとすれば、その顧客なんですよね。すごいことだと思うんですよ。その意識で、僕は見てるつもりです。

はじめのころはまだそれが、段階を踏んでいって、とにかく「合格しないといけない」みたいなところがあったので、もうちょっと怯えてたんですけれども、「ああ、お客さんの1人なんだ」って。

いいお客さんが僕らを育ててくれたのと同じように、やっぱりいい株主というお客さんが育ててくれますし。同時に妙なお客さんが来たら、お引き取り願うことも……あるかもしれません(笑)。

(会場笑)

糸井:あっ、これを言うのもね……。

(会場笑)

糸井:もう言っちゃったんですけどね(笑)。もちろん、話し合いますよ。だけど、やっぱり全部同じ考えであるはずがないので、「もういいですね」というような答えはあると思いますね。

ですから、「会社を細かく分けたときの顧客」というつもりで見ています。だから、ありがたいものです。

質問者3:ありがとうございます。

記事提供:ログミーファイナンス

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