3. 活用を検討したい公的年金の繰下げ受給

受け取れる年金額は、働き方や収入額によって異なります。現役世代の方は、これまでの年金制度の加入実績や今後の働き方などを鑑みて、自分はいくらの年金を受け取れるのかを確認しましょう。

年金制度に加入して保険料をきちんと納付するのは大前提として、受け取れる年金額を増やすために活用したいのが「繰下げ受給」です。

活用を検討したい公的年金の繰下げ受給

活用を検討したい公的年金の繰下げ受給

出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」

66歳以降での繰下げ受給を選択すると、繰下げた月数1カ月ごとに年金額が0.7%増額(年率8.4%)されます。現行制度においては最大75歳まで繰下げが可能で、この場合は65歳時点と比較して84%の増額が可能です。

できるだけ長く働いたり、計画的に貯蓄をしたりしてつなぎとなる老後資金を用意できれば、繰下げ受給は十分に可能でしょう。

繰下げ受給をするメリットは、増額された年金額が一生涯支給される点です。長寿化が進み何歳まで生きるかわからない不安がある中で、安定収入である年金を増額させることで得られる安心感は大きいでしょう。

年金の繰上げや繰下げをめぐって、「何歳から受け取るのが得か」が議論されることがあります。しかし、年金制度の本質は保険であり、そもそも何歳まで生きるのかは分からない以上、損得で考えるのは無意味です。

老後不安を軽減するうえでは、「できるだけ長く働く」「現役のころから計画的に貯蓄をする」「できるだけ年金を繰下げ受給する」というアプローチが有効でしょう。

4. まとめにかえて

自分が受け取れる年金額を把握し、もし「安心して老後生活を送れるか不安がある」という方は、繰下げ受給という選択肢を検討しましょう。

ただし、繰下げ受給を選択すると、その間は年金を受給できません。そもそも繰下げ受給を実現するためには、できるだけ長く働いたり、老後資金として取り崩すための資産を用意したりする必要があります。

現役世代の方は、早い段階から長く働くためのキャリア形成を考えたり、NISAやiDeCoを活用した資産形成に着手するとよいでしょう。

参考資料

柴田 充輝